2019年5月3日(金・祝)全国ロードショー 公開劇場はこちら
2017年11月26日から2018年2月18日にかけて、東京・大阪・愛知・福岡の4都市で計18回開催された「夜会工場VOL.2」コンサートが劇場版になり、迫力の5.1chサラウンドで全国の映画館の大スクリーンに甦る!
「時代」「わかれうた」「悪女」「空と君のあいだに」「旅人のうた」「地上の星」など、数々のヒット作がある中島みゆき。最近では「糸」がいろいろな歌手にカバーされたり、CMで流れたりしているが、この曲は1992年10月7日に発表された通算20作目のアルバム『EAST ASIA』に収録された曲。27年前に発表された曲が、ここ数年になって見直されている。
中島みゆきは1975年に「アザミ嬢のララバイ」でデビューしてから44年。最近ますます活躍が続くが「夜会」は1989年からスタートした中島みゆきのライフワーク。本人が原作・脚本・作詞・作曲・演出、そして主演を務めるという世界でも例がない「言葉の実験劇場」音楽舞台である。
前回、2013年11月から東京・名古屋・大阪・福岡の4都市で13公演行なわれた『夜会工場 VOL.1』を踏まえて、さらに進化したのが『夜会工場 VOL.2』。
『夜会工場 VOL.2』は、2017年11月26日から18年2月18日まで東京・大阪・愛知・福岡の4都市で計18回開催されたもので、過去19作品の名場面をダイジェスト・コンサートにしたもの。 中島みゆき『夜会工場 VOL.2』劇場版には、その30年の歴史の中から29曲と2篇のポエムが収録されている。上記ヒット作はほとんど使われてこなかったが、果てしのない中島みゆきの世界を存分に堪能できる。
キャスト 中島みゆき
公式HP http://yakaikojo-movie.jp/
詳細は 公式HP プロダクションノートをごらんください
http://yakaikojo-movie.jp/note.html
私はみゆきさんと同学年の1952年生まれ。1975年にデビューした時からのファンで、CDアルバムはほとんどもっているが、DVDはあまり持っていない。それでも熱狂的なファンというわけではなく、この40年あまりの中で、コンサートなどは5、6回しか行ったことがないし、夜会も4回くらいしか行ったことがない。というのはチケットが取れないから。取れなければ、それであきらめという状態だった。なので見ることができなかった「夜会」の場面をダイジェスト版とはいえ見ることができて嬉しかった。
実は、昨年12月、ピースボートで世界一周の船旅に出た。私は4人部屋だったけど、同室の人たちは同世代で私も含めて3人。その時の会話エピソードを。みゆきファンではない二人はコンサートには行ったことはないけど、「夜会」には行ったことがあるという。ヒット曲しか知らない二人は、知っている有名な曲はなく、中島みゆき不思議ワールドにもついていけず、いまひとつだったと言っていた。私は「そりゃあそうかも。みゆきさんはコンサートから入ったほうがよかったね」と言った。みゆきさんのオールナイトニポンも聞いていた長年のファンでも「なぜ、なぜ?」と思うくらい不思議世界で突拍子もないことが突然出てきて、予測不能な言葉の実験劇場だから、これまでのみゆきワールドを経験してこなかった人には「どうなっているの?」状態かも(笑)。でも、そういう人にも、この「夜会」ダイジェスト版を観ると、新たなみゆきさんを発見できるのでは。
それにしても、以前は「うらみ歌歌いの中島みゆき」などと言っていた人たちも、中島みゆきの真髄をやっとわかってくれたという思いはある。私には「元気を出して」と大きなエールをずっと送ってくれていた人なので。
最近では、NHKの朝ドラ『 マッサン』の主題歌「麦の唄」(2014年)があったり、今年(2019年)は、倉本聰氏脚本のテレビ朝日の昼ドラ『やすらぎの刻(とき)~道』で主題歌「進化樹」「離郷の歌」がTVから流れている。これは2017年4 月~9月に放映された『やすらぎの郷(さと)』の続編で、TV界で活躍した業界人が入っている老人ホーム「やすらぎの郷」を舞台にした物語。この最初の作品でも「慕情」という曲が主題歌として歌われていた。さらに中島みゆきを敬愛するアーティストが一堂に会してみゆきさんの名曲を歌う「中島みゆきリスペクトライブ 歌縁(うたえにし)」シリーズが4回目を迎えたりと、ますます広がる「みゆきワールド」を見ていると心強い。彼女の独特な詩の世界は、多くの人の心に響いている。
そうそう、去年、東京フィルメックスで観た『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』(中国)で「アザミ嬢のララバイ」が主題歌として使われていた。この曲は中国語でもカバーされているけど、この作品で使われていたのはみゆきさんが歌っているオリジナル。「なぜ中国語版ではなくオリジナル?」と思って質問したら、「監督がこの映画の脚本を書いている時にずっと聴いていたから」とプロデューサーが答えていた。この作品は2018年中国で公開され大ヒットしたらしいが、日本では 2019 年秋以降に公開されるとのこと(暁)。
曲目リスト
<第1幕>
二雙の舟(Inst.)
泣きたい夜に
Maybe
LA-LA-LA
熱病
最悪
EAST ASIA
船を出すのなら九月
南三条
子守歌(Inst.)
羊の言葉
愛から遠く離れて
Poem 1. 谷地眼(やちまなこ)
Poem 2. 傷
朱色の花を抱きしめて
陽紡ぎ唄
帰れない者たちへ
フォーチュン・クッキー
我が祖国は風の彼方
<第2幕>
百九番目の除夜の鐘
海に絵を描く
彼と私と、もう1人
ばりほれとんぜ
1人で生まれて来たのだから
すあまの約束
袋のネズミ
毎時200ミリ
思い出させてあげる
旅人よ我に帰れ(幸せになりなさい)
あなたの言葉がわからない
産声
配給:ローソンエンタテインメント
協力:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
2019年05月05日
ホワイト・クロウ 伝説のダンサー(原題:The White Crow)
監督:レイフ・ファインズ
脚本:デヴィッド・ヘアー
撮影:マイク・エリー
音楽:イラン・エシュケリ
出演:オレグ・イヴェンコ、アデル・エグザルホプロス、セルゲイ・ポルーニン、ラファエル・ペルソナ、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、レイフ・ファインズ
1961年。ルドルフ・ヌレエフ(オレグ・イヴェンコ)はキーロフ・バレエ(現マリインスキーバレエ)の一員として、パリ公演のために生まれて初めて祖国ソ連を出た。傲慢・我儘・反逆児と評される一方で、踊りへの情熱は誰よりも強いルドルフは、異国で得られるものすべてを吸収しようとするが、その行動はKGBに監視され、政府の圧力は強まるばかりだった。 6月16日、次の公演地へ向かおうとするルドルフは、突然帰国を命じられる。それは、収容所に連行され、踊りを続けることすらままならない未来を暗示していた。団員たちが旅立ち、KGBと共に空港に残されたルドルフが、不安と恐怖に襲われる中くだした決断とは一。
バレエの歴史を変えたと言われるロシア人バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが若くしてフランスに亡命した実話に基づく。
ヌレエフを演じる主演のオレグ・イヴェンコの眼光の鋭さが印象に残る。演技の経験がない、現役のプロバレリーナだというから驚きだ。バレエに対する情熱を一心に注いで踊る姿に見惚れてしまう。しかも超絶イケメン! さらにパリでヌレエフのルームメイトだったユーリ・ソロビヨフをセルゲイ・ポルーニンが演じている。これはもう眼福としかいいようがない。
美しいものを堪能する前半は過去を振り返るシーンもあってゆったりと進むが、後半の亡命シーンはまるでサスペンスのように緊張する。冒頭のシーンからヌレエフが亡命をしたことが分かっているにもかかわらず、失敗するのではないかとハラハラして見入ってしまう。監督の演出のうまさが際立つ。
ところで、ヌレエフはなぜ亡命をしたのか。冒頭、KGBから取り調べを受けた恩師が「彼はただ踊りたかったから西側に渡ったのだ」と答えていた。それを聞いたときには「踊るだけなら亡命しなくてもできるのでは?」と思ったが、より高みを目指すには自由が必要なのだ。作品を見て、その答えに納得した。(堀)
ヌレエフの人物評をみると、同じように反逆児と称されたセルゲイ・ポルーニンのほうがふさわしいような気がしましたが、現役のプリンシパル、オレグ・イヴェンコの目力も半端じゃありませんでした。バレエの場面をたっぷり楽しめるのはもちろん、社交界の花形クララの協力のもと、空港での緊迫したやりとりが出色です。アデル・エグザルホプロスがこんなに大人の女性を演じていたのに驚きました。『アデル、ブルーは熱い色』(2014)では、パスタソースで口の周りを汚していた少女だったのに。
昨年の東京国際映画祭にレイフ・ファインズ監督が招かれましたが、資金調達のためにと口説き落とされて自らもA.I.プーシキン役で出演しています。若いヌレエフを公私ともに支える教師で、慈愛に満ちた表情と悲しげな視線が残ります。ハリー・ポッターシリーズでは「名前の言えないあの人」をずっと務めて、目が怖かったんですけど。(白)
プロデューサーのガブリエル・タナさんと、レイフ・ファインズ監督
2018年10月27日、東京国際映画祭での記者会見には、さすがに大勢の記者が駆け付けました。
ヌレエフの複雑な内面を表わすことのできる人物を探すのが大変だったそうで、レイフ・ファインズは「監督として、演技のできる俳優を選んでバレエを習わせることにためらいがあったので、演技のできるダンサーを探しました」と語りました。そうして、選ばれたのが、現役ダンサーのオレグ・イベンコ。
レイフ・ファインズ自身は、監督に徹したかったそうですが、プロデューサーのタナさんから、「商業的価値を高めるため、ぜひ出演してほしいとお願いしました」と、資金集めのため、心苦しい依頼だったと明かしました。大のファンというほどでない私でも、やっぱりレイフご本人の姿をスクリーンで観れたのは嬉しかったので、ファンはなおさらでしょう!(咲)
2018年/イギリス=ロシア=フランス/ロシア語・英語・フランス語/127分/ビスタ/カラー・モノクロ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2019 British Broadcasting Corporation and Magnolia Mae Films
公式サイト:http://white-crow.jp/
★2019年5月10日(金) TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国 公開
2019年05月04日
ばあばは、だいじょうぶ
監督:ジャッキー・ウー
原作:楠章子
脚本:仁瀬由深
撮影監督・編集:小美野昌史
音楽:田中和音
出演:冨士眞奈美、寺田心、平泉成、松田陽子、内田裕也、土屋貴子、久保寺淳、小暮智美、金内真弓、金島清史、真上沙剣、板倉佳司
ちょっと弱虫な小学生の翼(寺田心)は、喜寿を迎えたばあば(冨士眞奈美)、おとうさん(内田裕也)、おかあさん(松田陽子)と4 人暮らし。翼は、ばあばのことが大好きだ。何かくじけそうになると、ばあばのところに行って、話を聞いてもらう。そんな時、ばあばは、必ず「だいじょうぶだよ」と言ってくれる。学校でいじめられても、ばあばが助けてくれた。そんな優しいばあばが少しずつ変わっていく。同じ質問を何度も繰り返すようになり、得意だった編み物ができなくなる。ばあばは「わすれてしまう病気(認知症)」になってしまったのだ。怒り出したり、大切にしていた庭の植物を枯らしてしまったり、翼のために作ったジャムを一人で食べてしまったり……。翼はなんだか怖くなって、近寄らなくなってしまった。そんなある日、ばあばは、靴も履かないで家を出たきり、いなくなってしまった。 「ばあば、どこへ行ってしまったの?」 やがて、翼は、ばあばの秘密を知る。
厚労省の推計によれば、65 歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症に罹患すると言われているという。本作は小学生の孫の目を通して、認知症になった祖母の姿を描いている。きっかけはほんの小さな違和感。それは日頃から親密に接しているからこそ気が付く。忙しい父や母にはわからない。離れて暮らす伯母たちはなおのこと。孫が祖母に対して距離を置きたくなるのも仕方がない。何だか他人事には思えない展開に見入ってしまう。
作品では認知症を患う妻と介護する夫を近所に住まわせ、1つの解決方法を示す。しかし、答えは1つでない。主人公一家がこれから迎えるであろう困難までは描いていないが、家族で向き合っていこうという思いこそが大事だと伝わってくる。
原作は10 万部以上のベストセラー絵本「ばあばは、だいじょうぶ」(原作:楠章子/挿絵:いしいつとむ)で、第63 回青少年読書感想文全国コンクール課題図書・小学校低学年の部(2017年)に選ばれ、第3回「児童ペン賞」童話賞(2017年)を受賞した。また、2018 年12 月に開催されたミラノ国際映画祭の外国映画部門では主人公の少年・中前翼を演じた寺田心が最優秀主演男優賞、ジャッキー・ウー監督が最優秀監督賞をW 受賞した。(堀)
高齢になると避けられないのが、認知症をはじめとする病気です。今だって物忘れが多いというのに、脳の変化でますますひどくなるの?と暗たんとします。ならないうちから心配してもしょうがないので、家族やご近所と良い関係を作っていくことで予防線をはっていくつもり。ならない人もいますしね。
試写後に冨士眞奈美さんが、認知症の役は何度かしましたとおっしゃっていました。この作品では混乱するばあばの長回しのアップがあり、長いセリフをしゃべるより難しかったとのこと。家族も戸惑うでしょうが、壊れていく本人が一番辛いはずです。そんな思いを表情だけで見せているシーン、ご注目ください。原作は翼くんを主人公にした絵本です。写真は原作者の楠章子さん。「すてきな作品にしてくださって」と涙ぐまれていました。(白)
2018年/98分/シネマスコープ/5.1ch
配給:イオンエンターテイメント/エレファントハウス
©2018「ばあばは、だいじょうぶ」製作委員会
公式サイト:https://grandmaisokay.com/
★2019年5月10日(金)全国イオンシネマにてロードショー
2019年05月02日
ドント・ウォーリー(原題:Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot)
監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
原作:ジョン・キャラハン
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
アルコールに頼る日々を過ごしていたジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)は、自動車事故に遭い一命を取り留めるが、胸から下が麻痺し、車いす生活を余儀なくされる。絶望と苛立ちの中、ますます酒に溺れ、周囲とぶつかる自暴自棄な毎日。だが幾つかのきっかけから自分を憐れむことを止めた彼は、過去から自由になる強さを得ていく。そして、持ち前の辛辣なユーモアを発揮して不自由な手で風刺漫画を描き始める。人生を築き始めた彼のそばにはずっと、彼を好きでい続ける、かけがえのない人たちがいた・・・。
交通事故によって車椅子生活を余儀なくされたジョン・キャラハンが風刺漫画家として自立するまでを描いた作品、だと思っていたのだが、それは1つの側面に過ぎなかった。本作の大きなテーマは“許し”。実の母親に捨てられ、養父母に受け入れられていない(と思いこんだ)ため、自己肯定感を持てずにアルコールに逃避したジョンが他者を許し、自分を許せるようになるまでを描いている。
本作を見るまでは、映画『こんな 夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の筋ジストロフィーを患い、毒舌を吐きながら車椅子生活を送っている主人公・鹿野靖明と似ているのではないかと思っていた。しかし、鹿野は親に愛され、その愛を知っているがゆえに親の幸せを願って独立した生活をする。ボランティアには気を遣わせないよう、わがままに見えるくらい強く、自分の要望を主張する。作品の中で変わっていくのは鹿野ではなく、ボランティアたちだった。
愛されているという実感を持っているかどうかでこんなにも違うのか。子を持つ身として深く考えさせられた。(堀)
公開を前に来日したガス・ヴァン・サント監督のティーチインイベントのレポート記事はこちらからご覧ください。
全身まひと宣告され絶望しているジョンに、恋人が「今がどん底ならそれ以上悪くはならないね」てなことを言う場面がありました。そういう人たちががっちりとジョンを支えていきます。もとはといえばさんざん酔っ払った末の自動車事故なんですが。
アメリカ映画ではよく飲酒運転の場面が出てきます。日本みたいに厳しくないの?車がないと困る広大な国だし、お酒の1杯くらい大目に見るのか?とネットを調べたら、血中アルコール度0.08%以下ならOKなんだそうです。ビールやワイン1杯消化?するのに1時間くらいだそうで(個人差あり)飲んだ量と時間をみて運転しちゃうらしい。と在住の方のブログで読みました。しかしオーバーしたら罰則は日本より厳しいし、事故にあいたくはないので、最近はuberとかLyftとか、車を呼べるサービスがヒットしたんだとか。
蛇足情報でしたが、そんなシステムがまだなかったころのジョンと飲み仲間のデクスター、人生がすっかり変わってしまいました。周りの支援があってこそですが、本人の意思が一番なのはいうまでもありません。ホアキン・フェニックスはじめ俳優陣の説得力ある演技に魅了されます。ジョンの漫画はシンプルで辛辣でユーモアがあって素敵。(白)
映画『ドント・ウォーリー』劇場マナーCM
タイトルにかけて、「Don't撮影」「Don'tタバコ」など、主人公演じるホアキン・フェニックスの様々なシーンを盛り込んだ劇場用マナーCMが作られた。作品の世界観とCMが訴える内容がぴったり!
2018年/アメリカ/英語/115分/カラー/PG12
配給:東京テアトル
© 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC
公式サイト:http://www.dontworry-movie.com/
★2019年5月3日(金・祝)にヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷・新宿武蔵野館他にて公開
2019年05月01日
映画 賭ケグルイ
監督:英勉
原作:河本ほむら、尚村透(掲載 月刊「ガンガンJOKER」スクウェア・エニックス刊)
脚本:高野水登、英勉
撮影:小松高志
音楽:未知瑠
出演:浜辺美波、高杉真宙、池田エライザ、矢本悠馬、森川葵
創立122年を迎える私立百花王学園。この学校ではギャンブルの勝者に地位と名誉が与えられ、敗者は財産も尊厳も奪われる。転校生の蛇喰夢子(浜辺美波)は常軌を逸したギャンブル狂。生徒会長・桃喰綺羅莉(池田エライザ)とのギャンブルを心待ちにしていた。
そのころ、学園では、過去にギャンブルで綺羅莉に打ち勝ったことのある伝説の人物・村雨天音(宮沢氷魚)が主宰する白装束集団・ヴィレッジが“非ギャンブル、生徒会への不服従”を掲げて、勢力を伸ばしていた。それを快く思わない生徒会はヴィレッジ解体並びに夢子潰しを目論み、ギャンブルイベント「生徒代表指名選挙」を開催する。非ギャンブルの考えを貫く村雨は沈黙を守るが、村雨の部下である歩火(福原遥)は組織を守るためにゲームに参戦。夢子は小心者の同級生・鈴井(高杉真宙)と、夢子と共に生徒会に立ち向かってきた芽亜里(森川葵)もかつての対戦相手・木渡(矢本悠馬)とタッグを組み、“学園史上最大のギャンブルトーナメント”に挑んだ。
ギャンブル狂の女子高生が主人公!?とまずはその設定に驚くだろう。彼女の蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)という名前の奇抜さが目をひく。他の登場人物も蛇喰夢子と並ぶ最強のギャンブラーは桃喰 綺羅莉(ももばみ きらり)など、何と読んだらいいのかわからない凝った名前ばかり。まるで読み方クイズのようで、他の登場人物の名前を知りたくなった。
さらに彼女たちの行動の規範になっているギャンブルも既存のゲームにひねりを加え、斬新な趣向を凝らしている。しかも3ゲームが次から次へと展開。勝者がなぜ勝ったのかを、他者の心理を巧みに読み取った上での駆け引きで説明する。勝者になっても敗者になっても、俳優たちが他の作品では見せたことのない強烈な表情を披露する。芸でも勝負しているかのよう。エンタメ感たっぷりでワクワクしてしまう。
その一方で、俳優たちがそれぞれのキャラに内面性をしっかり肉付けして演じているので、過剰なまでに高いテンションの演技でも、やり過ぎ感がない。普段の印象からガラッと変わる主演の浜辺美波はさることながら、矢本悠馬、森川葵は何かが憑依したかのようだ。今後の彼らの活躍から目が離せない。
原作は、月刊「ガンガン JOKER」で連載中の同名コミック。シリーズ累計部数は450万部を突破しており、テレビアニメは2017年7月に第1期、2019年1月に第2期が放送された。テレビドラマとして実写化もされており、2018年1月にシーズン1、2019年4月にシーズン2を放送。今回公開される『映画 賭ケグルイ』はテレビドラマの劇場版である。(堀)
2019年/日本/119分
配給:ギャガ
©2019 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・「映画 賭ケグルイ」製作委員会
公式サイト:https://kakegurui.jp/
★2019年5月3日(金・祝) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
ザ・フォーリナー 復讐者(原題:The Foreigner)
監督:マーティン・キャンベル
脚本:デヴィッド・マルコーニ
音楽:クリフ・マルティネス
出演:ジャッキー・チェン、ピアース・ブロスナン
ロンドンでレストランのオーナーとしてつつましい生活を送るクァン(ジャッキー・チェン)。平穏無事な生活を送っていた中、突然たったひとりの高校生の娘が無差別テロに命を奪われてしまう。クァンは復讐の怒りに煽られ、静かに爆発していく。彼は犯人を探すうちに、北アイルランド副首相のリーアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン)にたどり着く。ヘネシーは、官僚としての仕事で過去に抱えた問題に脅かされていた。クァンは元特殊部隊のスキルを活かし、政府とテロリストを相手にその謎を徹底的に追っていく。果たして彼は真実にたどり着くことができるのか!?
ジャッキー・チェンが製作と主演を兼任したサスペンスアクション。『007』シリーズで傑作との呼び声高い2作品『007 ゴールデンアイ』『007 カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベルがメガホンを取った。共演は『007 ゴールデンアイ』でキャンベル監督と組んだピアース・ブロスナン。
ジャッキー・チェンはいつもの人懐っこい笑顔を完全封印して、シリアスな役に挑戦。アクションスターというこれまでのイメージは返上し、悲哀漂う表情で演技に深みを加えた。ハードボイルドなジャッキーが堪能できる。しかし、椅子を使ったアクションは健在なのでご安心を。(堀)
2017年/イギリス/中国/アメリカ/カラー/110分
配給:ツイン
© 2017 SPARKLE ROLL MEDIA CORPORATION STX FINANCING, LLC WANDA MEDIA CO., LTD.SPARKLE ROLL CULTURE & ENTERTAINMENT DEVELOPMENT LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://the-foreigner.jp/
★2019年5月3日(金・祝)新宿ピカデリー他 全国ロードショー