2019年03月17日

ブラック・クランズマン(原題:BlacKkKlansman) 

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監督・脚本:スパイク・リー
脚本:チャーリー・ワクテル、デビッド・ラビノウィッツ、ケビン・ウィルモット
撮影:チェイス・アービン
音楽:テレンス・ブランチャード
出演:ジョン・デビッド・ワシントン(ロン・ストールワース)、アダム・ドライヴァー(フリップ・ジマーマン)、ローラ・ハリアー(パトリス・デュマス)、トファー・グレイス(デビッド・デューク)、ヤスペル・ペーコネン(フェリックス)

1970年代半ば、アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署に、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワースは、捜査のために電話で白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)のメンバー募集に応募する。黒人であることを隠して差別発言をまくし立てた彼は、入会のための面接に進み、彼の代わりに白人の同僚刑事フリップ・ジマーマンが面接に向かう。 

昨年のカンヌ国際映画祭で是枝監督の『万引き家族』にパルム・ドールに次ぐグランプリを受賞したスパイク・リー監督作。円熟期にして最高の快作と言えるのではないか·。サスペンスの体裁を取りつつハラハラドキドキさせると共に、笑いとウィットに富んだ会話劇でもあり、試写室は終始笑いとどよめきに包まれていた。 
オスカーを受賞したリーの手による脚色は、ノンフィクション原作から自由な翻案が成されており、娯楽と社会性が絶妙なバランスで活かされている。
ブラックパワーの潮流が高まっていた時代背景なればこそ、『黒いジャガー』『スーパーフライ』といったブラック・シネマへの言及も忘れない。逆に、KKK団の集会では、グリフィスによる『國民の創生』が上映され、「彼女は酷い目に遭ってしまうのよ」などと役柄に同化して涙する幹部夫人の描写には笑ってしまう。しかし、この時に泣いていた白人妻が実は後半に隠れたキーパーソンとなる点にご注目願いたい。
28年前『マルコムX』でデンゼル・ワシントンとタッグを組んだ頃のリー演出は生硬で主義主張の押し付けが観られた。今回、息子のジョン・デヴィッド・ワシントンとは、いい意味で肩の力抜けたコンビになっており、父子二代によるタッグというのも感慨深いものだ。
個人的には、KKKの構成員役であるポール・ウォルター・ハウザーやトファー・グレイス、いい味のおばちゃんアシュリー・アトキンソン、フィンランド人俳優のヤスペル・ペーコネンといった白人俳優の好演が本作を支えていると感じた。(幸)


アダム・ドライヴァーの出演作なので外さず、主演はデンゼル・ワシントンの息子というので注目しました。ロンは軽く見えるけれど頭の回るキャラ、アフロヘアに目がいってしまいますが、父親に顔立ち似ています。父親を引き合いに出さないで、というのはしばらく無理かもしれないけれど、いい俳優さんになりますように。
ほんとにこんな話があったのか!?と驚いてしまうのですが、リー監督がぞんぶんに脚色の腕をふるったようです。そのへんを町山智弘さんが詳しく解説しています。ほりきさんが頑張ったレポ記事はこちら、長いですがぜひご覧下さい。
第91回アカデミー賞で6部門にノミネート、脚色賞を受賞。第71回カンヌ国際映画祭でグランプリ。ということで観てけっして損はありませぬ。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/135分
配給:パルコ
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
http://bkm-movie.jp/
★2019年3月22日(金)TOHOシネマズシャンテほか潜入捜査開始!
posted by shiraishi at 19:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

漂うがごとく(原題:Choi voi 英題:Adrift)

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監督:ブイ・タク・チュエン
脚本:ファン・ダン・ジー
撮影:リー・タイ・ズン
音楽:ホアン・ゴク・ダイ
出演:ドー・ハイ・イエン(ズエン)、リン・ダン・ファム(カム)、ジョニー・グエン(トー)、グエン・ズイ・コア(ハイ)

ハノイに住む通訳のズエンは、2歳年下のタクシー運転手ハイと出会って3ヶ月でスピード結婚をした。披露宴でハンは酔いつぶれ、ズエンは初夜に1人で眠るはめになる。義母は息子をズエンに盗られた気がして、なにかと世話を焼きたがる。それから何日も、ハイは仕事に疲れて帰っては子どものように眠るだけだった。ズエンは友だちのカムに頼まれて、彼女のボーイフレンドのトーを訪ねていくが、家に着いたとたん、ズエンはトーに襲われてしまう。

現代のハノイが舞台。じっとりとした空気と街の暑さが感じられる作品。出てくる男たちが皆どこかダメです。支える女たちも決して満足しているわけではなく、愛情を求めて漂っています。すれ違う新婚の夫婦、祖父母の秘められた過去、闘鶏に夢中の父としっかり者の娘、危険な男と引き寄せられる女たち・・・それぞれのカップルがハノイの街で息づいていました。繊細な東洋とハイカラな西洋が混ざり合ったような街です。
薬草の蒸し風呂に入るカムとズエン、布越しのシルエットが官能的。母親が自分のために刺繍した花嫁衣裳をズエンに贈ったカム、彼女が愛したのはトーではなく、ズエン?説明が少ない分想像が拡がりました。第66回ヴェネツィア国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。(白)


新婚のズエンが、友だちの彼であるトーに最初は襲われる形だったのに、だんだん危険な匂いのするトーに惹かれていきます。(白)さんが書いているように、カムとズエンの関係も不思議。まさに漂うがごとく、思うがまま行動していて、ベトナム女性もなかなか凄い!と唸りました。(咲)

2009年/ベトナム/カラー/106分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー
posted by shiraishi at 18:15| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベトナムを懐(おも)う(英題:Hello Vietnam)

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監督:グエン・クアン・ズン
脚本:タイン・ホアン、タイ・ハー、グエン・クワン・ユン
撮影:グエン・チン・ホアン、ジェップ・テー・ビン
美術:ラ・バグズリー、レ・ゴック・クオック・バオ
音楽:ドゥック・チー
出演:ホアイ・リン(トゥー)、チー・タイ(ナム)

1995年のニューヨーク。トゥーはベトナムの農村で生まれ育ち、幼馴染と結婚し、つましく暮らしてきた。妻が亡くなって、アメリカに渡った息子グェンの元にやってくるが、同居は叶わずに老人ホームに入居する。たった一人の孫娘タムはアメリカ生まれで、習慣・価値観の全く違う祖父に懐いてはくれない。妻の命日にホームを抜け出したトゥーは、親友のナムを誘い二人だけで伝統的な供養をする。そして、トゥーを怖がっていたタムの本心を初めて聞くことになった。

ベトナム人家族3世代の故郷への思いを綴った作品。トゥーが思い出すのは、緑深く陽光が降りそそぐ故郷。今は暗い空から雪が舞うニューヨークに住んでいます。この対比に望郷の思いが伝わってきます。トゥーの胸の中にある故郷はいつも美しく輝き、味わったはずの苦労は時間が薄めてくれています。
孫娘のタムにとって、ベトナムは見知らぬ外国に過ぎません。祖父のトゥーがよかれと思って伝える習慣も、押し付けにしか思えず、いやでたまりません。真ん中の世代のグェンが、父と娘タムの間の大きな溝を埋める役割、架け橋にならなければいけないのに、と疑問が浮かびます。グェンには故郷を忘れてしまいたい理由がありました。タムがあまりに頑なに祖父を拒否するのも不思議でしたが、このわけも後でわかります。タムのボーイフレンドがごく普通に接するのが救いでした。
異なる世代の思いが理解されず、すれ違ってしまうのは現代でも起き得ること。まず「何故?」と相手を知ろうとすること、自分の心を開くことですよね。(白)


息子グェンのもとに行った父トゥーはなかなかアメリカの生活に馴染めないのに、母の命日にさえ、グェンは仕事で忙しくて家にいられません。アメリか育ちの孫娘タムからは、家の中で火を使う命日の儀式を拒否されてしまいます。こんな祖父と孫娘のやりとりに、いらっとしてしまいます。
2017年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された折に来日したグエン・クアン・ズン監督が、「間違っているのでなく違うのだと、それぞれの世代に感情移入して観ていただければ」と語っていたのを思い出します。息子グェンは、1975年のベトナム南北統一で、ボートピープルとしてアメリカに渡った人物。物語の最後には、離れなければならなかった故国を思う気持ちがじんわり伝わってきました。(咲)


雪のニューヨークでベトナムを想う家族 ベトナム戦争の影は今も
ボートピープルとしてアメリカに渡ったグエンの思い、アメリカで生まれた娘タムの思い、ベトナムに残ったけどアメリカに呼び寄せられた祖父トゥーの思い、世代や文化のギャップの相容れない状態が最初描かれるけど、そこから彼らがかかえた切ない背景へと迫り、最後はそれぞれが祖国を想う切なさが描かれる。それに感動しました。
本作はベトナムで1990年代から演じられてきた舞台を映画化した作品。劇中で歌われるのは、戦いへ赴いた夫を待つ妻の切なさを歌ったもので、その歌のタイトル「Dạ Cổ Hoài Lang(夜恋夫歌)」がベトナムでの原題だそう。
本作の監督は『超人X』や、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のベトナムリメイク『輝ける日々に(「サニー」ベトナム版)』のグエン・クアン・ズン監督。いまやベトナムのヒットメーカーです。これらは大阪アジアン、アジアフォーカス、東京国際映画祭で紹介されました。
それにしてもグエンはベトナムから父トゥーを呼び寄せたのに老人ホームに入れてしまうし、母の命日にもその弔いの催しもしない。一緒に暮らす余裕もないのに親を呼び寄せるということがよくわからなかった。父親にこんな思いをさせるくらいなら、ベトナムにいたほうが幸福だったのではとも思う(暁)。


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グエン・クアン・ズン監督(2018年東京国際映画祭にて)


2017年/ベトナム/カラー/シネスコ/88分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)HKFilm
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー

◎公開初日にはスペシャルトークイベントが決定しました。
SPゲストに元「アイドリング!!!」の創設メンバーとして活躍し、現在も女優として活動中のベトナム出身の美人女優・フォンチーさんが登壇します。
posted by shiraishi at 17:54| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蹴る

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監督:中村和彦
プロデューサー:中村和彦、森内康博
撮影:堺斗志文、森内康博、中村和彦
録音:藤口諒太 
整音:鈴木昭彦
出演:永岡真理、東武範、北沢洋平、吉沢祐輔、竹田敦史、三上勇輝、有田正行、飯島洸洋、内橋翠、内海恭平、塩入新也、北澤豪

永岡真理さんはSMA(脊髄性筋萎縮症)で、生まれてから一度も歩いた経験がない。電動車椅子サッカーの存在を知り、横浜のチームに属して国内で華々しい成績を残している。ワールドカップを目標に、日本代表を目指して日々厳しい練習にいそしんでいる。鹿児島に住む東武範さんは筋ジストロフィーで呼吸器が離せないが、サッカーにかける情熱は人一倍。ふたりを中心に、電動車椅子サッカーを命の糧としている選手たちに密着する。

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永岡真理さんと北澤豪 日本障がい者サッカー連盟会長

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東武範さん

この作品を観て初めて電動車椅子サッカーのことを知りました。こんなに激しいスポーツをやって大丈夫なの?!と驚き、心配してしまいましたが、選手達がみな生き生きと楽しそうで、ものすごく闘争心があるのがわかりました。障がいのため身体の動きが不自由でも、心は縛られることなく自由なのです。
彼らに惚れ込み、6年間寄り添った中村和彦監督はプライベートな生活まで撮影しています。サポートするドクターや周りの人たちの姿も映し込んで、たくさんのことを知らせてくださいました。
中村監督にお話を伺いました。記事はこちらです。(白)


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北澤豪氏、永岡真理さん、中村和彦監督
2018年東京国際映画祭レッドカーペット(撮影:宮崎暁美)

2018年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:「蹴る」製作委員会、ヨコハマ・フットボール映画祭
(c)「蹴る」製作委員会
https://keru.pictures/
★2019年3月23日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開/日本語字幕付き、音声ガイド付き上映ありロードショー
posted by shiraishi at 11:49| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新宿タイガー

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監督・撮影・編集:佐藤慶紀
企画:小林良二 
プロデューサー:塩月隆史
撮影:喜多村朋充 
写真:須藤明子 
音楽:LANTAN
出演:新宿タイガー、八嶋智人、渋川清彦、睡蓮みどり、井口昇、久保新二、石川ゆうや、里見瑤子、宮下今日子、外波山文明、速水今日子、しのはら実加、田代葉子、大上こうじほか
ナレーション:寺島しのぶ

新宿に“新宿タイガー”と呼ばれる年配の男性がいる。彼はいつも虎のお面を被り、ド派手な格好をして、毎日新宿を歩いている。彼は24歳だった1972年に、死ぬまでこの格好でタイガーとして生きることを決意した。何が彼をそう決意させたのか? 新聞販売店や1998年のオープン時と2012年のリニューアル時のポスターに新宿タイガーを起用したTOWER RECORDS新宿店の関係者、ゴールデン街の店主たちなど、様々な人へのインタビューを通じ、虎のお面の裏に隠された彼の意図と、一つのことを貫き通すことの素晴らしさ、そして新宿の街が担ってきた重要な役割に迫る。

新宿タイガーのことは、新宿で何度か見かけたことがある。派手な格好で自転車で疾走する姿に実はちょっと恐怖を感じていた。関わらないようにしなきゃと思った記憶がある。この作品で映し出される新宿タイガーは映画、美人、お酒をこよなく愛し、いつもニコニコしていて、相手の懐にするっと入ってしまう。これまでの私の印象はまったくの誤解だったと知った。また、新宿タイガー本人だけでなく、ゴールデン街の歴史やそこに集う人々の思いも伝わってくる。人を見た目だけで判断してはいけないと改めて思う。(堀)

2019年/日本/カラー/83分
配給:渋谷プロダクション
(C) 2019「新宿タイガー」の映画を作る会. All Rights Reserved.
公式サイト:http://shinjuku-tiger.com/
★2019年3月22日(金)からテアトル新宿にてレイトショー
posted by ほりきみき at 02:49| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぼくの好きな先生 

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監督:前田哲
撮影:前田哲
録音:加藤大和
効果:小島彩、斎藤優希
編集:千葉愛美
音楽:スタジオアトウ
主題歌:RCサクセション
出演:瀬島匠

画家 瀬島匠は、山形にある東北芸術工科大学で学生を指導しつつ、日本中を駆け巡って創作活動を続け、眠っている時間以外はつねに何かを作り、ラジコンを飛ばし、絶え間なく言葉を発し、30年間〝RUNNER〟という同じタイトルで絵を描き続けている。睡眠時間は極端に短く、10代の頃に35歳で死ぬと思い込み、逆算して人生を過ごしてきたが、50歳を過ぎた現在も生き続け、もう余生だと言いつつ、あり余るエネルギーを撒き散らしながら「全力で今を生きて」いる。 周りからは、自由奔放に人生を謳歌している「破天荒で幸せな人」と見られている。しかし、光あるところには影があるように、撮影を進めていく中で、生まれ故郷の広島県尾道市因島での「ある宿命」を背負って生き続けていることが明かされる。 そこには、秘められた「家族の物語」があった。映画監督 前田哲が、全身アーティスト 瀬島匠に出会い、自らカメラを手に衝動的に撮影。 一年余りの時間を費やして完成させた、観る者の心を激しく揺さぶる、熱き人間ドキュメントである。

RCサクセションの「ぼくの好きな先生」が主題歌として使われ、瀬島は「担任の先生が、毎日、飛行機か船を作ることを宿題の代わりにしてくれた」と小学校1年生のときを振り返る。瀬島にとって、このときの経験が今の活動のベースになっているのだろう。とにかくパワフルに作りたいものを作り、したいことをする。瀬島や瀬島のダイナミックな作品からエネルギーあふれる生きる力が伝わってきた。
そんな瀬島にも実は悲しい過去があり、それをずっと背負ってきたことが作品の後半に明らかになってくる。今となってはもう分からない答えを作品に求め続けてきたのかもしれない。(堀)



観る前は、昔出会った懐かしい先生を訪ねていくお話か?と勝手に想像していました。そうではなくて、前田監督が映画の先生として大学に行ったときに、絵の先生としていらしたのがこの瀬島先生。そういえば先生同士って「○○先生」って呼んでいましたっけ。
瀬島先生はパワフルで、なんでもさささっと始めては仕上げ てしまいます。このままどこに行って何をするの?と見続けていたら、土俵際でうっちゃりをかけられた感じ。人には知られざる歴史ありってことかなぁ。前田監督撮り始めは知らなかったんですよね?(白)


2018/日本/日本語/85分/カラー/HD 16:9/Stereo/DCP
配給:アラキ・アートオフィス
©2019. Tetsu Maeda
公式サイト:https://www.sukinasensei.com/
★2019年3月23 日(土)より新宿ケイズシネマにて劇場公開

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美人が婚活してみたら

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監督:大九明子
脚本:じろう(シソンヌ)
原作:とあるアラ子『美人が婚活してみたら』(小学館クリエイティブ)
出演:黒川芽以、臼田あさ美、中村倫也、田中圭

タカコ(黒川芽以)は道行く誰もが振り返る美女。WEBデザイナーという仕事にも恵まれ、愚痴を聞いてくれるケイコ(臼田あさ美)という親友もいる。しかし、長くつきあってから相手が結婚していることが発覚するという恋愛が3回も続き、気づけば32歳になっていた。不毛な恋愛に疲れ果てたタカコは結婚を決意し、婚活サイトに登録する。マッチングサイトで出会った本気で婚活に励む非モテ系の園木(中村倫也)とデートを重ねながら、シングルズバーで知り合った結婚願望のないバツイチ・イケメン歯科医の矢田部(田中圭)に惹かれていく。自身の結婚生活に悩んでいたケイコは、タカコが結婚後についてまったく考えていないことに苛立ち始め、2人はとうとう本音を激しくぶつけあう大げんかをしてしまう。

友人の婚活奮闘記を綴った同名エッセイコミックを原作に、『勝手にふるえてろ』の大九明子監督がメガホンをとった。タカコとケイコの女子トークは遠慮がなく、本音炸裂で気持ちがいい。お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうが書いた脚本に、女性が罵詈雑言を吐くセリフを大九監督が加えた。言葉選びがうまい。こんな本音話のできる友人がいていいなぁと羨ましくなってしまう。
また、大九監督は劇伴や音でその場の雰囲気を的確に表現する。その音楽センスも素晴らしい。主題歌は前作と同じように主演女優(今回は黒川芽以)歌う。大九監督が歌詞を書き、高野正樹がメロディーをつけたオリジナル曲「手のうた」はオリジナルのラストにぴったり。黒川芽以の歌声が心に沁みてくる。人生っていろいろあるよね。うまくいかなくってもいいじゃない。この歌を歌いながら歩いていこう。(堀)


2019年/日本/カラー/89分
配給:KATSU-do
© 2018吉本興行
公式サイト:http://bijikon.official-movie.com/
★2019年3月23日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

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こどもしょくどう 

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監督:日向寺太郎 
脚本:足立紳、山口智之 
撮影:鈴木達夫 
照明:三上日出志 
美術:丸山裕司 
録音:橋本泰夫 
編集:川島章正 
音楽:Castle in the Air(谷川公子+渡辺香津美) 
主題歌:「こどもしょくどう」作詞/俵万智 作曲/谷川公子 編曲・演奏/Castle in the Air 唄/古川凛、田中千空 
出演:藤本哉汰、鈴木梨央、浅川蓮、古川凛、田中千空/降谷建志、石田ひかり/常盤貴子、吉岡秀隆

小学5年生の高野ユウト(藤本哉汰)は、食堂を営む両親と妹と健やかな日々を過ごしていた。一方、ユウトの幼馴染のタカシの家は、育児放棄の母子家庭で、ユウトの両親はそんなタカシを心配し頻繁に夕食を振舞っていた。
ある日、ユウトとタカシは河原で父親と車中生活をしている姉妹に出会った。ユウトは彼女たちに哀れみの気持ちを抱き、タカシは仲間意識と少しの優越感を抱いた。あまりに“かわいそう”な姉妹の姿を見かねたユウトは、怪訝な顔をする両親に2人にも食事を出してほしいとお願いをする。久しぶりの温かいご飯に妹のヒカルは素直に喜ぶが、姉のミチル(鈴木梨央)はどことなく他人を拒絶しているように見えた。
数日後、姉妹の父親が2人を置いて失踪し、ミチルたちは行き場をなくしてしまう。これまで面倒なことを避けて事なかれ主義だったユウトは、姉妹たちと意外な行動に出始める。

ここ数年、頻繁に「子ども食堂」という言葉を耳にするようになった。1人で食事したり、家庭の事情で食べられなかったりする子どもに、地域の大人が無料または低額で食事を提供する取り組みだという。そして、厚生労働省発表の「子供の相対的貧困率」によれば、6人に1人の子どもが貧困状態にあるという。これは40人学級だったらクラスの6~7人は貧困ということ。驚きである。
ただ、普段、聞くニュースなどは提供する側の視点で語ることが多い。この作品は子どもの視点で貧困問題に向き合っている。親から見放されても、誰に媚びることなく、辛い境遇から幼い妹と守り、矜持を持って生きようとするミチルを演じるのは鈴木梨央。テレビドラマ「明日、ママがいない」でもそうだったが、不幸な境遇に負けることなく、キッとにらんで生きていく役どころをやらせたら本当にうまい。この作品でもいちばん印象に残った。(堀)


2018年/日本/カラー/93分
配給:パル企画
(C)2018「こどもしょくどう」製作委員会
公式サイト:https://kodomoshokudo.pal-ep.com
★2019年3月23日(土)ロードショー

『こどもしょくどう』初日舞台挨拶レポート
3月23日(土)に岩波ホールで『こどもしょくどう』初日舞台挨拶が行われ、藤本哉汰、鈴木梨央、常盤貴子、吉岡秀隆 が登壇した。
以下はオフィシャルリリースから転載。 (提供:パル企画)

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満員の客席に上映後の感動の涙が溢れる中、舞台挨拶は、「映画館で育った人間なので映画館に来てくれて嬉しい」と日向寺監督(53)の観客への感謝の言葉から始まった。
W主演のユウト役を演じた藤本哉汰(15)は初めての主演を振り返り「色んなことを学ばさせていただきました」
同じくW主演で初の主役である・ミチルを演じた鈴木梨央(14)は満席の観客席を見渡して「多くの方にこの映画を見て頂けてうれしいです」と挨拶。
大山タカシ役・浅川蓮(14)、木下ヒカル役・古川凛(8)、高野ミサ役・田中千空(9)と挨拶が続き、ユウトの母親役を務めた常盤貴子(46)は、衣装の靴を忘れてしまったことを明かし場内を沸かせる。「この映画にこんなにたくさんの人たちが来てくれるなんて」と喜んだ。
ユウトの父親役を演じた吉岡秀隆(48)が「今日は寒いけど、この会場はとってもあたたかい。
心温まる何かを感じ取ってもらえたんだろうな」と語った。感想として観客から割れんばかりの拍手を頂き、シンプルに「うれしいです」と、日向寺監督。
続いて、日向寺監督が企画意図について「子ども食堂が最初からあるものではなく、できるまでの物語にしようと思った。企画がスタートしたのは2015年で、子ども食堂は今ほど知られていなかった」と語る。
監督の演出について藤本は「テストがなくすぐ本番という感じが多く、自然な感じで演じることができました」、鈴木は「自分が思うままに、自然と自分が出た感情で演じてほしいというアドバイスを頂きました」と語った。成長期真っ最中である浅川の急に伸びた身長や、俵万智が歌詞を担当した主題歌を歌う古川と田中の自由でカワイイふるまいに自然と笑顔になる登壇者たちと観客たち。
幼い頃からキャリアをスタートさせてきた藤本・鈴木だが、初めての主演には緊張もあったようで、鈴木は「最初、クランクインしたときは、少しだけピリピリしたかな」と。
藤本「ベテランさんに引っ張ってもらえました。はっきりと優しく教えてくれました」と、一生懸命だった撮影を思い出し合った。
吉岡は二人と同じく子役から活動した自身を振り返りながら、藤本と鈴木を素晴らしいと絶賛。「彼らの見つめる目線の先に、大人たちが作ったこういう時代があるとしたならば、子供は親だけが育てるものではなくて、大人全員で育てないといけない」と投げかけた。
常盤は、日向寺監督作『爆心・長崎の空』を見るために京都まで行ったという監督との最初の出会いに触れながら、出演の決め手を「現代社会が抱えている大きな問題を捉えていて、意義のある映画だと思う」と語り、自身が少女時代を過ごした関西で感じた、踏み込む精神の大切さ、「静観しているよりはまずは入っていってみるのもいいんじゃないかな。おせっかい心が、日本をより明るくするんじゃないかな」と問いかけた。
吉岡は「次の世代、子どもたちの笑顔が今よりも溢れる時代になれば、大人たちの心の余裕が生まれ、弱者と言われている存在にも目を向けられるのではないか、この映画と同じように次にくる時代は少しでもいい時代になればいいなと祈るような気持ちでいます」と訴えた。最後の挨拶として藤本は「この映画はとても考えさせられる映画です。見て見ぬふりをせず、勇気を持って関わってほしいと思います。いろいろな人に広めてほしいなと思います」と、鈴木は「みなさんがこの映画を見た後、みんなで話したり、考えたり、行動にうつしてほしいなと思います。子ども食堂で検索すると、子ども食堂ネットワークというサイトがあって、そこでどこの食堂で何が必要なのかと分かるので、みなさんが子供たちのために何か力になって頂けたら嬉しいです」と真っ直ぐな瞳で語りかけ、日向寺監督は「子ども食堂という新しくゆるやかな共同体ができたことがとても素晴らしいこと。映画を見て下さった皆さんともこの気持ちを共有できてうれしい」と締めくくった。
posted by ほりきみき at 00:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする