2019年03月31日

ホフマニアダ ホフマンの物語 (原題:HOFFMANIADA)

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制作:ソユーズムリトフィルム・アニメーションスタジオ(ロシア)
監督:スタニフラフ・ソコロフ
脚本:ヴィクトル・スラフキン、スタニスラフ・ソコロフ
キャラクター・デザイン:ミハイル・シュミアキン
音楽:シャンドル・カロシュ
監修:木野光司

エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンは作家、作曲家であり芸術家です。自分の人生と作品を振り返り、過ぎ去った日々を思い起こします。そして若かりし頃の姿、すなわちドイツの小さな町で若き裁判官見習いとして働き、質素な家の屋根裏部屋を借りて音楽家を目指していた頃に自分を重ねていきます。日中は官庁で退屈な仕事をこなし、仕事の後は近所の居酒屋に足を向けます。そして夜には芸術的な創作活動に熱中するのです。

たいへんに手間ひまのかかるストップアニメーション作品です。現在の大成した自分、見習いだった若い頃、空想を自由に羽ばたかせる幻想世界、これをいったりきたりしていると承知しておかないと、物語がすこしわかりくいかも。人形も衣装も舞台もものすごく凝っていて、実物をじっくり見たい気になります。美しくて、いくら見ていても飽きることがなさそう。完成まで15年もかかったのです。そんな作品を今見せてもらえる幸せ。(白)

2018年/ロシア/ロシア語・日本語字幕/72分
配給:リスキット
協力:太秦/T&Kテレフィルム/Stylab
(C)Soyuzmultfilm
http://www.hoffmaniada.net/
Twitter:https://twitter.com/hoffmaniada
★2019年4月2日(土)ロードショー

☆映画版『ホフマン物語』も公開中(料金は別ですので、ご注意ください)
監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
出演:ロバート・ランスヴィル(ホフマン)、モイラ・シアラー(ステラ/オリンピア)
1951(日本公開1952)/イギリス/124分
posted by shiraishi at 20:22| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クリス・マルケル特集2019<永遠の記憶> 『シベリアからの手紙』『ある闘いの記述』

4月6日(土)~19日(金)、渋谷・ユーロスペースでクリス・マルケル監督特集が開催されます。

クリス・マルケル Chris Marker
(1921年~2012年)
パリ生まれの映画作家/プロデューサー/写真家など。
第二次世界大戦中は、ナチスに対するレジスタンスに参加。
『夜と霧』(1955年)でアラン・レネの助監督を務める。
記憶と記録、歴史と個人史、戦争、虚構と現実など、永遠に消えることのないテーマで数多くの作品を発表。フィルム、写真、本、ビデオ、ゲームなど、多様なメディアを自在に使った独特の作品は映像詩のようでもある。
数回来日し 日本についての作品もつくっている。
(公式サイトより抜粋)

■上映作品

『北京の日曜日』 1956年/カラー/DCP/20分 
『シベリアからの手紙』 1958年/モノクロ/DCP/61分 
『ある闘いの記述』 1960年/カラー/DCP/60分 
『イヴ・モンタン~ある長距離歌手の孤独』 1974年/DCP/60分 
『サン・ソレイユ』 1982年/カラー/DCP/104分 
『A.K.ドキュメント黒澤明』 1985年/カラー/35㎜/74分
『レベル5』 1996年/カラー/DCP/110分 
『不思議なクミコ』 1996年/47分/35㎜/47分

試写で拝見した2作品について紹介します。

◆『シベリアからの手紙』  
原題:Lettre de Sibérie
1958年/フランス/モノクロ/DCP/61分

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© 1957 Argos Films

レンズが捉える開発途上のシベリアの街や壮大な風景。
凍った大地のイメージのシベリアだが、緑の草原も広がる。白樺が美しい。
「悪魔が作ったタイガ」と呼ばれるシベリアの地は、アメリカとほぼ同じ大きさ。
シベリア鉄道が敷設され、町が建設される。
郊外には集団農場コルホーズ。
家鴨の集団。もともと家禽としてシベリアにはいなかった。
マンモスの時代がアニメーションで描かれる。
トナカイの群れる大地に、開発の車がやってくる。
軍艦が居並ぶ港・・・

シベリアの今と昔が、映像やアニメーションで点描される映像詩。
この地にやってきたよそ者が、見聞したシベリアに住む人々や風物のことを書簡形式で語る。不毛の地に人の息吹が吹き込まれていく姿が展開されて興味深い一作。(咲)


◆『ある闘いの記述』

原題:Description d'un combat
1960年/イスラエル=フランス/カラー/DCP/57分
1961年ベルリン国際映画祭短編部門金熊賞
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© 1961 Van Leer Productions et S.O.F.A.C
© 2014 Argos Films – Cinémathèque de Jérusalem


1948年にユダヤの人々が“約束の地”に建国して、12年目を迎えたイスラエルの様子を捉えた作品。
海沿いの町、ハイファ。旧約聖書にも出てくるカルメル山が背後にそびえる。
エルサレムでは、「ここはアラブ人の街」と嘆くユダヤ人の姿。一方で、荒れ果てたキャラバンサライやモスクも映し出される。追い出されたパレスチナ人のものだろう。
エルサレムには超正統派ユダヤの人たちの住む地区メアシェリームも出来ている。
ヘブライ語が蘇る。一方、エルサレムの町では、アラビア語も聞こえてくるし、イディッシュ語、ドイツ語、フランス語、ロシア語など、各地から移ってきたユダヤの人々の言葉も飛び交っている。
移民してきたユダヤ人が共同生活をおくるキブツ、死海、ネゲブ沙漠、紅海、ナザレ・・・  イスラエルが建国されて変わりつつある各地の姿も映し出される。
映画『サラー・シャバティ氏』(1964年/イスラエル)で観たイスラエルの建国初期の姿を思い起こした。

セファルディム(中欧のユダヤ人)の難民たちが荒れた海をイタリアから船で渡ってきてハイファに上陸するも、すぐにキプロスに移送されてしまう。
「ユダヤ人は他の民族を同じ運命に追いやるのか」と映画の中で語られているが、それを証明するかのように、今はシリアやアフリカなどからの難民が船でヨーロッパを目指し、追い返されている。なんとも複雑な気持ちになる。

1967年の第三次中東戦争勃発後、マルケル自身が本作の上映を禁じた時期もあったという。
イスラエル建国初期の姿を映し出した作品を、今再び観ることのできる貴重な機会に感謝したい。(咲)

【トークショー】
4月6日(土) 時間未定 ゲスト:港千尋さん(写真家/写真評論家)
4月7日(日)  15:00「北京の日曜日」「イヴ・モンタン」上映後 ゲスト:金子遊さん(映像作家)
4月13日(土) 12:30 「A.K.ドキュメント黒澤明」「不思議なクミコ」上映後 ゲスト:古賀太さん(日本大学教授)
4月14日(日) 17:30「サン・ソレイユ」上映後 ゲスト:岡田秀則さん(映画研究者)

企画・事務局:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/ChrisMarker/
★2019年4月6日(土)~4月19日(金)渋谷ユーロスペース
posted by sakiko at 18:05| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バイス  原題:Vice

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監督・脚本:アダム・マッケイ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
出演:クリスチャン・ベール『ダークナイト』、エイミー・アダムス『アメリカン・ハッスル』、スティーヴ・カレル『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』、サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』

1960年代半ば、不真面目な学生だったディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)はイェール大を退学となり、電気工として働き始めるが、酒癖の悪さは治らず、警察の世話になってしまう。恋人のリン(エイミー・アダムス)に激怒され、「二度と失望させない」と誓う。その後、連邦議会のインターンシップに参加し、共和党の下院議員ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働き始めたチェイニーは、権力の中に自分の居場所を見いだす。やがて、頭角を現したチェイニーは史上最年少の34歳でジェラルド・フォード政権の大統領首席補佐官になり、ジョージ・H・W・ブッシュ政権下では国防長官に選ばれた。そして、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任する。

同時多発テロ事件をきっかけにアメリカがイラク侵攻を決めた瞬間をクライマックスに、それを陰で牽引したといわれるディック・チェイニーの政治家人生を描いている。と書くと、真面目で難しい政治映画と思われてしまうかもしれない。しかし、コメディ出身のアダム・マッケイ監督は茶目っ気たっぷりに演出し、政治に疎い者にも分かりやすく、詳しい人にはさらに興味を抱かせる。しかも役者のなりきりぶりが半端ない。チェイニー役のクリスチャン・ベールは体重を約20キロ激増して、見事に20代から70代まで演じ切り、ブッシュ大統領役のサム・ロックウェルの眉を寄せた顔はブッシュ本人と見紛うばかり。本作はアカデミー賞 メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いた。
なお、「記者たち 衝撃と畏怖の真実」ではイラク侵攻の裏側を暴こうとする新聞記者たちの奮闘を描いているので、セットで見ると、どちらの作品もより理解が深まるはずである。
また、本作について、町山智浩氏が公開前の試写会で行われたトークイベントで詳細な解説をした。そのレポートはこちらから。(堀)


アメリカ合衆国 第46代副大統領ディック・チェイニー。
ジョージ・W・ブッシュ政権で、副大統領を務めた男。
本作は、田舎の大学を卒業後、電気工をしていたチェイニーが、上院議員だったドナルド・ラムズフェルドと出会ったことから、妻の後押しもあって政治家をめざし、ついには副大統領となり、ブッシュ大統領を裏で操っていたことを暴いた、まさかの実話。
釣りが好きだというチェイニー。石油会社の役員として、地方都市でのんびりと釣りを楽しみながら暮らしていてくれれば、中東情勢は違っていたかもしれない・・・
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ブッシュといえば、この写真のように靴を履いたままの足を机に乗せている失礼な姿が思い浮かぶ。イラク侵攻当時、恐らくCNNだったと思うのだが、イラク派兵前の兵士が、軍でイラクの人たちの習慣を学んだと得意げに話す中で、「こんな風に、靴を履いた足を机に乗せてはいけないそうです」と語っていたのを思い出す。靴を履いたまま家の中に入ることさえ失礼なのにと呆れたものだ。それほど習慣の違う国に、アメリカは土足で上がりこんで滅茶苦茶にしたのだ。独裁政権のイラクに民主主義を植えつけるなどという大義名分を掲げて!  
9,11の同時多発テロ後のアメリカ政府の対応を見ていて、単純で短絡そうなジョージ・W・ブッシュ大統領をうまく操っているのが、チェイニーはじめネオコン(新保守主義者)の連中だという印象を持っていた。石油の利権のためにイラク侵攻を画策したといわれていたけれど、本作を観て、まさにそうだったのだと唸った。
それにしても、チェイニーはじめ登場人物が皆そっくりで大笑い。もとのお顔はどうだったっけ?とわからない位。政治の裏舞台を暴いているけれど、しっかり楽しめる作品になっているのも凄い。(咲)

『バイス』公開記念 映画評論家・町山智浩氏トークイベント

提供:バップ、ロングライド 
配給:ロングライド
© 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
http://www.longride.jp/vice/
★2019年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー





posted by sakiko at 17:25| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする