2019年04月20日

誰がために憲法はある

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監督:井上淳一
「憲法くん」作:松元ヒロ 
製作:馬奈木厳太郎
撮影:蔦井孝洋、土屋隆史、高間賢治、向山英司
音楽:PANTA
出演:渡辺美佐子、高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本多代、日色ともゑ、長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋芳枝

女優の渡辺美佐子さんが「憲法くん」として語りかけます。「わたしがリストラされるって本当ですか?」

この映画に出会って、渡辺美佐子さんの「憲法くん」の語りを聞きましたら、すとんと胸にはいってきました。こんなに大事なことが書いてあったのだと、驚きました。元は芸人の松元ヒロさんが1997年から舞台で演じていた一人芝居です。わかりやすいことばで描かれた絵本(講談社刊)にもなっています。憲法前文は103条の条文の魂ともいえるものです。まずこの映画を観て聞いて、それから自分でも読んでみてください。

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渡辺美佐子さんは、小学校の同級生だった龍男くんが疎開先の広島で、8月6日に亡くなったことを知ります。戦後35年も経ってからのことです。1985年から「地人会」で原爆朗読劇に参加していた渡辺美佐子さんは、会の解散を惜しんで、2008年にお仲間の女優さんたちと「夏の会」を立ち上げました。毎年夏には鎮魂と平和を願って公演を続けてきましたが、メンバーが高齢となりこの夏が最後になるそうです。戦争を体験したメンバーの思いと公演のようすが映像に残ってほんとに良かった!(白)


擬人化された憲法が改変を危惧して語りかける。演じるのは渡辺美佐子。憲法は国民が国を縛るものだという。そうだったのか。縛られているのは国民かと思っていた。知っているようで知らない憲法を知るいい機会。さらに渡辺美佐子が女優仲間と続けてきた原爆の朗読劇についても取り上げた。渡辺美佐子を始め、女優たちの思いを映し出す。それを受け継いでいこうとする子どもたち。戦争という悲劇が二度と起こらないことを願う。(堀)

☆渡辺美佐子さん、井上淳一監督、松元ヒロさんのお話を伺うことができました。
インタビュー記事を本誌102号に掲載しました。

★インタビュー記事採録
渡辺美佐子さん
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476685328.html
井上淳一監督
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476684959.html
松元ヒロさん
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476685631.html


2019年/日本/カラー/シネスコ/69 分
配給:太秦
(C)「誰がために憲法はある」製作運動体
http://www.tagatame-kenpou.com/
★2019年4月27日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 15:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

山懐(やまふところ)に抱かれて

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監督・プロデューサー:遠藤隆
撮影:田中進
ナレーション:室井滋
出演:吉塚家のみなさん ほか

岩手県下閉伊郡田野畑村で、酪農業を営んでいる吉塚公雄さん一家。公雄さんはまだ山地だったこの土地を切り開き、理想とする「山地(やまち)酪農」を実践してきた。一年中放牧し、餌は一面に植えたシバや草、輸入飼料は与えず、交配・出産も自然にまかせている。自然を生かし、安全安心を追求できる方法ながら結果が出るまでに長い時間を要する。1979年登志子さんと結婚。懸命に働いてきた夫婦は、この24年の間に5男2女の子どもたちに恵まれた。大きくなった子どもたちはそれぞれの道を見つけて進んでいく。

テレビ岩手 開局50周年記念作品。テレビ岩手が24年もの間取材したドキュメンタリー。吉塚家には、ガンコなお父さん、明るくて優しいお母さん、働き者のふたりを手助けしながら育った子どもたちがいます。この家族がとっても暖かくて(外は厳寒でも)、お金がなくても心は豊かで、思わず応援しながら観ていました。食事の前に「いただきます」というご家族は多いですよね。吉塚さんちは「お父さんありがとう、お母さんありがとう」と家族の名前を一人ずつあげ、牛の名前も全部呼んで感謝し、やっと「めしあがれ」となるのです。よーく聞いていてね。
テレビ岩手で折々に放映してきた家族のひとこまひとこまを全部見直し、再編集して映画化となった作品です。ずっとそばで見てきた遠藤隆監督にお話を伺いました。今印刷中の本誌に2p掲載しました。ポレポレ東中野さんで上映期間中販売いたします。(白)


初日舞台挨拶記事はこちらです。

2019年/日本/カラー/HD/103分
配給:ウッキー・プロダクション
(C)テレビ岩手
http://www.tvi.jp/yamafutokoro/
★2019年4月27日(土)よりポレポレ東中野にて公開

☆★遠藤隆監督インタビューはこちらです。

☆劇場トークイベント
4/27(土)、4/28(日) 各回上映後
 ゲスト:吉塚公雄・登志子(本作登場)、遠藤隆監督

4/29(月) 12:20の回上映後
 ゲスト:室井滋(本作ナレーション)、遠藤隆監督

4/30(火) 12:20の回上映後
 ゲスト:小谷あゆみ(農業ジャーナリスト・フリーアナウンサー)、遠藤隆監督

☆4/27(土)~5/6(月) ポレポレ坐カフェ(映画館1F)にて
 田野畑山地酪農牛乳製品メニュー販売を予定
☆4/27(土)~4/30(火)いわて銀河プラザ(歌舞伎座斜め向い)にて
 田野畑山地酪農牛乳製品を直接販売


田野畑酪農牛乳HP http://yamachi.jp/  製品通販を受付しています
posted by shiraishi at 14:32| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

僕たちのラストステージ 原題:STAN & OLLIE

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監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー

かつて世界中を席巻したお笑いコンビ、ローレル&ハーディのスタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)とオリバー・ハーディ(ジョン・C・ライリー)は1953年、イギリスでホールツアーを開始する。最初は待遇も客入りも悪かったが、めげずに互いを笑わせ合いながらツアーを続けるうちに、かつての人気を取り戻す。しかし、ある口論をきっかけにオリバーはコンビ解消を決意する。

日本でいえば往年の浅草お笑い芸人のような味わいの2人組「ローレル&ハーディ」。彼らの人気は国際的なものだった。1920年代から100本以上の作品に出演。サイレント映画がトーキーに移っても人気は一向に衰えることはなく、ハリウッド・コメディ界の頂点を極めたコンビ。世界中に熱心なファンがいた。ちなみに日本では「極楽コンビ」と呼ばれ、公開作品は『極楽○○』、『○○極楽』になるのが定番だったそう。座布団敷きの小屋で大笑いする庶民たちの顔が浮かぶようだ。

本作の冒頭6分間1カットの長回しショットから度肝を抜かれる。楽屋を出た2人がハリウッドのスタジオを通り抜け、プロデューサーとギャラについてまくし立てるまでのテンポの良さ!ジョン・S・ベアード監督の意気込みとコンビへの愛情が伝わり、既に胸熱になってしまう。

人気の落ちた晩年、ニューカッスルを皮切りにマンチェスター、リヴァプール、グラスゴーなど英国中を巡り、アイルランドへと渡るロードムービーでもある。’50年代の英国のうら寂れたホテル、小屋、社会風俗の様子、人々の衣装やヘアスタイルまで細部のディテールにも手を抜かない創りが嬉しい。

何より素晴らしいのは、スタン・ローレルに扮する英国の名コメディ俳優スティーブ・クーガンとオリバー・ハーディ役ジョン・C・ライリーの絶妙な呼吸による演芸の再現。100年経ったとしても陳腐化しないであろう”至高の芸”に笑った笑った。これぞエンターテイメント。やがてホロリとさせる演出展開、芝居の上手さには唸らされる。

脇役も魅力的だ。2人の他にハロルド・ロイドを見出した目利きプロデューサーには、巨匠ジョン・ヒューストンの息子ダニー・ヒューストン(『ナイロビの蜂』など)。ベアード監督の代表作、ジェームズ・マカヴォイ主演『フィルス』を観た人なら、あのキャンディヴォイスが忘れられないシャーリー・ヘンダーソンが、ハーディの妻に扮し、アクセントを添えている。
実際のローレル&ハーディの映像が流れるエンディングまで眼が離せない98分。こうした地味な佳編が観られる幸せを映画ファンとして噛みしめた。 (幸) 


2018年/イギリス・カナダ・アメリカ/英語/カラー/スコープ/98分
配給:HIGH BROW CINEMA
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018
公式サイト:http://laststage-movie.com/
★2019年 4月19日(金)より、新宿ピカデリー他、全国公開
posted by yukie at 13:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

愛がなんだ

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監督・脚本:今泉力哉
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
主題歌:Homecomings
出演:岸井ゆきの(テルコ)、成田凌(マモル)、深川麻衣(葉子)、若葉竜也(ナカハラ)、江口のりこ(すみれ)

テルコは28歳のOL。編集者のマモルに出会って一目ぼれしてしまった。以来、マモルの電話を待ち続け、呼ばれたら何があっても最優先で飛んでいく。職場での評価はガタ落ち。そんなに大好きなのに、マモルの一番はテルコではなかった。親友の葉子はテルコの一途さに呆れている。葉子にはテルコと同じように自分を思い続けるナカハラがいたが、便利に使いまわすだけだった。

東京国際映画祭のコンペ作品で、昨年のうちに観ていました。はたから見ると相当イタイし、男にしてみれば「便利だけれど重い」テルコですが、誰かを好きになるってそんなものでしょう。テルコは尽くすのが嬉しくて幸せそうですが、たとえベッドインしようが、マモルにはテルコが思うほどの意味はありません。そして、マモルはテルコと真逆のすみれに恋してしまいます。そうそう簡単に両想いには進まないものですよね。
恋する人たちはみな切ない思いを抱えて右往左往。奔放な葉子にもそれなりの理由があり・・・同世代の男女にはあるある感満載のラブストーリー。俳優さんたちが憎らしくならないところがいいです。マモルは原作ではもっとダメ男なんですが、成田凌くんのイケメン感漏れちゃうのが難かも。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/123分
配給:エレファントハウス
(C)2019映画「愛がなんだ」製作委員会
http://aigananda.com/
★2019年4月19日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:33| Comment(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リアム16歳、はじめての学校(原題:Adventures in Public School) 

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監督・脚本:カイル・ライドアウト
撮影:スターリング・バンクロフト
音楽:マシュー・ロジャーズ:
出演:ジュディ・グリア、ダニエル・ドエニー、シオバーン・ウィリアムズ、アンドリュー・マックニー

リアム(ダニエル・ドエニー)は小さい頃から学校には行かず、シングルマザーのクレア(ジュディ・グリア)から英才教育を受けている。有名大学に入ってホーキング博士のような天文学者になるのが夢。一緒に遊ぶ友達はおらず、勉強が終わると自宅の壁を相手に一人でサッカーをしているが、友達がいないことに寂しさを感じるようになっていた。
ある日、高卒認定試験を受けるためにはじめて足を踏み入れた公立高校で、リアムは人生ではじめて恋に落ちる。一目惚れした義足の美少女アナスタシア(シオバーン・ウィリアムズ)に近づくためわざと試験に落ち、リアムは高校に通学することを決意した。

学校に行かなくても知識を学ぶことはできる。クレアのように親が全部教えなくても、基礎的なことさえ学んでいれば、独学でもできるだろう。専門の先生をつければ、より効果的だ。しかし、人間関係は学校のような集団の場でなければ学べない。同級生との横の繋がり。上級生や下級生との縦の繋がり。どちらも経験することで少しずつ学んでいく。そして、その先にあるのが恋愛か。リアムは人間関係を学ばぬうちに、一気に恋愛に入ってしまった。だからこそ、とんちんかんになってしまうリアムの行動が微笑ましい。
また、子どもの将来を心配すればするほど、管理したくなるもの。私事で恐縮だが、子どもが生まれたときに食べるものに気を使い、安全な食材にこだわり、インスタント食品はおろか冷凍食品さえ一切与えなかった。ところが幼稚園に入って、友だちの家に遊びに行った際、ペヤングソース焼きそばをいただき、子どもがはまってしまったのだ。それまでの6年間を全否定されたようでショックだったことをふと、思い出した。クレアの子離れの苦労もけっして他人ごとではない。(堀)


2017年/カナダ/英語/カラー/ビスタサイズ/86分
配給:エスパース・サロウ
©2017 SCHOOLED FILMS INC., ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://liam-hajimete.espace-sarou.com/
★2019年4月27日(土)から新宿シネマカリテほか全国で順次公開
posted by ほりきみき at 00:08| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする