2019年04月14日
多十郎殉愛記
監督・脚本:中島貞夫
脚本:谷慶子
監督補佐:熊切和嘉
出演:高良健吾(清川多十郎)、多部未華子(おとよ)、木村了(清川数馬)、寺島進(溝口蔵人)
幕末の京都。清川多十郎は長州藩の名うての剣士であったが脱藩し、貧乏長屋で無為の暮らしをしている。高い志はとうに捨て、居酒屋を切り盛りするおとよの世話になっているばかり。そこへ多十郎の腕を見込んで接触してくるものがいた。適当にあしらっているうちに故郷から弟数馬が訪ねてくる。純真な数馬は多十郎のていたらくを責め、勤皇を貫こうとはやる。浪人の取り締まりを強化していた京都見廻組が急襲し、多十郎は弟を逃がすためについに剣を抜く。
ちゃんばらの名作「木枯し紋次郎」の中島貞夫監督が、84歳にして久々にメガホンをとった本格時代劇。直弟子の熊切和嘉監督が補佐につき、「京都撮影所の伝統であるちゃんばらを、次の世代に伝えたい」という中島監督の熱い思いを支えました。目力のある人という監督の希望にはまったのは高良健吾さん。長州でなく九州男児ですがきりりとした顔立ちが「侍」です。自堕落な姿がまあ色っぽくて、ファンは悶絶ですよ。
『HINOKIO』(2004)のジュンちゃんの面影を今も残している多部未華子さんが、いつのまにかこんな女将役も似合うようになっていました。時代劇には珍しい前髪はなんだか幼く見えるんですが、京都にだけあった髪型だそうです。後半30分も続く立ち回りは、京都撮影所のスタッフ総力あげての結果でしょうか。
撮影に入る前からずっと熱心に稽古していたという、高良さんの渾身の殺陣をご覧下さい。また時代劇に出てほしいなぁ。(白)
2018年/日本/カラー/93分
配給:東映、よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(c)『多十郎殉愛記』製作委員会
http://tajurou.official-movie.com/
★2019年4月12日(金)ロードショー
ビューティフル・ボーイ(原題:Beautiful Boy)
監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
原作:デヴィッド・シェフ、ニック・シェフ
脚本:ルーク・デイヴィス
製作:ブラッド・ピット
撮影:ルーベン・インペンス
美術:イーサン・トーマン
音楽:ゲイブ・ヒルファー
出演:スティーヴ・カレル(デヴィッド・シェフ)、ティモシー・シャラメ(ニック・シェフ)、モーラ・ティアニー(カレン・バーバー)、エイミー・ライアン(ヴィッキー・シェフ)、ケイトリン・ディヴァー(ローレン)
ニックは成績優秀でスポーツ万能な学生。父親デヴィッドの再婚相手ヴィッキーとも仲良く、小さな弟妹にも優しい兄だった。そんな彼がふとしたことでドラッグに溺れ、快楽を求めてエスカレートしていく。家族が気づいたときは抜け出せなくなっていた。デヴィッドは自慢の息子の変貌に愕然とするが、全てを包みこんで更生を助ける。
新聞の全面広告にティモシー・シャラメのアップが掲載されました。どこから見ても美青年の彼が、細身の身体をさらに減量してドラッグ中毒のニックを演じます。家族に愛され、容姿に恵まれ、希望大学全てに合格し、恋人がいても薬物中毒に陥ってしまいます。「病気じゃない。自分が選んだ結果だ」と父に訴えるニックが痛ましいです。
アメリカでは年間7万人もが薬物の過剰摂取で死亡しているとか。有名人、歌手や俳優が亡くなればニュースになります。多いですよね。その背後にそんなにも多くの人が亡くなっている世の中ってなんなんでしょう。
この原作は中毒を克服したニックと、その父親がそれぞれに書いた手記をもとにしています。今や人気脚本家となったニックもエンドロールに父親と一緒に登場。何度堕ちても見放さなかった家族の愛情が勝った!と祝福したいです。しかし、そういう絆や助力に恵まれずにいる人が断然多いはずです。そして怖いのが使用は中学生まで低年齢化しているということ。映画の中で父親がジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」を子守唄に、息子を寝かしつける場面があたたかくてじーんとしました。(白)
2018年/アメリカ/カラー/ビスタ/120分/R-15
配給:ファントム・フィルム
(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.
http://beautifulboy-movie.jp/
★2019年4月12日(金)ロードショー