2019年04月28日

カンパイ! 日本酒に恋した女たち 原題 Kampai! Sake Sisters

2019年4月27日
YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー

カンパイ! 日本酒に恋した女たち.jpg
(C) 2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE

日本酒の未来を切り拓く3人の女性たちを描く
日本酒に魅せられた女たちの物語


監督・脚本:小西未来
プロデューサー:柳本千晶、小西未来
キャスト
今田美穂
千葉麻里絵
レベッカ・ウィルソンライ
久慈浩介
ジョン・ゴントナー

 日本酒に魅せられた3人の男性(外国人日本酒伝道師、外国人杜氏、海外への進出に積極的に挑戦する南部美人の蔵元)を描いた『カンパイ! 世界が恋する日本酒』の小西未来監督が贈る、日本酒ドキュメンタリー映画第2弾! 今回は、かつて女人禁制とされていた日本酒の世界で先駆者として活躍する女性たちの姿を追っている!
 広島で100年以上続く酒蔵をついだ女性杜氏の今田美穂さん、日本酒のバーテンダーともいえる、大胆な日本酒ペアリングで新たな風を起こしている日本酒バーのソムリエ千葉麻里絵さん、そして、外国人向けに試飲会や講習会など、日本酒の魅力をPRするニュージーランド出身の日本酒コンサルタント・レベッカ・ウィルソンライさんという3人の女性の活動を紹介し、新しい日本酒の魅力的な世界を紹介している。
 監督は米国在住で映画ジャーナリストとして長年ハリウッド映画業界の最前線で活躍する小西未来。海外にいるからこそ見える、日本酒の海外展開事情を、私たちに映像で教えてくれる。そして、日本での新しい日本酒製造の取り組みや伝統も伝えてくれる。

今田美穂さん.jpg
(C) 2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE

 長らく女人禁制だった日本酒の世界だけど、そんな中で道を切り開いてきた女性たちの姿が誇らしい。今や「女性杜氏の会」というのもあるくらい女性杜氏がいるらしい。3,4年前の数字で30人くらいというのを見たことがある。そんな中で、この作品に出てきた今田美穂さんは先駆的な存在。こういう人がいたからこそ増えているのでしょう。
そして、前作に引き続き日本酒の新しい波を感じさせる作品に仕上がっている。
それにしてもこんなにも海外で日本酒の魅力が広がっているということに前作に引き続き驚かされる。前作に登場した方も出てきて、今、どうしているかなと思う観客の期待にも沿っている(笑)。実は前作を見た後「南部美人」を探してあちこちの酒屋さんや日本酒を置いているスーパーを巡った私としては、蔵元の久慈浩介さんがちょこっと出ていたのも嬉しかった。最近行った地元の蕎麦屋に「南部美人」を置いているのをみつけたので、今度飲んでみたいと思った矢先にこの作品を観た。今度は今田美穂さんが作っている今田酒造の「富久長」を探して飲んでみたい(暁)。


『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』公式HP
製作年 2019年
製作国 アメリカ・日本合作
配給シンカ

なおシネマジャーナルのでは、前作『カンパイ!世界が恋する日本酒』で小西未来監督にインタビューしています。よかったら、こちらもごらんください。






posted by akemi at 21:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

初恋~お父さん、チビがいなくなりました

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監督: 小林聖太郎
原作:西炯子の漫画「お父さんチビがいなくなりました」
出演:倍賞千恵子、藤竜也、市川実日子、佐藤流司、小林且弥、優希美青、濱田和馬、吉川友、小市慢太郎、西田尚美、星由里子

70歳になる有喜子(倍賞千恵子)は、結婚して50年。3人の子供たちは独立して、今は夫・勝(藤竜也)と二人暮らし。無口で頑固な勝は、元職場の相談役として時々会社に顔を出す以外は町の将棋道場に通いつめ、有喜子のもっぱらの話し相手は、近所で拾ってきた黒猫のチビ。編み物をしながら韓国ドラマを観る日々だ。
末娘の菜穂子(市川実日子)が父の好物の栗を持って訪ねてきた日、有喜子は、「お父さんと別れようと思ってるの」と漏らす。その夜、心のよりどころのチビがいなくなる。3日経っても帰ってこないのを、夫は、「死に場所を探しにいったんだよ」とつれない。娘のアドバイスでペット探偵に捜索を依頼すると、その探偵は有喜子の好きな韓流スターにそっくりだった。一方、勝が近くの喫茶店で女性と会っているのを有喜子は目撃してしまう・・・

結婚50年、会話のない夫婦の結婚した頃のことが時折差し込まれながら、物語は進んでいきます。二人はお見合い結婚なのですが、勝は有喜子が働いていた駅構内のミルクスタンドの常連客だったのです。毎朝、先輩の志津子にお金を差し出し牛乳とあんパンを買う「7時25分の男」。志津子が彼に気がある風だったので、結婚する相手が勝だと言えずに仕事を辞めてしまったのです。ところが、50年後、近所の喫茶店で会っていたのは、志津子! いったい、どういう関係??と、有喜子ならずとも思ってしまいます。
勝は、いかにも昔気質の日本男児。何を考えているのか口に出さないのです。人様々だけど、こんな男と暮らすくらいなら結婚しない方がマシだなぁ~と、独り身の私は思ってしまいます。でも、最後には、ほっこり♪ それが、50年連れ添った歳月の証なのだなぁ~と、うらやましくなるワケです。
倍賞千恵子さんと藤竜也さんが、いかにも年月を重ねてきたご夫婦という、なんともいい感じです。
密会する志津子を演じているのは、星由里子さん。お年を召しても素敵です。これが遺作となりました。

駅から雑木林を通って帰る大きな家。ここはどこ?と、気になります。
宣伝の方に伺ったら、家のあるところと、雑木林の道は、全く離れた場所だとか。
雑木林の道は、黒猫のチビを拾った場所。
さて、いなくなったチビは、帰ってくるのでしょうか・・・ ぜひ劇場でご確認を!(咲


『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』小林聖太郎監督インタビューは、こちらで! 
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◆初日舞台挨拶

日時:5月10日(金)13:15の回 ※上映後
場所:新宿ピカデリー
登壇者(予定):倍賞千恵子、藤竜也、市川実日子、小市慢太郎、西田尚美、小林聖太郎監督、りんご(ねこ)

2018年/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ(一部シネマスコープ)/DCP 5.1ch/105分
配給: クロックワークス
公式サイト:http://chibi-movie.com/
★2019年5月10日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー







posted by sakiko at 18:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月27日

あの日々の話

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原作・監督・脚本:玉田真也
企画:玉田真也、山科圭太
出演:山科圭太、近藤強、木下崇祥、野田慈伸、前原瑞樹、森岡望、高田郁恵、菊池真琴、⻑井短 / 太賀 / 村上虹郎

とある大学のあるサークルで代表選挙が行われた日の二次会のカラオケボックス。前代表や現役生、OGら男女9人が残っていた。当初は和やかに進んでいたが、女子が席を外すと、男たちは「今日やれるかも」と勝手に盛り上がる。一方、別の部屋では1年生女子がOGから叱責を受けていた。やがて、すべてが明らかになり、人間関係が泥沼と化していく。

数人の男女がカラオケでオールをする。ただ、それだけの話だが、パワハラ、マウンティング、世代間のギャップなどの人間関係が見事に凝縮されている。さらに、会話のズレが何度も出てくるが、男性陣はズレたことでその人をいじり、女性陣は必死に話を合わせる。男女の違いを感じた。
玉田真也監督が主宰する玉田企画の同名舞台劇の映画化。キャストは舞台とほぼ同じ。村上虹郎と太賀がゲスト参加した。太賀はカラオケボックスの店員役だが、彼のひとことが作品をぴしっと引き締める。さすがの存在感だった。(堀)


玉田真也監督インタビュー記事はこちらから。

2018 年/日本/ステレオ/シネマスコープ/カラー/100分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
© 2018『あの日々の話』製作委員会
公式サイト:https://anohibi.com/
★2019年4月27日(土)、渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー

posted by ほりきみき at 02:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月26日

バースデー・ワンダーランド 

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監督:原恵一
原作:柏葉幸子『地下室からのふしぎな旅』
脚本:丸尾みほ
音楽:富貴晴美
声の出演:松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央、藤原啓治、矢島晶子、市村正親

誕生日の前日、学校を休んだアカネ(松岡茉優)は母(麻生久美子)に頼まれて、叔母のチィ(杏)が営む骨董屋に行く。そこで地下室の扉が突然開いて、謎の大錬金術師のヒポクラテス(市村正親)とその弟子の小人のピポ(東山奈央)が現れた。2人はアカネに「私たちの世界を救って欲しいのです!」と必死に請う。自分に自信のないアカネは断るが、好奇心旺盛で自由奔放な叔母のチィに促され、地下室の扉の先からつながっていた<幸せな色に満ちたワンダーランド>に行く。その世界は色が失われる危機に瀕していた。

勇気が必要なことはできれば避けたい。これは誰しもが思うこと。主人公のアカネは学校で仲のよかった友だちがイジメを受けるのに遭遇する。しかし「そんなこと、やめようよ」のひとことがどうしても言えない。そして、アカネがイジメを受けたわけではないのに、学校をずる休みしてしまう。そこでファンタジックな体験をするのである。
一般的なファンタジー作品の主人公は強い意志を持って、何かを成し遂げようとする。しかし、アカネにはそんな強い意志はない。流されるまま、自分の意志をはっきりと持つ叔母のチィとワンダーランドを旅していく。主人公らしからぬキャラクター設定だが、かえって見ている者に「自分もそういうところあるよね」と共感を呼ぶ。そして、ワンダーランドにも同じように勇気が必要なことから逃避している人物がいた。その人物をアカネが支えることでワンダーランドの危機を救う。アカネが精神的に成長し、バシバシ活躍することを期待していた人は肩透かしを食らうかもしれないが、このくらいの成長の方がリアルだろう。肝心なのは元の世界に戻ったときである。ワンダーランドを経験したアカネの成長を見てほしい。
ところで、本作の原恵一監督は『百日紅 Miss HOKUSAI』(15)で第39回アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門審査員賞を受賞しているが、本作も2019アヌシー国際アニメーション映画祭の長編映画コンペティションに正式ノミネーションされた。結果が楽しみである。(堀)


2019年/日本/115分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) 柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/birthdaywonderland/
★2019年4月26日(金) 全国ロードショー
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月21日

パパは奮闘中!  原題:Nos Batailles   英題:Our Struggles

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監督・脚本:ギヨーム・セネズ 
共同脚本:ラファエル・デプレシャン
出演:ロマン・デュリス(『タイピスト!』『ムード・インディゴ うたかたの日々』)、レティシア・ドッシュ(『若い女』)、ロール・カラミー(『バツイチは恋のはじまり』)、ルーシー・ドゥベイ

妻は子どもを置いて家出、職場ではリストラの嵐・・・
人生は日々闘い!


オンライン販売の倉庫で働くオリヴィエ(ロマン・デュリス)。残業続きで忙しく、幼い息子のエリオット(バジル・グルンベルガー)と娘のローズ(レナ・ジラード・ヴォス)の子育てと家事は、妻のローラ(ルーシー・ドゥベイ)に任せきり。
そんなある日の午後、学校から子どもたちを迎えに来るよう電話がかかってくる。母親が迎えに来ないというのだ。子どもたちを連れて家に帰ると、ローラは身の回りの品と共に消えていた。心当たりもなく途方に暮れるオリヴィエ。その日から、オリヴィエの闘いが始まる。仕事は忙しいのに、慣れない子育てに家事もこなさなくてはならないのだ。おまけに、職場で人望の厚いオリヴィエは肩たたきの対象になった人の相談に乗ってあげないといけない。やがて、本格的に会社がリストラ政策を打ち出す。会社側からは、人事部のポストを今より高い給料で用意すると声がかかる。一方、組合の専従のポストが空いたから、ぜひ専従になって会社と闘ってくれと頼まれる。専従を引き受けると、遠くの町に引っ越さないといけないので、子どもたちは母親が帰ってきた時に困ると不服だ。さて、オリヴィエはどうする・・・
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日本語のタイトル『パパは奮闘中』から、ママが家出して、パパが子育てに奮闘する物語とイメージしていたら、もう一つの物語の軸が、職場でリストラが始まり、組合側につくか、会社側につくかという選択を迫られる話。
がぜん興味を持ちました。というのも、私自身、20年ほど前に、勤めていた会社の経営が悪化して、希望退職とい形で辞めた経験をしているのです。それまで一緒に仲良くカラオケやお酒を飲みに行っていた上司が、部下のクビを切る立場になり、内心、さぞつらかったことと、この映画を観て思い出しました。

そういえば、私の知り合いの男性で、家に帰ったら、奥さんとお子さんが、身の回りの品と共に消えていたという方がいます。お子さんを置いていかれなかっただけ、マシ?

どこの世界にもありそうな物語。結構辛辣なテーマを、ユーモアも交えて軽やかに描いています。

原題Nos Bataillesは、「私たちの戦い」という意味。 ギヨーム・セネズ監督にインタビューした際、タイトルに込めた思いを伺ったら、人生の中で起こる様々な戦いを想定。「戦い」も複数形であることに注目くださいとの答えでした。 (咲)

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ギヨーム・セネズ監督  
*インタビューは、こちらでどうぞ!

2018年 トリノ国際映画祭 観客賞受賞
2018年 ハンブルグ国際映画祭 批評家映画賞 受賞
2019年 セザール賞 最優秀男優賞・外国映画賞 ノミネート
2019年 ベルギーアカデミー賞(マグリット賞)作品賞、監督賞 含む 5部門受賞

2018年/ベルギー・フランス/99分/フランス語/日本語字幕:丸山垂穂
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:テレザ、ポイント・セット
協賛:ベルギー王国フランス語共同体政府国際交流振興庁(WBI)
@2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/funto/
★2019年4月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開





posted by sakiko at 21:59| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『主戦場』 原題Shusenjo: The Main Battleground of the Comfort Women Issue

2019年4月20日(土)~シアター・イメージフォーラム、4月27日(土)〜名古屋シネマテーク、第七藝術劇場、京都シネマ、近日元町映画館他全国順次公開

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(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC

監督・脚本・撮影・編集・ナレーション:ミキ・デザキ
プロデューサー:ミキ・デザキ ハタ・モモコ 
アソシエイトプロデューサー:カン・ミョンソク 
音楽:オダカ・マサタカ アニメーション:1K FILMS 
製作:ノーマン・プロダクションズ
出演:トニー・マラーノ aka テキサス親父 藤木俊一 山本優美子 杉田水脈 藤岡信勝 ケント・ギルバート 櫻井よしこ 吉見義明 戸塚悦朗 ユン・ミヒャン イン・ミョンオク パク・ユハ フランク・クィンテロ 渡辺美奈 エリック・マー 林博史 中野晃一 イ・ナヨン フィリス・キム キム・チャンロク 阿部浩己 俵義文 植村隆 中原道子 小林節 松本栄好 加瀬英明 他

ようこそ、『慰安婦問題』論争の渦中へ。ひっくり返るのは歴史か、それともあなたの常識か


 韓国の日本軍元慰安婦の方たちの問題が政治的に利用され、彼女たちの思いとは違う方向に向いてしまっていると感じる今日この頃。この挑戦的なコピーと共に、今まで描かれてきた元慰安婦たちのドキュメンタリーにはない、ネットを駆使した作品を製作したのはアメリカに住む若い日系アメリカ人YouTuberのミキ・デザキ。

あなたがネトウヨでもない限り、彼らをひどく憤らせた日系アメリカ人YouTuberのミキ・デザキを、おそらくご存知ないだろう。ネトウヨからの度重なる脅迫にも臆せず、彼らの主張にむしろ好奇心を掻き立てられたデザキは、日本人の多くが「もう蒸し返して欲しくない」と感じている慰安婦問題の渦中に自ら飛び込んでいったとHPに書かれていたが、ネットの世界と縁遠い私としては、ネットの世界で「元慰安婦」の問題が広がっているとは全然知らなかった。
私はシネマジャーナル94号の『日本軍「慰安婦」を描いたドキュメンタリー』という「元慰安婦」をテーマにしたドキュメンタリー作品を紹介しているが、その記事の冒頭で、「最近日本軍元慰安婦のことが大きな話題になっているが、その内容がひどい。強制連行はなかった、民間業者が連れ歩いた、軍が管理したというなら証拠を見せろ、売春婦として金もうけのために行ったなど、被害女性の傷に塩を塗り込むような発言があり」と書いたが、まさにそれがもっとひどいことになっている。そして、日本と韓国間だけでなくアメリカに住む人たちも巻き込んで論争が広がっていることをこの『主戦場』で知った。
慰安婦たちは「性奴隷」だったのか?「強制連行」は本当にあったのか?  なぜ元慰安婦たちの証言はブレるのか? そして、日本政府の謝罪と法的責任は?という疑問を胸にデザキは、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、ケント・ギルバート(弁護士/タレント)、渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館」事務局長)、吉見義明(歴史学者)などなど、日・米・韓の、この論争の中心人物たちを訪ね回って彼らの発言を集めている。よくこれだけの人に取材できたなと思うくらい行動的な監督。
いろいろな人の意見が目まぐるしく登場し、私からすれば「聞きたくもない」発言も多かったけど、そういう対立する数々の主張を小気味よく反証させ合いながら、スタイリッシュなドキュメンタリーとして完成した。さらにおびただしい量のニュース映像と記事の検証や分析を織り込み、イデオロギー的にも対立する主張の数々、思い込みを論破してゆく。
「慰安婦」問題を巡るいくつかの論点。よく言われる「20万人」という数字。強制連行だったのか否か、「性奴隷」だったのか、日本軍が関与しているかなどをあげ、左右両派の論者(研究者、政治家、活動家、ジャーナリスト)らのインタビューを交互に紹介、構成している。人数も発言時間もほぼ同じ。結論は出さず判断は観客自身にゆだねているが、どちらの意見がまっとうかは明白。「慰安婦ではなく売春婦」などという意見は許しがたい。しかも女性がそんな風にいうなんて。聞きたくもない意見を聞いて、最初は気分よく観ることができなかったけど、後半になって、刺激的でエキサイティング、スピーディな展開と、資料の充実さも含め、こういう構成は説得力あるかもと思い始めた。
元慰安婦や戦争体験者の多くが鬼籍に入った今、この若い青年の「人権」「正義」「真実」という価値観を元に歴史を検証するという試みは他でも必要になってくるだろう。
 元慰安婦だった方は、冒頭、2015年の日韓合意後、韓国政府要人に詰め寄るイ・ヨンスさん(ビョン・ヨンジュ監督の『息づかい』に出演)と、1991年「慰安婦」として初めて名乗り出た金学順(キム・ハクスン)さんの二人しか出てこないが、このシーンは大事なシーンである。やはり慰安婦だった方の思いは忘れてはいけない。

『主戦場』
公式HP 
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 東風

公開 舞台挨拶などの情報
★4/20(土)10:50と13:30回上映後、ミキ・デザキ監督初日舞台挨拶
★4/26(金)18:45回(日・英字幕版)上映後、ミキ・デザキ監督によるティーチ・イン
神奈川県 横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 近日
青森県 フォーラム八戸 0178-38-0035 6月7日(金)〜6月13日(木)
山形県 フォーラム山形 023-632-3220 7月5日(金)〜7月11日(木)
宮城県 チネ・ラヴィータ 022-299-5555 5月17日(金)〜5月30日(木)
福島県 フォーラム福島 024-533-1717 6月14日(金)〜6月20日(木)
新潟県 シネ・ウインド 025-243-5530 5月18日(土)より公開
新潟県 高田世界館 025-520-7442 5月11日(土)より公開
石川県 シネモンド 076-220-5007 6月22日(土)より公開
愛知県 名古屋シネマテーク 052-733-3959 4月27日(土)〜5月17日(金)
★4/27(土)10:50回上映後、ミキ・デザキ監督初日舞台挨拶
長野県 松本CINEMAセレクト 0263-98-4928 ・5月12日(日) 11:00〜
会場:松本市中央公民館 Mウイング6階ホ-ル
・5月26日(日) 11:00〜
会場:まつもと市民芸術館小ホール
大阪府 第七藝術劇場 06-6302-2073 4月27日(土)より公開
★4/27(土)15:20回上映後、ミキ・デザキ監督初日舞台挨拶
京都府 京都シネマ 075-353-4723 4月27日(土)より公開
★4/27(土)13:25回上映後、ミキ・デザキ監督初日舞台挨拶
兵庫県 元町映画館 078-366-2636 近日
広島県 横川シネマ 082-231-1001 6月1日(土)より公開
広島県 シネマ尾道 0848-24-8222 近日
愛媛県 シネマルナティック 089-933-9240 5月24日(金)より公開
福岡県 KBCシネマ1・2 092-751-4268 近日
大分県 シネマ5 097-536-4512 5月11日(土)より公開
宮崎県 宮崎キネマ館 0985-28-1162 近日
沖縄県 桜坂劇場 098-860-9555 近日
posted by akemi at 21:42| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イメージの本 原題 :LE LIVRE D‘IMAGE 英題 THE IMAGE BOOK

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監督:監督・編集・ナレーション:ジャン=リュック・ゴダール
撮影・編集:ファブリス・アラーニョ


ヌーヴェルヴァーグの巨匠として知られるジャン=リュック・ゴダールの異色作。数々の絵画、映画、文章、音楽をコラージュした映像でつづる5章で構成された物語に、現代にはびこる暴力、戦争、不和への思いを込める。第71回カンヌ国際映画祭でスペシャル・パルムドールに輝いた。


ゴダール御歳88歳、四年を掛けた新作である。あぁ〜!ゴダールの聴き慣れたゴダールの声によるナレーションの何たる心地好さ♪ 押し寄せるイメージの洪水。5章に構成され、奇跡のように再構築された夥しい引用映像の数々…。まるでゴダールの脳の中を覗いているような興奮を味わう83分だ。

地球上に充満し、止むことのない暴力・戦争・不信、不条理、不満 、不安、哀しみ、怒りに対して、ゴダールは過去の多くのアートを引用しながら再構築して行く。これがゴダール流の表現方法なのだ。

撮影のファブリス・アラーニョが撮り下ろしたオリジナル映像も、抜群に”ヌケの良い”美しさなのだが、個人的には古今東西、様々な映画の一場面を引用する形式に強く惹き付けられた。

ブニュエルが登場したかと思えば、溝口健二の『山椒大夫』、それも水戸光子が襲われる場面である!劇的なカットからゴダールは何を伝えたかったのか…。

イラン、アラブといった中東地域・紛争地帯の映像も多く引用される。古いイラン映画へのオマージュにより、これら貴重な文化や風土が失われることを危惧しているのだろう。
続けて流れる悲惨な映像群も、ゴダール独得のコラージュが施されているため、散文詩の如き叙情的な話法で語られる。まさにゴダールしか到達し得ない深度であろう。

物心ついてから見続けてきたゴダール、本作を観て中座したい人、居眠りしたい人…がいたとしても構わない。観客を置き去りにした潔さがゴダール流なのだ。

バッハ、シュトラウスなどの壮麗な楽曲も、ぶつんぶつんと場面により平気で途切れる。困惑する人もいるだろう。が、人の”意識”とはこのように断片的なものなのではないだろうか。それを映像にして提示してくれたゴダール。

88歳にして実験性を忘れず攻め続けるゴダールの姿勢を体感して欲しい。(幸)


2019年/カラー/84分
配給:コムストック・グループ
(C) Casa Azul Films -Ecran Noir Productions-2018
公式サイト:http://jlg.jp/
2019年4月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほかロードショー
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2019年04月20日

誰がために憲法はある

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監督:井上淳一
「憲法くん」作:松元ヒロ 
製作:馬奈木厳太郎
撮影:蔦井孝洋、土屋隆史、高間賢治、向山英司
音楽:PANTA
出演:渡辺美佐子、高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本多代、日色ともゑ、長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋芳枝

女優の渡辺美佐子さんが「憲法くん」として語りかけます。「わたしがリストラされるって本当ですか?」

この映画に出会って、渡辺美佐子さんの「憲法くん」の語りを聞きましたら、すとんと胸にはいってきました。こんなに大事なことが書いてあったのだと、驚きました。元は芸人の松元ヒロさんが1997年から舞台で演じていた一人芝居です。わかりやすいことばで描かれた絵本(講談社刊)にもなっています。憲法前文は103条の条文の魂ともいえるものです。まずこの映画を観て聞いて、それから自分でも読んでみてください。

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渡辺美佐子さんは、小学校の同級生だった龍男くんが疎開先の広島で、8月6日に亡くなったことを知ります。戦後35年も経ってからのことです。1985年から「地人会」で原爆朗読劇に参加していた渡辺美佐子さんは、会の解散を惜しんで、2008年にお仲間の女優さんたちと「夏の会」を立ち上げました。毎年夏には鎮魂と平和を願って公演を続けてきましたが、メンバーが高齢となりこの夏が最後になるそうです。戦争を体験したメンバーの思いと公演のようすが映像に残ってほんとに良かった!(白)


擬人化された憲法が改変を危惧して語りかける。演じるのは渡辺美佐子。憲法は国民が国を縛るものだという。そうだったのか。縛られているのは国民かと思っていた。知っているようで知らない憲法を知るいい機会。さらに渡辺美佐子が女優仲間と続けてきた原爆の朗読劇についても取り上げた。渡辺美佐子を始め、女優たちの思いを映し出す。それを受け継いでいこうとする子どもたち。戦争という悲劇が二度と起こらないことを願う。(堀)

☆渡辺美佐子さん、井上淳一監督、松元ヒロさんのお話を伺うことができました。
インタビュー記事を本誌102号に掲載しました。

★インタビュー記事採録
渡辺美佐子さん
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476685328.html
井上淳一監督
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476684959.html
松元ヒロさん
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/476685631.html


2019年/日本/カラー/シネスコ/69 分
配給:太秦
(C)「誰がために憲法はある」製作運動体
http://www.tagatame-kenpou.com/
★2019年4月27日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 15:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

山懐(やまふところ)に抱かれて

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監督・プロデューサー:遠藤隆
撮影:田中進
ナレーション:室井滋
出演:吉塚家のみなさん ほか

岩手県下閉伊郡田野畑村で、酪農業を営んでいる吉塚公雄さん一家。公雄さんはまだ山地だったこの土地を切り開き、理想とする「山地(やまち)酪農」を実践してきた。一年中放牧し、餌は一面に植えたシバや草、輸入飼料は与えず、交配・出産も自然にまかせている。自然を生かし、安全安心を追求できる方法ながら結果が出るまでに長い時間を要する。1979年登志子さんと結婚。懸命に働いてきた夫婦は、この24年の間に5男2女の子どもたちに恵まれた。大きくなった子どもたちはそれぞれの道を見つけて進んでいく。

テレビ岩手 開局50周年記念作品。テレビ岩手が24年もの間取材したドキュメンタリー。吉塚家には、ガンコなお父さん、明るくて優しいお母さん、働き者のふたりを手助けしながら育った子どもたちがいます。この家族がとっても暖かくて(外は厳寒でも)、お金がなくても心は豊かで、思わず応援しながら観ていました。食事の前に「いただきます」というご家族は多いですよね。吉塚さんちは「お父さんありがとう、お母さんありがとう」と家族の名前を一人ずつあげ、牛の名前も全部呼んで感謝し、やっと「めしあがれ」となるのです。よーく聞いていてね。
テレビ岩手で折々に放映してきた家族のひとこまひとこまを全部見直し、再編集して映画化となった作品です。ずっとそばで見てきた遠藤隆監督にお話を伺いました。今印刷中の本誌に2p掲載しました。ポレポレ東中野さんで上映期間中販売いたします。(白)


初日舞台挨拶記事はこちらです。

2019年/日本/カラー/HD/103分
配給:ウッキー・プロダクション
(C)テレビ岩手
http://www.tvi.jp/yamafutokoro/
★2019年4月27日(土)よりポレポレ東中野にて公開

☆★遠藤隆監督インタビューはこちらです。

☆劇場トークイベント
4/27(土)、4/28(日) 各回上映後
 ゲスト:吉塚公雄・登志子(本作登場)、遠藤隆監督

4/29(月) 12:20の回上映後
 ゲスト:室井滋(本作ナレーション)、遠藤隆監督

4/30(火) 12:20の回上映後
 ゲスト:小谷あゆみ(農業ジャーナリスト・フリーアナウンサー)、遠藤隆監督

☆4/27(土)~5/6(月) ポレポレ坐カフェ(映画館1F)にて
 田野畑山地酪農牛乳製品メニュー販売を予定
☆4/27(土)~4/30(火)いわて銀河プラザ(歌舞伎座斜め向い)にて
 田野畑山地酪農牛乳製品を直接販売


田野畑酪農牛乳HP http://yamachi.jp/  製品通販を受付しています
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僕たちのラストステージ 原題:STAN & OLLIE

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監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー

かつて世界中を席巻したお笑いコンビ、ローレル&ハーディのスタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)とオリバー・ハーディ(ジョン・C・ライリー)は1953年、イギリスでホールツアーを開始する。最初は待遇も客入りも悪かったが、めげずに互いを笑わせ合いながらツアーを続けるうちに、かつての人気を取り戻す。しかし、ある口論をきっかけにオリバーはコンビ解消を決意する。

日本でいえば往年の浅草お笑い芸人のような味わいの2人組「ローレル&ハーディ」。彼らの人気は国際的なものだった。1920年代から100本以上の作品に出演。サイレント映画がトーキーに移っても人気は一向に衰えることはなく、ハリウッド・コメディ界の頂点を極めたコンビ。世界中に熱心なファンがいた。ちなみに日本では「極楽コンビ」と呼ばれ、公開作品は『極楽○○』、『○○極楽』になるのが定番だったそう。座布団敷きの小屋で大笑いする庶民たちの顔が浮かぶようだ。

本作の冒頭6分間1カットの長回しショットから度肝を抜かれる。楽屋を出た2人がハリウッドのスタジオを通り抜け、プロデューサーとギャラについてまくし立てるまでのテンポの良さ!ジョン・S・ベアード監督の意気込みとコンビへの愛情が伝わり、既に胸熱になってしまう。

人気の落ちた晩年、ニューカッスルを皮切りにマンチェスター、リヴァプール、グラスゴーなど英国中を巡り、アイルランドへと渡るロードムービーでもある。’50年代の英国のうら寂れたホテル、小屋、社会風俗の様子、人々の衣装やヘアスタイルまで細部のディテールにも手を抜かない創りが嬉しい。

何より素晴らしいのは、スタン・ローレルに扮する英国の名コメディ俳優スティーブ・クーガンとオリバー・ハーディ役ジョン・C・ライリーの絶妙な呼吸による演芸の再現。100年経ったとしても陳腐化しないであろう”至高の芸”に笑った笑った。これぞエンターテイメント。やがてホロリとさせる演出展開、芝居の上手さには唸らされる。

脇役も魅力的だ。2人の他にハロルド・ロイドを見出した目利きプロデューサーには、巨匠ジョン・ヒューストンの息子ダニー・ヒューストン(『ナイロビの蜂』など)。ベアード監督の代表作、ジェームズ・マカヴォイ主演『フィルス』を観た人なら、あのキャンディヴォイスが忘れられないシャーリー・ヘンダーソンが、ハーディの妻に扮し、アクセントを添えている。
実際のローレル&ハーディの映像が流れるエンディングまで眼が離せない98分。こうした地味な佳編が観られる幸せを映画ファンとして噛みしめた。 (幸) 


2018年/イギリス・カナダ・アメリカ/英語/カラー/スコープ/98分
配給:HIGH BROW CINEMA
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018
公式サイト:http://laststage-movie.com/
★2019年 4月19日(金)より、新宿ピカデリー他、全国公開
posted by yukie at 13:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

愛がなんだ

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監督・脚本:今泉力哉
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
主題歌:Homecomings
出演:岸井ゆきの(テルコ)、成田凌(マモル)、深川麻衣(葉子)、若葉竜也(ナカハラ)、江口のりこ(すみれ)

テルコは28歳のOL。編集者のマモルに出会って一目ぼれしてしまった。以来、マモルの電話を待ち続け、呼ばれたら何があっても最優先で飛んでいく。職場での評価はガタ落ち。そんなに大好きなのに、マモルの一番はテルコではなかった。親友の葉子はテルコの一途さに呆れている。葉子にはテルコと同じように自分を思い続けるナカハラがいたが、便利に使いまわすだけだった。

東京国際映画祭のコンペ作品で、昨年のうちに観ていました。はたから見ると相当イタイし、男にしてみれば「便利だけれど重い」テルコですが、誰かを好きになるってそんなものでしょう。テルコは尽くすのが嬉しくて幸せそうですが、たとえベッドインしようが、マモルにはテルコが思うほどの意味はありません。そして、マモルはテルコと真逆のすみれに恋してしまいます。そうそう簡単に両想いには進まないものですよね。
恋する人たちはみな切ない思いを抱えて右往左往。奔放な葉子にもそれなりの理由があり・・・同世代の男女にはあるある感満載のラブストーリー。俳優さんたちが憎らしくならないところがいいです。マモルは原作ではもっとダメ男なんですが、成田凌くんのイケメン感漏れちゃうのが難かも。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/123分
配給:エレファントハウス
(C)2019映画「愛がなんだ」製作委員会
http://aigananda.com/
★2019年4月19日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:33| Comment(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リアム16歳、はじめての学校(原題:Adventures in Public School) 

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監督・脚本:カイル・ライドアウト
撮影:スターリング・バンクロフト
音楽:マシュー・ロジャーズ:
出演:ジュディ・グリア、ダニエル・ドエニー、シオバーン・ウィリアムズ、アンドリュー・マックニー

リアム(ダニエル・ドエニー)は小さい頃から学校には行かず、シングルマザーのクレア(ジュディ・グリア)から英才教育を受けている。有名大学に入ってホーキング博士のような天文学者になるのが夢。一緒に遊ぶ友達はおらず、勉強が終わると自宅の壁を相手に一人でサッカーをしているが、友達がいないことに寂しさを感じるようになっていた。
ある日、高卒認定試験を受けるためにはじめて足を踏み入れた公立高校で、リアムは人生ではじめて恋に落ちる。一目惚れした義足の美少女アナスタシア(シオバーン・ウィリアムズ)に近づくためわざと試験に落ち、リアムは高校に通学することを決意した。

学校に行かなくても知識を学ぶことはできる。クレアのように親が全部教えなくても、基礎的なことさえ学んでいれば、独学でもできるだろう。専門の先生をつければ、より効果的だ。しかし、人間関係は学校のような集団の場でなければ学べない。同級生との横の繋がり。上級生や下級生との縦の繋がり。どちらも経験することで少しずつ学んでいく。そして、その先にあるのが恋愛か。リアムは人間関係を学ばぬうちに、一気に恋愛に入ってしまった。だからこそ、とんちんかんになってしまうリアムの行動が微笑ましい。
また、子どもの将来を心配すればするほど、管理したくなるもの。私事で恐縮だが、子どもが生まれたときに食べるものに気を使い、安全な食材にこだわり、インスタント食品はおろか冷凍食品さえ一切与えなかった。ところが幼稚園に入って、友だちの家に遊びに行った際、ペヤングソース焼きそばをいただき、子どもがはまってしまったのだ。それまでの6年間を全否定されたようでショックだったことをふと、思い出した。クレアの子離れの苦労もけっして他人ごとではない。(堀)


2017年/カナダ/英語/カラー/ビスタサイズ/86分
配給:エスパース・サロウ
©2017 SCHOOLED FILMS INC., ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://liam-hajimete.espace-sarou.com/
★2019年4月27日(土)から新宿シネマカリテほか全国で順次公開
posted by ほりきみき at 00:08| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月17日

ある少年の告白(原題:BOY ERASED) 

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監督・脚本:ジョエル・エドガートン
原作:ガラルド・コンリー
音楽:ダニー・ベンジー、サウンダー・ジュリアンズ
撮影:エドゥアルド・グラウ
出演:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エドガートン、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン

大学生になったジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は思いがけない出来事をきっかけに、自分は男性が好きであることに気づく。意を決して牧師の父(ラッセル・クロウ)と母(ニコール・キッドマン)にその事実を告げるが、父と母は息子の言葉を受け止めきれない。
父は仲間の助言を得て、息子に同性愛を矯正する施設に入ることを勧めた。母が運転する車で、ジャレッドは施設へと向かう。そこで行われていたのは、自らを偽り、別人のように生きることを強いる〈口外禁止〉だというプログラムだった。施設に疑問を抱いたジャレッドは、遂にある行動を起こす。

子どもから同性愛を告白されたとき、にっこり笑って「あら、そうだったのね。で、素敵なお相手はいるの?」と反応できる親は何人いるだろうか。いくつものLGBTの映画作品を見て、同性愛は決して異端なことではないとわかっていても、私はきっと返事に詰まってしまうだろう。ましてや、それがたった1人の子どもならなおのこと。
だから、ラッセル・クロウやニコール・キッドマン演じる両親の戸惑いはすんなり共感できた。声を荒げて否定するのではなく、広くアドバイスを求めた上で対処方法を模索する。父親が牧師を務める理知的な家庭らしい。アメリカの良心を象徴するようなラッセル・クロウにはぴったりの役どころである。ただ、そんな夫に黙って従う貞淑な妻はニコール・キッドマンには似合わない。と、思っていたところ、後半からじわりじわりと彼女らしさを醸し出し、一気にひっくり返す。納得の配役だった。そして、エンドロールに映し出されたモデルになった親子の写真を見て驚いた。ラッセル・クロウとニコール・キッドマンが彼らにそっくりなのである。本作は原作者ガラルド・コンリーの回想録だが、幸せそうな現在の家族写真にほっとした。(堀)


主演のルーカス・ヘッジズ(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリービルボード』など)は、約1ヶ月後に公開される『ベン・イズ・バック』でもジュリア・ロバーツの息子役に扮している。本作のニコール・キッドマンに続き、大物女優を母親に迎える心境は如何なるものかと映画内容から意識が離れてしまうほど、ヘッジズの活躍ぶりは目覚しい。本作でも福音派の牧師を父に持ちながらゲイとしての性自認をした葛藤、惑い、悲哀、抵抗、屈折、悲観、信仰、従順、隷属、虚偽、欺き、思慕、恋情、否定、怒り、解放といった内省から激情に至るまで、様々な感情を表現してみせる。それも”汗をかいた熱演”風ではなく、いとも自然に、顔筋さえ動かすことなく、瞳の芝居だけで内心を顕在化する技量は今のハリウッド若手俳優の中では郡を抜くのではないか。両親役の大スター、ラッセル・クロウとニコール・キッドマンも霞んでしまうほどの存在感を示す。
福音派は米国に於いて保守派の白人に多く信者を持つ。極端なキリスト教原理主義ともいうべき教義は、禁酒時代を扇動した宗派とも言われる。所謂、人間の自由な欲望を禁じ諌める傾向を有すのだ。
本作では自由な性的志向を矯正しようとする施設を福音派が運営する様がリアルに描かれる。原作になったノンフィクションが出版されて以降も、未だ施設が存在する事実に驚く。施設内での人格否定・攻撃するプログラムは凄まじい。参加者は「加担」するように仕向けられるのだから、深刻なトラウマを抱えるのは必然だ。この治療法には何ら科学的根拠がなく、自殺率の高さが指摘されたにも関わらず、今までに約17万人が体験したといわれる。虐待を「神の名の下に」と全て神に帰結してしまう偽善性。本作に見え隠れする米国の闇は深い。
重い主題を扱っているようだが、本作に出演もしている名優ジョエル・エドガートンの監督としての差配、演出力。多彩な俳優陣の個性溢れるアンサンブル演技に見入ったり、楽しめるカタルシスは用意されている。力作をお見逃しなく!(幸)


2018 年/アメリカ/115 分/
配給:ビターズ・エンド/パルコ
(C) 2018 UNERASED FILM, INC.
公式サイト:http://www.boy-erased.jp/
★2019年4月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
posted by ほりきみき at 23:53| Comment(1) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

柄本家のゴドー

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撮影・演出:山崎裕  
構成・編集: 五十嵐久美子
選曲:増子彰
出演:柄本明、柄本佑、柄本時生、劇団東京乾電池のみなさん

柄本 佑・時生兄弟による演劇ユニット“ET×2”が2014年、サミュエル・ベケットによる不条理演劇の代表作『ゴドーを待ちながら』の公演に挑んだ。そして、2017年、父親の柄本明を演出に迎えて、再びゴドーに挑戦する。その稽古場にカメラが入り、演出家と俳優の関係を超え、父から子への芸の伝承の厳しさと温かさにあふれる時間を記録した。

柄本佑、時生兄弟が「ゴドーを待ちながら」の再演(2017)に父の演出で臨む様子を映す。父は佑を厳しく指導。たったひとことのセリフも父が話すと、とたんに生きてくる。老浮浪者の歩き方も佑が歩くとぎこちなさが残るが、父は浮浪者にしか見えない!キャリアの違いは明らか。
しかし、ここでの苦労が佑の2018年の活躍(※1)の素地になったに違いない。次は時生か。舞台を見てみたくなった。
※1 2018年に公開した主演映画3作品で第92回キネマ旬報ベスト・テン 主演男優賞、また『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)で第73回毎日映画コンクール 男優主演賞を受賞。(堀)


戯曲「ゴドーを待ちながら」 作/サミュエル・ベケット
アイルランド出身の劇作家サミュエル・ベケットによる戯曲。 野原に立つ一本の木のそばで、エストラゴンとウラジミールという2人の老浮浪者が、やって来る筈のゴドーという人物をひたすら待ち続けながら、とりとめのない会話を繰り替えしている。退屈だと言われたり、難解だと言われたりしながら、傑作として賞賛もされ、不条理演劇の代表作として演劇史にその名を残し、多くの劇作家たちに強い影響を与えた。1952年に出版され、その翌年パリで初演。(『柄本家のゴドー』公式サイトより)

2018年/64分/日本/ステレオ/HD作品/カラー
配給:ドキュメンタリージャパン
©︎Copyright 104 coLtd All Rights Reserved.
公式サイト:http://emotoke-no-godot.com/
★2019年4月20日(土)ロードショー
posted by ほりきみき at 14:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月15日

松竹ブロードウェイシネマ『シー・ラヴズ・ミー』 (原題:She Loves Me) 

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監督:デヴィッド・ホーン
脚本:ジョー・マスタロフ
作曲:ジェリー・ボック
作詞:シェルドン・ハーニック
音楽監督:ポール・ジェミニャーニ
振付:ウォーレン・カーライル
演出:スコット・エリス
出演:ザカリー・リーヴァイ、ローラ・ベナンティ、ジェーン・クラコウスキー、ギャヴィン・クリール

アマリア(ローラ・ベナンティ)とジョージ(ザカリー・リーヴァイ)は同じ香水店で働くが、ことあるごとに衝突を繰り返す犬猿の仲。お互いに折れる様子がない。ふたりとも匿名の文通相手に好意を抱いている。ところが、その匿名の相手はお互い同士だった。ついに恋しい文通相手の正体を知ったふたりは、めでたく恋を成就させることができるのだろうか。

「松竹ブロードウェイシネマ」は、本場ブロードウェイの舞台を手頃な価格でゆったりと映画館で楽しむプロジェクト。第一弾として上映される本作はトム・ハンクス&メグ・ライアン主演の大ヒット映画「ユー・ガット・メール」の原点で、第70回トニー賞(ミュージカル部門ミュージカル・リバイバル作品)でミュージカル装置デザイン賞(デヴィッド・ロックウェル)を受賞したミュージカルである。
上演開始前からカメラは回り始め、客席を映してから、オーケストラ・ピットを見せる。まるでチケットに記された席を探して座り、ほっとしたところで周りを見渡したような気持ちになる。臨場感たっぷり。
想い合っている男女が互いの気持ちを知らずに喧嘩をしてしまう。そこに社長やほかの店員たちの思惑が絡んでくるから、観客までどきどきハラハラ。引きとアップを巧みに使い分けたカメラワークとわかりやすい日本語字幕に、いつの間にか引き込まれていく。ミュージカルってどんな感じなの?と思っている人には入門編としてお勧めしたい。(堀)


2016年/アメリカ/16:9/133分/5.1ch
配給:松竹
©BroadwayHD/松竹 
公式サイト:https://www.facebook.com/ShochikuBroadwayCinema
★2019年4月19日(金)東劇より限定3週間特別公開、5月24日(金)から大阪なんばパークスシネマ&名古屋ミッドランドスクエア シネマにて限定公開
posted by ほりきみき at 02:05| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~ 

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監督:橋本昌和
原作:臼井儀人(らくだ社)/「月刊まんがタウン」(双葉社)連載中/テレビ朝日系列で放送中
脚本:うえのきみこ 水野宗徳
主題歌:あいみょん「ハルノヒ」(unBORDE/ワーナーミュージック・ジャパン)
声の出演:
しんのすけ:小林由美子
みさえ:ならはしみき
ひろし:森川智之
ひまわり:こおろぎさとみ
声のゲスト出演:木南晴夏、小島よしお、ぺこ・りゅうちぇる

ある日、みさえが家族で参加 OK の激安新婚旅行ツアーを見つけてきた。実はひろしとみさえは新婚旅行に行っていなかったのだ。野原一家はいまさら初めての新婚旅行でオーストラリアの秘境“グレートババァブリーフ島”へ! 初めは旅行を満喫していたが、気分がハイになっていることもあり、ひろしとみさえの気持ちがすれ違い始める。
そんなとき、突然ひろしが消えた。その島の奥地に住む仮面族には50年に一度の金環日食の日に、お姫様へ花婿を差し出すことで、ご褒美としてお宝が得られるという伝説があり、その花婿にひろしが選ばれてしまったのだ。
仮面族を追うしんのすけたち、そこに世界中のトレジャーハンターが宝を狙って入り込み、超熾烈な三つ巴のひろし争奪戦がぼっ発する。果たして、しんのすけたちはひろしを奪還し、無事に春日部に帰ることができるのか。

冒頭でねねちゃんがつぶやいた「新婚旅行は愛が試される」という言葉通り、旅先で気持ちがすれ違うひろしとみさえ。経験者にはあるあるの話ばかり。しかし2人の愛はそんなにやわじゃない。特に今回はみさえの踏ん張りが見どころ。同伴するトレジャーハンターがみさえの不安をえぐってくるが、それを払拭。子持ちのおばさんナメんじゃないわよ〜とひろしを助けるためにサバイバルを豪快に突き進む。「人生の宝物は時間をかけて見つけるもの」。ひろしの言葉が心に染みるラストに今作が大ヒットする予感がしてならない。(堀)

2019年/日本/100分
配給:東宝
(C) 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019
公式サイト:https://www.shinchan-movie.com/
★2019年4月19日(金)全国東宝系にてロードショー
posted by ほりきみき at 01:29| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月14日

多十郎殉愛記

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監督・脚本:中島貞夫
脚本:谷慶子
監督補佐:熊切和嘉
出演:高良健吾(清川多十郎)、多部未華子(おとよ)、木村了(清川数馬)、寺島進(溝口蔵人)

幕末の京都。清川多十郎は長州藩の名うての剣士であったが脱藩し、貧乏長屋で無為の暮らしをしている。高い志はとうに捨て、居酒屋を切り盛りするおとよの世話になっているばかり。そこへ多十郎の腕を見込んで接触してくるものがいた。適当にあしらっているうちに故郷から弟数馬が訪ねてくる。純真な数馬は多十郎のていたらくを責め、勤皇を貫こうとはやる。浪人の取り締まりを強化していた京都見廻組が急襲し、多十郎は弟を逃がすためについに剣を抜く。

ちゃんばらの名作「木枯し紋次郎」の中島貞夫監督が、84歳にして久々にメガホンをとった本格時代劇。直弟子の熊切和嘉監督が補佐につき、「京都撮影所の伝統であるちゃんばらを、次の世代に伝えたい」という中島監督の熱い思いを支えました。目力のある人という監督の希望にはまったのは高良健吾さん。長州でなく九州男児ですがきりりとした顔立ちが「侍」です。自堕落な姿がまあ色っぽくて、ファンは悶絶ですよ。
『HINOKIO』(2004)のジュンちゃんの面影を今も残している多部未華子さんが、いつのまにかこんな女将役も似合うようになっていました。時代劇には珍しい前髪はなんだか幼く見えるんですが、京都にだけあった髪型だそうです。後半30分も続く立ち回りは、京都撮影所のスタッフ総力あげての結果でしょうか。
撮影に入る前からずっと熱心に稽古していたという、高良さんの渾身の殺陣をご覧下さい。また時代劇に出てほしいなぁ。(白)


2018年/日本/カラー/93分
配給:東映、よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(c)『多十郎殉愛記』製作委員会
http://tajurou.official-movie.com/
★2019年4月12日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:54| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ビューティフル・ボーイ(原題:Beautiful Boy)

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監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
原作:デヴィッド・シェフ、ニック・シェフ
脚本:ルーク・デイヴィス
製作:ブラッド・ピット
撮影:ルーベン・インペンス
美術:イーサン・トーマン
音楽:ゲイブ・ヒルファー
出演:スティーヴ・カレル(デヴィッド・シェフ)、ティモシー・シャラメ(ニック・シェフ)、モーラ・ティアニー(カレン・バーバー)、エイミー・ライアン(ヴィッキー・シェフ)、ケイトリン・ディヴァー(ローレン)

ニックは成績優秀でスポーツ万能な学生。父親デヴィッドの再婚相手ヴィッキーとも仲良く、小さな弟妹にも優しい兄だった。そんな彼がふとしたことでドラッグに溺れ、快楽を求めてエスカレートしていく。家族が気づいたときは抜け出せなくなっていた。デヴィッドは自慢の息子の変貌に愕然とするが、全てを包みこんで更生を助ける。

新聞の全面広告にティモシー・シャラメのアップが掲載されました。どこから見ても美青年の彼が、細身の身体をさらに減量してドラッグ中毒のニックを演じます。家族に愛され、容姿に恵まれ、希望大学全てに合格し、恋人がいても薬物中毒に陥ってしまいます。「病気じゃない。自分が選んだ結果だ」と父に訴えるニックが痛ましいです。
アメリカでは年間7万人もが薬物の過剰摂取で死亡しているとか。有名人、歌手や俳優が亡くなればニュースになります。多いですよね。その背後にそんなにも多くの人が亡くなっている世の中ってなんなんでしょう。
この原作は中毒を克服したニックと、その父親がそれぞれに書いた手記をもとにしています。今や人気脚本家となったニックもエンドロールに父親と一緒に登場。何度堕ちても見放さなかった家族の愛情が勝った!と祝福したいです。しかし、そういう絆や助力に恵まれずにいる人が断然多いはずです。そして怖いのが使用は中学生まで低年齢化しているということ。映画の中で父親がジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」を子守唄に、息子を寝かしつける場面があたたかくてじーんとしました。(白)


2018年/アメリカ/カラー/ビスタ/120分/R-15
配給:ファントム・フィルム
(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.
http://beautifulboy-movie.jp/
★2019年4月12日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:19| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月13日

ハロウィン 原題:Halloween

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監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 
脚本:ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン 
製作:ジェイソン・ブラム 
音楽:ジョン・カーペンター、コーディ・カーペンター
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、ニック・キャッスルほか

ジャーナリストのデイナとアーロンは、40年前のハロウィンに起きた凄惨な殺害事件の真相を追っていた。殺人鬼の名前はマイケル・マイヤーズ。彼は40年間、一言も話すことなく動機や感情は一切不明。あまりの恐怖に人々は彼を“ブギーマン”と名付けた。事件の被害者で唯一の生き残りローリー・ストロードにインタビューするも収穫はなかった。しかし、ローリーは再びマイケルが目の前に現れることを恐れ、いつ起きるか分からない非常事態に一人備えていたのだ。その予感は最悪の形で現実となる。ハロウィン前夜、精神病棟から患者を輸送する車が横転し、マイケルが脱走してしまう。娘のカレンはローリーの言うことを信じず、孫娘アリソンもパーティに出かけてしまっている。ローリーは再び街に解き放たれた“ブギーマン”と対峙することを決意。恐怖に満ちたハロウィンの夜が始まる―。

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© 2018 UNIVERSAL STUDIOS
ホラーを苦手とする女子は、シネマジャーナル読者にも多いはず…。でも本作なら受け入れられる要素は十分ではなかろうか。なぜなら本作のテーマは「フェミニズムと母性愛」だからだ。
40年前にはハイスクールガールだったヒロインのローリーことジェイミー・リー・カーティスは、今や娘と孫もいる貫禄を備えた「おばあちゃん」! だが、力強く鋭い眼差し、他者を寄せ付けない凛とした佇まいは、本作の空気感を支配している。
映画の決定権がヒロインに委ねられた、という意味では『エイリアン』におけるリプリー、『ターミネーター』のサラ・コナーと同様の存在なのだ。
ローリーは狂気にも似た執念を以て、自らの棲家を堅牢な“要塞”に造形した。全ては因縁のブギーマンと対峙するためだ。孫には暖かな居場所に見えた“おばあちゃんち”が、対ブギーマン仕様と化しているのも可笑しい。
親子三代の女たちが優れたチーム力を発揮するのと対象的に、ブギーマンは40年前と同じく黙して語らない。不気味さは健在だ。しかも数場面ではあるが、あのニック・キャッスルが40年ぶりにブギーマンを演じているのもファンには嬉しい。

外連味ある演出、音楽、街の風景…、全てがジョン・カーペンター(今回は製作総指揮と音楽)監督版のオリジナルを踏襲し、リスペクトしたスタッフの力が結集した映画であると感じられた。(幸)


2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/106分/R-15
配給:パルコ 宣伝:スキップ
公式サイト:http://halloween-movie.jp/
★2019年4月12日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
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2019年04月08日

希望の灯り(原題:In den Gängen/英題:In the Aisles)

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監督・脚本:トーマス・ステューバー
原作・脚本・出演:クレメンス・マイヤー(「通路にて」新潮クレスト・ブックス『夜と灯りと』所収<品切>)
撮影:ペーター・マティアスコ
音楽:ミレナ・フェスマン
出演:フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルト、ミヒャエル・シュペヒト、ラモナ・クンツェ=リブノウ

内気で引きこもりがちなクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は27歳。ある騒動の後に建設現場での仕事をクビになり、在庫管理担当としてスーパーマーケットで働き始め、レジでの雑踏やフォークリフトなど、自分にとって全く未知の世界に放り込まれる。そこで飲料セクションのブルーノ(ペーター・クルト)、ルディ(アンドレアス・レオポルト)、職場で唯一ハンドパレットトラックの操縦を許可されているクラウス(ミヒャエル・シュペヒト)、ユルゲンと出会う。ブルーノは、クリスティアンに仕事のいろはやフォークリフトの操縦の仕方を教え、クリスティアンにとって父親のような存在になる。通路で、クリスティアンはスイーツセクションの年上の同僚のマリオン(ザンドラ・ヒュラー)と出会い、彼女の謎めいた魅力に一瞬で惹かれる。コーヒーマシーンのある休憩所が彼らのおきまりの場所となり、二人は親密になっていく。


郊外の大型スーパー。2階分くらいはあるような高い棚に商品が積まれている。担当するブロックの品物が手に届くところにあるよう、商品を管理するのが主な仕事。ずっとそこにいると、大きな空間に押し潰されそうだ。棚の向こうに仕事仲間の姿が見えるとホッとして、表情が和らぐ。人間関係も同じ。適度な距離感を保ち、深入りしない。東西の統合を経た人々だからこその配慮か。
タトゥーを入れ、ちょっとワケありそうな主人公クリスティアンにもとやかく言わない。ただ、指導係のブルーノはクリスティアンに仕事を教えることで親密さを増す。またクリスティアンは他セクションの同僚に恋心を抱くようになり、踏み込んだ行動を取ってしまう。静かな均衡に変化が見える。
しばらくして起こった悲しい出来事。距離感のある人間関係が原因かなのか。親密さを持ったことで孤独が浮かび上がってしまったからか。監督ははっきりとは描かず、見る者に委ねる。しかし、すべてを受け止めて、前に進もうとするクリスティアンに希望を感じた。(堀)


2018年/ドイツ/ドイツ語/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/125分
(C) 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH
公式サイト:http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/
★2019年4月5日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

『芳華-Youth-』 原題 芳華

2019年4月12日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
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 © 2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd All rights reserved

監督・製作:馮小剛(フォン・シャオガン)
脚本・原作:厳歌苓(ゲリン・ヤン)
製作:王中軍(ワン・チョンジュン)&王中磊(ワン・チョンレイ)
音楽:音楽:趙麟(チャオ・リン)
撮影:羅攀(パン・ルオ)
編集:張琪(チャン・チー)
出演
黄軒(ホアン・シュエン):リウ・フォン
苗苗(ミャオ・ミャオ):ホー・シャオピン
鐘楚曦(チョン・チューシー):シャオ・スイツ
楊采鈺(ヤン・ツァイユー):リン・ディンディン
王天辰(ワン・ティエンチェン):チェン・ツァン
蘇岩(ヤン・スー):文工団分隊長
趙立新(チャオ・リーシン):文工団の政治委員

『狙った恋の落とし方』『戦場のレクイエム』『女帝エンペラー』『唐山大地震』『わたしは潘金蓮じゃない』など、ヒット作を監督し、映画出演作も多い馮小剛(フォン・シャオガン)監督の最新作。軍の歌劇団である文芸工作団(=文工団)に所属した監督自らの若き日の経験を、同じく若き日に文工団に所属したゲリン・ヤンの原作(『シュウシュウの季節』『妻への家路』)をもとに描いた作品。

1970年代~80年代の中国。軍所属で歌や踊りを披露し、兵士たちを時に慰め、鼓舞する役割をになう歌劇団・文工団に所属する若者たちの激動の時代に翻弄されながらもたくましく生きる青春の日々をつづった物語。
1976年、17歳のシャオピン(ミャオ・ミャオ)はダンスの才能を認められ、夢と希望に溢れ入団するが周囲となじめないでいた。そんな彼女にとって唯一の支えは、模範兵のリウ・フォン(ホアン・シュエン)だった。しかし、ある事件をきっかけにリウ・フォンは転属させられてしまい離れ離れになってしまった。
文革、毛沢東の死、中越戦争など、国を揺るがす事件が立て続けに起こり、時代の変化の中で文工団も解散に。激動の70~80 年代に、その時代の波に翻弄されながらも懸命に生きた若者たちを描く。そして何十年もたって、シャオピンとリウ・フォンは再びめぐり合う。
シャオピンを演じるのは苗苗(ミャオ・ミャオ)。彼女が想いを寄せるリウ・フォンを演じるのは『ブラインド・マッサージ』『空海-KU-KAI -美しき王妃の謎』の黄軒(ホアン・シュエン)。

今までいくつもの文工団を描いた中国映画を観てきたが、ここまで文工団の内部や生活を描いた作品はなかったような気がする。それにしてもダンス、歌、演奏、演劇など芸能に関係することに、こんなにたくさんの軍に所属する文工団団員がいるというのが驚きだった。それに入団したとたんに軍服(しかも自分の軍服ではなく、同室の人から黙って借りてしまった)を着た写真を撮って、その写真を親に送るという行為が最初に出てきて軍に所属するということがステイタスという、そういう文化もあるのだと知った。
主人公のシャオピンは、結局、文工団の中でダンスで生きていくことはできず、看護部門に移動し軍には所属を続けた。そういう中で中越戦争のシーンも出てきたのだろう。軍の娯楽部門に所属していたメンバーもそういう場から逃れられなかった。文工団に所属していたメンバーも、解散後、成功して金持ちになった人や、生活が苦しい人、時間の流れの中での変化が出てくるが、リウ・フォンも中越戦争で片手を失ってしまい傷害者として生き、生活が苦しい様子が描かれる。こういう中で二人は再び出会い、その後は一緒に生活してったのだろう。おだやかな日々を送れたのだろうか(暁)。


★第12回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞 受賞
北京語/2017年/ドルビー/シネスコ/135分/字幕:樋口裕子
2017年 製作国中国 配給アットエンタテインメント
posted by akemi at 20:32| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アレッポ 最後の男たち   原題:LAST MEN IN ALEPPO

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監督: フェラス・ファヤード 共同監督:スティン・ヨハネセン

2016年、シリア北部、歴史ある町アレッポ。
「アサドのせいで空ばかり見上げている」と嘆く自衛団「ホワイト・ヘルメット」の男たち。爆撃機が行く方向を見定め、急行する。一人でも多くの人を救おうと。

2011年の民衆による平和的デモを、シリア政府は軍事的手段で応酬。もう5年も続き、各地で町は瓦礫と化し、アレッポも例外でない。
爆撃を免れた公園ですべり台やブランコを楽しむ大勢の親子たち。
退避命令が出る。ドローンで偵察し、一般市民も無差別に攻撃してくるのだ。

ここで人が暮らすのは無理、トルコかどこかに逃げようと思うが、逃げ場のない人たちを救おうと、アレッポで自衛団の一員として日々空を見上げる男たち。彼ら自身、死と隣り合わせの毎日だ。
親にはトルコで仕事をしていると嘘をついている者もいる。
「権力の横暴を同胞のはずのアラブ諸国は黙殺している」と嘆く男性。
絶望的な姿を映画は見せつける・・・

私がシリアを訪れたのは、昭和63年9月。旅行中に昭和天皇が病に倒れられたので、元号で時期をはっきりと記憶している旅だ。アレッポ城の上から眺めた町は、旧市街にもびっしりと衛星テレビのパラボラアンテナが林立していて、実はちょっと興ざめだった。(思えば、それだけ豊かということなのだけど!)
でも、スーク(市場)は中世さながらの雰囲気で、わくわくする空間だった。ツアーで45分しか時間を取ってくれなくて、この市場のためだけにも、ぜひまたゆっくり訪れたいと思った町。その市場も、木っ端微塵に破壊されてしまった。

各国が介入しても解決せず、救いようのない内戦と思っていたら、実は大国の思惑が背景にあるらしい。
『アレッポ最後の男たち』を試写で観たと、友人に伝えたら、こんな情報をいただいた。

****
アレッポのスークのことを書かれた黒田美代子先生の著書「商人たちの共和国」…ご本人が亡くなられた後絶版されていたのを、新装復刊された中にご主人の黒田壽郎先生が書かれております。
“支援国イスラエル擁護のためのアラブ勢力の徹底的破壊こそが米国の戦略の根幹であり、イラクの撹乱のすぐ後で新たにターゲットとされたのが、まさにシリアに他ならない。現在のシリアにおける騒乱は内戦ではなく外圧によって惹起されたものなのである…”と。まさしくおっしゃる通りです。黒田美代子先生がご存命でしたら、今のアレッポをシリアを見たら、絶句、言葉を失ってしまうでしょうね。
****

映画の中で、足をひきずった猫ちゃんが出てきたことも、この友人(猫好き!)に伝えたところ、「アレッポで沢山のお猫さんの世話をされている方のことがテレビで流れたらことがあります。沢山の人がアレッポを離れてトルコの方に逃げて行った。が、飼っていたお猫さん残して…。みんなが帰ってくるまで、お猫さんの面倒を何とか見続けたい…と」

さて、私のシリアの旅に戻る。
旅の最後にツアーバスの運転手さんのご自宅を皆で訪ねた。一行20名ほどが全員集える大広間のある家だった。5~6人のお子さんのいる大家族。シリアでは、平均的な家族構成のようだった。急な客を温かくもてなしてくれたご一家。今はどうしていることか。
安住の地を求めて国を出た人も、シリアを離れられない人々も、どちらも故国を思う気持ちは同じだろう。シリアの人々が、心穏やかに暮らせる日の来ることを祈るばかりだ。(咲)

【トークイベント】

4月13日(土)11:00~上映後 太田 昌興さん / (株)アレッポの石鹸 共同代表取締役
4月13日(土)15:45~上映後 春日 芳晃さん / 朝日新聞国際報道部次長
4月14日(日)13:20~上映後 安田 純平さん / ジャーナリスト

第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品
2017年サンダンス映画祭ワールド・シネマ ドキュメンタリー・
コンペティション部門グランプリ他 世界中で23の映画賞受賞した作品

2017年/デンマーク・シリア/104分/ドキュメンタリー
制作:アレッポ・メディア・センター、ラーム・フィルム
制作協力:DR TV、SWR/ARTE、SVT、RTS、NRK、YLE
配給:ユナイテッドピープル  
公式サイト:http://unitedpeople.jp/aleppo/
★2019年4月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 14:15| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月06日

12か月の未来図   原題:Les grands esprits  英題:The Teacher

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監督・脚本:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
出演:ドゥニ・ポダリデス、レア・ドリュッケール

パリ。フランス最難関の名門アンリ4世高校の国語教師フランソワ・フーコー(ドゥニ・ポダリデス)。国民的作家である父の新刊サイン会の場で、美人がいるのを意識しながら、教育改革論を熱く語る。パリ郊外の問題校の生徒たちの学力を上げるには、ベテラン教師を派遣して新米教師を支援するのが解決策だと。彼が気に留めていた美人は、実は国民教育省で教育困難校を担当している女性だった。フランソワは、国民教育省からパリ郊外のバルバラ中学校で1年間教鞭をとってほしいと依頼される。断るわけにもいかず、しぶしぶ荒れ果てた場所にある学校に赴く。そこでは、貧困層や移民の子どもたちが学んでいて、フランス語がおぼつかない生徒もいた・・・

身から出た錆で、自身が教育困難校に派遣される羽目になったエリート教師フランソワ。勉強する気のない生徒たちに、問題児は退学させればいいという教師たち。途方に暮れる中、フランソワは生徒たちに「レ・ミゼラブル」を全編読ませたいと思い立ちます。もちろん、すんなりと子どもたちが学ぶ気になるはずもなく、問題山積み。それでも、徐々に勉強に興味を持ち始めます。
思春期の子どもたちにとって、資質の良い教師がいかに必要かを感じさせてくれます。
私自身、小学校から大学までの間に出会えた数名の先生が、今の私を作ってくれたと確信しています。
家庭環境や子ども自身に問題があっても、教師次第で解決できることを、本作は教えてくれます。そして、良き教師を育てるのは?? (咲)


2017年/フランス/107分/シネマスコープ/カラー
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://12months-miraizu.com/
★2019年4月6日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー!




posted by sakiko at 11:07| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ザ・プレイス 運命の交差点(原題:The Place)

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監督・原案・脚本:パオロ・ジェノベーゼ
出演:バレリオ・マスタンドレア(謎の男)
サブリナ・フェリッリ(アンジェラ)
ジュリア・ラッツァリーニ(マルチェラ婦人)
アルバ・ロルバケル修道女(キアラ)ほか

ローマにある「The Place」というカフェの隅に一日中座り続けている男がいた。その男のもとに様々な人間がやってくる。どんな希望も叶うと伝え聞いてくるのだったが、男は途方もない課題を出す。やり遂げれば必ず望みは叶う。実行するしないは自由だと。逡巡しながら望みと課題を天秤にかける老若男女。カフェで一人働くアンジェラはそんな男のようすをじっと見ていた。

アメリカのテレビドラマ「The Booth at the End」(2011)のリメイク作品。邦題は「The Booth 欲望を喰う男」だったそうです。予告編では「アルツハイマーの夫を救いたい老婦人」に、「爆弾をしかけろ」と言う場面が出ています。多くの人を犠牲にして夫を助ける?夫を愛する老婦人は困惑します。
9人の男女の望みにつっこみを入れつつ、謎の男の出す理不尽といえる課題を聞くたび、自分ならどうする?と考えます。男は天使か、それとも悪魔なのでしょうか?びっしりと文字で埋め尽くされているあのぶ厚いノートには何が書かれているのでしょう?イタリア語のわかるかた、読めたら教えてください~。
ポイントは、男が命令していないこと。交換条件を示すだけです。実行すれば自動的に叶うので(しくみは不明ですが)嘘をついても駄目です。配されているキャストの説得力ある演技に引き込まれ、結果が気になって目が離せません。自分さえよければ他人はどうなってもいい、というニュースで溢れている現実のほうが怖いかもしれませんよ。(白)


2017年/イタリア/カラー/シネスコ/101分
配給:ミモザフィルムズ
(C)2017 Medusa Film SpA.
http://theplace-movie.com/
★2019年4月5日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 00:53| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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監督・脚本:高橋朋広
音楽:クボナオキ
出演:桜田通(岡浜慎平)、福田麻由子(加瀬ゆかり)、笠松将(黒須彰太)、西田尚美(岡浜美樹)、ダンカン(タクシー運転手)、佐津川愛美(小峰奈央)、清水尚弥(ダビデ)、キンタカオ(岡浜誠司)

1年前、慎平と親友の黒やんのバンド「LACTIC ACID」は解散した。慎平はそのころからのファンだったゆかりと暮らしている。ゆかりから借金をするたび、慎平の心は重くなる。黒やんに「もう一度音楽がやりたい」と打ち明けるが、その代わり仕事を手伝ってくれと頼まれる。背広を新調し、半信半疑で同行した慎平はとんでもない事件に巻き込まれてしまった。

ボーカルの慎平役は、実際にメジャーデビューを果たしている桜田通。青春音楽もの、と見ていたらあれあれというまに事件が起きる。というより起こしてしまう。
親友との友情を取り戻したいが相手が変わってしまっていたら?
お財布代わりに軽く考えていた彼女が真剣だったら?
現実に目をつぶって夢ばかり見る慎一、甘く見ていた現実から痛い目に遭います。子供のためを考えてのことばでも、なかなか届かないものなのね、と我が身も反省しつつ見ました。要所要所をベテランが押さえています。ダンカンさんとってもいい役どころ。
ぎりぎり踏み外さず一回り二回り大人になるのに安心。いやはや甘いな私も。ま、いいか。
「ラ」は赤ちゃんが生まれるときの産声、オーケストラのチューニング音・・・始まりは「ラ」。もう一度始めたい人はまず「ラ」の音出してみて。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:アークエンタテインメント
(C)2018年 映画「ラ」製作委員会
http://movie-la.com/
https://twitter.com/la_movie_
★2019年4月5日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 00:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画 きかんしゃトーマスGo!Go! 地球まるごとアドベンチャー (原題:Thomas & Friends: Big World! Big Adventures! The Movie)

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監督:デビッド・ストーテン
脚本:アンドリュー・ブレナー
日本語吹き替え:比嘉久美子(トーマス)、田中完(トップハム・ハット卿)、青山吉能(ニア)、ISSA(エース)

同じ繰り返しの毎日に退屈していた機関車トーマス、ある日とびきり元気でかっこいいレーシングカーのエースと出会った。世界一周ラリーに参加するというエースがうらやましくてならない。トップハム・ハット卿に自分もいけるか聞いてみたトーマスは、局長のトップハム・ハット卿の返事を都合よく解釈して、仕事を放り出して船に乗ってしまった。アフリカのケニアに到着したトーマスは、陽気な女の子の機関車ニアと友達になった。世界一周をするというトーマスにニアも一緒に行きたいという。

お子様向けアニメーションと侮ってはいけません。タイトルのとおり地球をまるごと舞台にして、トーマスが大冒険、本当に大切なもの、友情や自分の居場所を見つけていくお話です。
初めてソドー島を飛び出したトーマスは、ブラジル、アメリカ、中国・・・行った先々でそこで働く機関車たちに出会います。それぞれが個性的で、お国柄が出ていました。多様性を認め、相手の気持ちを考えること(そんたくとは違う)、お子様と一緒に行く大人の心にも響くはずです。エースの声をISSAさん(DA PUMP)があてているのも話題になりました。(白)


2018年/イギリス/カラー/シネスコ/86分
配給:東京テアトル
(C)2018 Gullane(Thomas)Limited.
https://movie2019.thomasandfriends.jp/
★2019年4月5日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:50| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Be With You いま、会いにゆきます

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監督・脚本:イ・ジャンフン
原作:市川拓司
出演:ソ・ジソブ(ウジン)、ソン・イェジン(スア)、キム・ジファン(ジホ)、コ・チャンソク(ホング)

ウジンの愛妻スアは病を得て、息子のジホと自分を残し一人旅立ってしまった。雨の日に帰ってくるという不思議は言葉を残して。ジホは毎日雨が降るのを待っている。
ある日ほんとうにスアが戻ってきた。ただし自分の名前も家族のことも何も覚えていなかった。ジホは大喜びで片時も離れない。ウジンはスアにふたりの馴れ初めからひとつずつ説明していく。

オリジナルはもう15年前ですが、泣かせるストーリーはよく覚えています。先がわかっていてもまた泣きました。大きな身体で不器用そうにご飯を作るウジンに、もう一度恋するウジンとスアにきゅんとするはず。ジソブくんがお父さん、哀しいヒロインが似合うソン・イェジンも小学生のお母さん役です。息子ジホのキム・ジファンは新人だそうです。なんと屈託なく自然な演技ができる子なんでしょ!
また原作に魅せられて映画化を実現させたイ・ジャンフン監督もデビュー作。原作の市川拓司さんは自分と、お母さんと奥さんがモデルです、と。

愛する人と限られた時間しか一緒にいられないとき、何ができるでしょう?
別れの辛さだけではない、愛情が溶けこんだ暖かい涙が流れるはずです。

オリジナル『いま、会いにゆきます』は2004年の作品でした。竹内結子さん、中村獅童さんの共演で、これをきっかけにお二人翌年結婚したのでした(3年後離婚してそれぞれ再婚しています)。このリメイクのお二人、プライベートのニュースはないんでしょうか?(白)


2018年/韓国/カラー/シネスコ/131分
配給:クロックワークス
(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
http://klockworx-asia.com/be-with-you/
★2019年4月5日(金)ロードショー

4月7日(日) イ・ジャンフン監督がサプライズ来日決定!
原作者・市川拓司氏と映画公開記念トークショー付き舞台挨拶?!
場所:シネマート新宿
日時:4月7日(日)11:20の回終了後
料金:通常料金(全国共通特別鑑賞券使用可)
※全国共通特別鑑賞券、お持ちのお客様は窓口までお越し下さいませ。
posted by shiraishi at 00:47| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする