2019年06月01日
ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた(原題:HEARTS BEAT LOUD)
監督・脚本:ブレット・ヘイリー
オリジナルソング・音楽:キーガン・デウィット
出演:ニック・オファーマン、カーシー・クレモンズ、トニ・コレット、テッド・ダンソン、サッシャ・レイン、ブライス・ダナー
元ミュージシャンのフランク(ニック・オファーマン)はブルックリンで17年営んでいたレコードショップをこの夏に閉めることにした。シングルファーザーとして娘サム(カーシー・クレモンズ)を育て、成長したサムはLAの医大へ通う事が決まっていた。ある日ふたりでレコーディングしSpotifyにアップロードしたその曲は瞬く間に拡散され、たくさんの人の耳に届くことになる。フランクにとっては急に未来の扉が開かれた気分になるが、サムには恋人(サッシャ・レイン)や進学など、向き合わなければならない人生の課題は山積みだ。夏は終わりに近づき、フランクもサムも決断を迫られる。ッシャ・レイン、ブライス・ダナー
レコードショップを営むシングルファーザーの父は娘と一緒にバンド活動がしたくて仕方ない。勉強中の娘にセッションしようと懇願する。その姿は駄々こねする子どものようで、見ていて笑ってしまった。子離れって大変である。その一方で、自分が果たせなかった夢を押し付けているだけではないかと勘繰ってしまった。しかし一緒に曲を作る父娘は楽しそう。楽しい時間が長くは続かないものの、2人にとってベストな選択をしたラストにほっとした。(堀)
2018年/アメリカ/英語/ 97分
配給:カルチャヴィル
© 2018 Hearts Beat Loud LLC
公式サイト:http://hblmovie.jp/
★2019年6月7日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテにて公開
エリカ 38
監督・脚本:日比遊一
企画:樹木希林 配給: 製
出演:浅田美代子、平岳大、 窪塚俊介、 山崎一 、山崎静代 、小籔千豊、 小松政夫 、古谷一行(特別出演)、木内みどり、樹木希林
水商売をしながらネットワークビジネスを手がける渡部聡子(浅田美代子)は、ある日喫茶店で声をかけてきた女性・伊藤(木内みどり)の紹介で、国境を超えてビジネスを展開している平澤(平岳大)という男と出会う。精力的な魅力を放つ平澤と関係をもった聡子は、平澤が手がける途上国支援のための資金集めを任され、水を得た魚のように持ち前のチャーミングさを最大限に利用し、言葉巧みに人びとから金を集めていく。お金さえあれば、みんなが私を必要とし、誰からも愛されて、母親(樹木希林)も誇りに思ってくれる! やがて平澤の裏切りを知った聡子は平澤と別れ、金持ちの男性を丸め込んで豪邸を手に入れる。他人から巻き上げた金でホストに狂い、「私はエリカ。38歳」と偽り、タイに若い男を囲う聡子。だが、いつまで経っても配当金が受け取れないため出資者たちの怒りは募り、聡子は再びタイへ・・・・・・。
かつて世間を騒がせたつなぎ融資詐欺事件をモチーフに樹木希林が浅田美代子主演で映画を企画化した。60歳女性が口先で次々とお金を集め、贅沢三昧。タイでは38歳と偽り、若い男に貢ぐ。これが実話とは!
浅田美代子の60歳に見えないプロポーションに驚嘆。自分も被害者の1人と思い込めるからこそ人を騙せたのかもしれない。「コイツ、またやるぞ」感を浅田美代子は不敵な笑いで醸し出す。
木内みどりが現ナマ100万円を取り出し数えるシーンは迫力満点。さすがホンモノは違う。ご自身で用意されたというから、ますます驚いた。(堀)
本作の発想のもとになった「つなぎ融資の女王」がタイで捕まった時のニュース映像は、今でも鮮明に覚えている。実年齢が私に近いのに、フリフリのミニスカート姿。(フリフリは私も着るが、さすがにミニスカートは無理!) 38歳と偽って、タイの若い男をたぶらかしていたというから、ぶったまげた。そんな悪女を浅田美代子さんにやらせたいと思った樹木希林さん、お見事! 製作だけにかかわるつもりが、エリカの母親役で出演することに。これがまた、悪女の母というドスのきいた雰囲気。ご自身、旅立ちの時を察知していらしたのか、予定より前倒しで撮影。
二人が共演したドラマ「時間ですよ」をリアルタイムで見ていた身には、数十年の時を経ての共演が、ひと癖もふた癖もある女性ということに興味津々。(咲)
2018年/日本/カラー/ PG12/103分
配給:KATSU-do
Ⓒ吉本興業
公式サイト:http://erica38.official-movie.com/
★2019 年 6 月 7 日(金)より TOHO シネマズ シャンテ他全国ロードショー
The Crossing -ザ・クロッシング- PartⅠ(原題:太平輪 乱世浮生 The Crossing)
監督・脚本:ジョン・ウー
原案:ワン・ホエリン
出演:チャン・ツィイー、金城武、ソン・ヘギョ、ホアン・シャオミン、トン・ダーウェイ、長澤まさみ
1945年、国民党の将校、レイ・イーファン(ホアン・シャオミン)は、上海の舞踏会でチョウ・ユンフェン(ソン・ヘギョ)と運命的な出会いをする。しかし国共内戦が激化し、レイはユンフェンを残し内戦の最前線へと向かう―ユンフェンは新居の家屋で、「ザークン(金城武)」と記された絵と、額裏から「雅子(長澤まさみ)」の日記を発見する―ユイ・チェン(チャン・ツィイー)は、出征したまま行方不明になった恋人を探すため、従軍看護師に志願。十分な食糧が無いなかで見知らぬ兵士、トン・ターチン(トン・ダーウェイ)と家族のふりをして、食糧配給を得る。
中国の国共内戦を背景に3組の男女の愛を綴る。砲撃爆発シーンは実写だという。リアリティが半端ない。さすが、ジョン・ウー監督が人生を懸けた作品である。
国民党将校を演じたレイ・シーファンの凛々しいこと! 男気に溢れ、見る者を惹き付ける。しかし、待つ妻は辛いだろう。また、金城武に恋する長澤まさみの目を見張るような初々しさにびっくり。『コンフィデンスマンJP』とは両極端の役どころをきっちりこなす。
後半が気になる!(堀)
2014年/中国/カラー/129分
配給:ツイン
©Beijing Galloping Horse ・ All Rights Reserved.
公式サイト:http://thecrossing.jp/
★2019年6月7日(金)シネマート新宿・心斎橋他にてロードショー!
パドマーワト 女神の誕生 (原題:Padmaavat)
監督:サンジャイ・リーラ・バンサーリー
出演:ディーピカー・パードゥコーン、ランヴィール・シン、シャーヒド・カプール アディティ・ラーオ・ハイダリー
13世紀末、シンガール王国の王女、パドマーワティ(ディーピカー・パードゥコーン)は、西インドの小国、メーワール王国の王、ラタン・シン(シャーヒド・カプール)と恋に落ち、妃となった。同じころ、北インドでは、叔父のジャラーウッディーン(ラザ・ムラッド)を暗殺した若き武将、アラーウッディーン(ランヴィール・シン)が、イスラム教国の皇帝(スルタン)の座を手に入れていた。
獰猛で野心に満ちた彼は、第二のアレキサンダー大王との異名を持つほどに、その権勢を広げていく中、絶世の美女、パドマーワティの噂をききつけ、メーワール国に兵を差し向けるが、堅牢な城壁と、誇り高いラージプート族の王であるラタン・シンの抵抗により、パドマーワティの姿を見ることも許されなかった。
一計を案じたアラーウッディーンは、ラタン・シンを拉致してパドマーワティを自らの城におびき寄せるが、彼女の勇気ある救出策によりラタン・シンは奪い返され、遂に総力をメーワール王国に向かわせる。 城を取り囲むアラーウッディーンの大軍勢と睨みあうメーワール王国の兵士たち。 やがて始まる、王と王の誇りと野望を懸けた最後の戦い。
そして、圧倒的に不利なその戦に、パドマーワティは、ある決意をもって臨んでいた…
13世紀のインドを舞台に、絶世の美女を巡って引き起こされた一国の尊奉劇。獰猛で野心に満ち、第二のアレキサンダー大王と呼ばれた王が他国の王妃に興味を持ったことがきっかけで争いは起こる。王妃の覚悟の決断は日本人には共感しやすいだろう。豪華絢爛な王妃の衣装は眩い。ディーピカー・パードゥコーンの美しさがより引き立つ。(堀)
映画の冒頭に、「サティーなどの慣習を支持する意図はない」と掲げられている。
サティー(またはサッティ)とは、ヒンドゥー社会において亡き夫の火葬の火に、残された夫人が飛び込んで殉死すること。古くから特に支配階級の間で行われてきた慣習。サティーの本来の意味は「貞淑な女性」とのこと。
映画の後半で、赤いサリー姿の女性たちが火にむかっていく場面があった。お腹の大きい女性もいた。かつてインドを旅した時、ジョドプールのお城で、女性たちが火に飛び込む前に残した手形を見たことがある。大きなものから小さなものまで、いくつもあって、何人もいた妻が皆、焼身自殺したのだと胸がしめつけられる思いだった。
『パドマーワト』のサティーの場面は、慣習としての史実として描いたということだろう。
本作は、ヒンドゥー教とイスラーム教の対立という側面もあるが、実は後に17世紀のムガル帝国では支配者層であったムスリムが、サティーを野蛮な風習として反対したそうだ。そも、イスラームにおいて火葬そのものが禁止事項なのだが。
本作では、部族による慣習の違いも垣間見れて興味深い。(咲)
2018年/インド/ヒンディー語/シネスコ/164分
配給:SPACEBOX
©Viacom 18 Motion Pictures ©Bhansali Productions
公式サイト:http://padmaavat.jp/
★2019年6月7日(金)より新宿ピカデリー他全国順次ロードショー
月極オトコトモダチ
監督:穐山茉由
劇中歌・主題歌:BOMI
出演:徳永えり、橋本淳、芦那すみれ、野崎智子、師岡広明、三森麻美、山田佳奈
大人になると異性の友達ってなかなかできない。男女の間に友情は本当に存在しないの? WEBマガジン編集者の望月那沙(徳永えり)は、あるきっかけで「男女関係にならないスイッチ」を持つと語る柳瀬草太(橋本淳)に出会う。実は、彼は依頼主に雇われた「レンタル友達」だった。那沙はPVの数字の取れるネタとして、編集長に「レンタル男友達」を提案し、柳瀬をレンタルする。一方、那沙のルームメイトである珠希(芦那すみれ)は音楽を通じて柳瀬と距離を縮めていく。
仕事と割り切ってレンタルしていたつもりが、一緒の時間を過ごすうちにオトコトモダチに惹かれていく主人公・那沙。演じる徳永えりの表情を見ていると気持ちの変化は一目瞭然。一方のレンタル友だち・柳瀬はいつもスマートに接してくる。表情からはまったく気持ちが見えてこない。監督が橋本淳をキャスティングした理由は「フラットな友だち役が似合いそう」ということだが、狙い通りだった。柳瀬の気持ちはどうなのか。ハラハラしながら感情移入してしまう。
この作品は那沙のルームメイト・珠希を演じた芦那すみれのハスキーな歌声と曲の切ない雰囲気が印象に残る。MOOSIC LAB(映画監督と音楽アーティストのコラボを支援する映画祭)にエントリーし、見事、長編部門グランプリに輝いたのも納得だ。
ところで、肝心の男女の友情だが、あなたはどう思うだろうか。(堀)
穐山茉由監督にインタビューしました。
記事はこちらからご覧いただけます。
2018年/日本/カラー/79分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©2019「月極オトコトモダチ」製作委員会
公式サイト:https://tsukigimefriend.com/
★2019年6月8日より東京・新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺、イオンシネマ板橋ほかにて全国で順次公開