2019年04月07日

『芳華-Youth-』 原題 芳華

2019年4月12日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
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監督・製作:馮小剛(フォン・シャオガン)
脚本・原作:厳歌苓(ゲリン・ヤン)
製作:王中軍(ワン・チョンジュン)&王中磊(ワン・チョンレイ)
音楽:音楽:趙麟(チャオ・リン)
撮影:羅攀(パン・ルオ)
編集:張琪(チャン・チー)
出演
黄軒(ホアン・シュエン):リウ・フォン
苗苗(ミャオ・ミャオ):ホー・シャオピン
鐘楚曦(チョン・チューシー):シャオ・スイツ
楊采鈺(ヤン・ツァイユー):リン・ディンディン
王天辰(ワン・ティエンチェン):チェン・ツァン
蘇岩(ヤン・スー):文工団分隊長
趙立新(チャオ・リーシン):文工団の政治委員

『狙った恋の落とし方』『戦場のレクイエム』『女帝エンペラー』『唐山大地震』『わたしは潘金蓮じゃない』など、ヒット作を監督し、映画出演作も多い馮小剛(フォン・シャオガン)監督の最新作。軍の歌劇団である文芸工作団(=文工団)に所属した監督自らの若き日の経験を、同じく若き日に文工団に所属したゲリン・ヤンの原作(『シュウシュウの季節』『妻への家路』)をもとに描いた作品。

1970年代~80年代の中国。軍所属で歌や踊りを披露し、兵士たちを時に慰め、鼓舞する役割をになう歌劇団・文工団に所属する若者たちの激動の時代に翻弄されながらもたくましく生きる青春の日々をつづった物語。
1976年、17歳のシャオピン(ミャオ・ミャオ)はダンスの才能を認められ、夢と希望に溢れ入団するが周囲となじめないでいた。そんな彼女にとって唯一の支えは、模範兵のリウ・フォン(ホアン・シュエン)だった。しかし、ある事件をきっかけにリウ・フォンは転属させられてしまい離れ離れになってしまった。
文革、毛沢東の死、中越戦争など、国を揺るがす事件が立て続けに起こり、時代の変化の中で文工団も解散に。激動の70~80 年代に、その時代の波に翻弄されながらも懸命に生きた若者たちを描く。そして何十年もたって、シャオピンとリウ・フォンは再びめぐり合う。
シャオピンを演じるのは苗苗(ミャオ・ミャオ)。彼女が想いを寄せるリウ・フォンを演じるのは『ブラインド・マッサージ』『空海-KU-KAI -美しき王妃の謎』の黄軒(ホアン・シュエン)。

今までいくつもの文工団を描いた中国映画を観てきたが、ここまで文工団の内部や生活を描いた作品はなかったような気がする。それにしてもダンス、歌、演奏、演劇など芸能に関係することに、こんなにたくさんの軍に所属する文工団団員がいるというのが驚きだった。それに入団したとたんに軍服(しかも自分の軍服ではなく、同室の人から黙って借りてしまった)を着た写真を撮って、その写真を親に送るという行為が最初に出てきて軍に所属するということがステイタスという、そういう文化もあるのだと知った。
主人公のシャオピンは、結局、文工団の中でダンスで生きていくことはできず、看護部門に移動し軍には所属を続けた。そういう中で中越戦争のシーンも出てきたのだろう。軍の娯楽部門に所属していたメンバーもそういう場から逃れられなかった。文工団に所属していたメンバーも、解散後、成功して金持ちになった人や、生活が苦しい人、時間の流れの中での変化が出てくるが、リウ・フォンも中越戦争で片手を失ってしまい傷害者として生き、生活が苦しい様子が描かれる。こういう中で二人は再び出会い、その後は一緒に生活してったのだろう。おだやかな日々を送れたのだろうか(暁)。


★第12回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞 受賞
北京語/2017年/ドルビー/シネスコ/135分/字幕:樋口裕子
2017年 製作国中国 配給アットエンタテインメント
posted by akemi at 20:32| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アレッポ 最後の男たち   原題:LAST MEN IN ALEPPO

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監督: フェラス・ファヤード 共同監督:スティン・ヨハネセン

2016年、シリア北部、歴史ある町アレッポ。
「アサドのせいで空ばかり見上げている」と嘆く自衛団「ホワイト・ヘルメット」の男たち。爆撃機が行く方向を見定め、急行する。一人でも多くの人を救おうと。

2011年の民衆による平和的デモを、シリア政府は軍事的手段で応酬。もう5年も続き、各地で町は瓦礫と化し、アレッポも例外でない。
爆撃を免れた公園ですべり台やブランコを楽しむ大勢の親子たち。
退避命令が出る。ドローンで偵察し、一般市民も無差別に攻撃してくるのだ。

ここで人が暮らすのは無理、トルコかどこかに逃げようと思うが、逃げ場のない人たちを救おうと、アレッポで自衛団の一員として日々空を見上げる男たち。彼ら自身、死と隣り合わせの毎日だ。
親にはトルコで仕事をしていると嘘をついている者もいる。
「権力の横暴を同胞のはずのアラブ諸国は黙殺している」と嘆く男性。
絶望的な姿を映画は見せつける・・・

私がシリアを訪れたのは、昭和63年9月。旅行中に昭和天皇が病に倒れられたので、元号で時期をはっきりと記憶している旅だ。アレッポ城の上から眺めた町は、旧市街にもびっしりと衛星テレビのパラボラアンテナが林立していて、実はちょっと興ざめだった。(思えば、それだけ豊かということなのだけど!)
でも、スーク(市場)は中世さながらの雰囲気で、わくわくする空間だった。ツアーで45分しか時間を取ってくれなくて、この市場のためだけにも、ぜひまたゆっくり訪れたいと思った町。その市場も、木っ端微塵に破壊されてしまった。

各国が介入しても解決せず、救いようのない内戦と思っていたら、実は大国の思惑が背景にあるらしい。
『アレッポ最後の男たち』を試写で観たと、友人に伝えたら、こんな情報をいただいた。

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アレッポのスークのことを書かれた黒田美代子先生の著書「商人たちの共和国」…ご本人が亡くなられた後絶版されていたのを、新装復刊された中にご主人の黒田壽郎先生が書かれております。
“支援国イスラエル擁護のためのアラブ勢力の徹底的破壊こそが米国の戦略の根幹であり、イラクの撹乱のすぐ後で新たにターゲットとされたのが、まさにシリアに他ならない。現在のシリアにおける騒乱は内戦ではなく外圧によって惹起されたものなのである…”と。まさしくおっしゃる通りです。黒田美代子先生がご存命でしたら、今のアレッポをシリアを見たら、絶句、言葉を失ってしまうでしょうね。
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映画の中で、足をひきずった猫ちゃんが出てきたことも、この友人(猫好き!)に伝えたところ、「アレッポで沢山のお猫さんの世話をされている方のことがテレビで流れたらことがあります。沢山の人がアレッポを離れてトルコの方に逃げて行った。が、飼っていたお猫さん残して…。みんなが帰ってくるまで、お猫さんの面倒を何とか見続けたい…と」

さて、私のシリアの旅に戻る。
旅の最後にツアーバスの運転手さんのご自宅を皆で訪ねた。一行20名ほどが全員集える大広間のある家だった。5~6人のお子さんのいる大家族。シリアでは、平均的な家族構成のようだった。急な客を温かくもてなしてくれたご一家。今はどうしていることか。
安住の地を求めて国を出た人も、シリアを離れられない人々も、どちらも故国を思う気持ちは同じだろう。シリアの人々が、心穏やかに暮らせる日の来ることを祈るばかりだ。(咲)

【トークイベント】

4月13日(土)11:00~上映後 太田 昌興さん / (株)アレッポの石鹸 共同代表取締役
4月13日(土)15:45~上映後 春日 芳晃さん / 朝日新聞国際報道部次長
4月14日(日)13:20~上映後 安田 純平さん / ジャーナリスト

第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品
2017年サンダンス映画祭ワールド・シネマ ドキュメンタリー・
コンペティション部門グランプリ他 世界中で23の映画賞受賞した作品

2017年/デンマーク・シリア/104分/ドキュメンタリー
制作:アレッポ・メディア・センター、ラーム・フィルム
制作協力:DR TV、SWR/ARTE、SVT、RTS、NRK、YLE
配給:ユナイテッドピープル  
公式サイト:http://unitedpeople.jp/aleppo/
★2019年4月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 14:15| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする