2019年05月04日
ばあばは、だいじょうぶ
監督:ジャッキー・ウー
原作:楠章子
脚本:仁瀬由深
撮影監督・編集:小美野昌史
音楽:田中和音
出演:冨士眞奈美、寺田心、平泉成、松田陽子、内田裕也、土屋貴子、久保寺淳、小暮智美、金内真弓、金島清史、真上沙剣、板倉佳司
ちょっと弱虫な小学生の翼(寺田心)は、喜寿を迎えたばあば(冨士眞奈美)、おとうさん(内田裕也)、おかあさん(松田陽子)と4 人暮らし。翼は、ばあばのことが大好きだ。何かくじけそうになると、ばあばのところに行って、話を聞いてもらう。そんな時、ばあばは、必ず「だいじょうぶだよ」と言ってくれる。学校でいじめられても、ばあばが助けてくれた。そんな優しいばあばが少しずつ変わっていく。同じ質問を何度も繰り返すようになり、得意だった編み物ができなくなる。ばあばは「わすれてしまう病気(認知症)」になってしまったのだ。怒り出したり、大切にしていた庭の植物を枯らしてしまったり、翼のために作ったジャムを一人で食べてしまったり……。翼はなんだか怖くなって、近寄らなくなってしまった。そんなある日、ばあばは、靴も履かないで家を出たきり、いなくなってしまった。 「ばあば、どこへ行ってしまったの?」 やがて、翼は、ばあばの秘密を知る。
厚労省の推計によれば、65 歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症に罹患すると言われているという。本作は小学生の孫の目を通して、認知症になった祖母の姿を描いている。きっかけはほんの小さな違和感。それは日頃から親密に接しているからこそ気が付く。忙しい父や母にはわからない。離れて暮らす伯母たちはなおのこと。孫が祖母に対して距離を置きたくなるのも仕方がない。何だか他人事には思えない展開に見入ってしまう。
作品では認知症を患う妻と介護する夫を近所に住まわせ、1つの解決方法を示す。しかし、答えは1つでない。主人公一家がこれから迎えるであろう困難までは描いていないが、家族で向き合っていこうという思いこそが大事だと伝わってくる。
原作は10 万部以上のベストセラー絵本「ばあばは、だいじょうぶ」(原作:楠章子/挿絵:いしいつとむ)で、第63 回青少年読書感想文全国コンクール課題図書・小学校低学年の部(2017年)に選ばれ、第3回「児童ペン賞」童話賞(2017年)を受賞した。また、2018 年12 月に開催されたミラノ国際映画祭の外国映画部門では主人公の少年・中前翼を演じた寺田心が最優秀主演男優賞、ジャッキー・ウー監督が最優秀監督賞をW 受賞した。(堀)
高齢になると避けられないのが、認知症をはじめとする病気です。今だって物忘れが多いというのに、脳の変化でますますひどくなるの?と暗たんとします。ならないうちから心配してもしょうがないので、家族やご近所と良い関係を作っていくことで予防線をはっていくつもり。ならない人もいますしね。
試写後に冨士眞奈美さんが、認知症の役は何度かしましたとおっしゃっていました。この作品では混乱するばあばの長回しのアップがあり、長いセリフをしゃべるより難しかったとのこと。家族も戸惑うでしょうが、壊れていく本人が一番辛いはずです。そんな思いを表情だけで見せているシーン、ご注目ください。原作は翼くんを主人公にした絵本です。写真は原作者の楠章子さん。「すてきな作品にしてくださって」と涙ぐまれていました。(白)
2018年/98分/シネマスコープ/5.1ch
配給:イオンエンターテイメント/エレファントハウス
©2018「ばあばは、だいじょうぶ」製作委員会
公式サイト:https://grandmaisokay.com/
★2019年5月10日(金)全国イオンシネマにてロードショー