2019年03月10日

ソローキンの見た桜

sorokin.jpg

監督・脚本・編集:井上雅貴
出演: 阿部純子、ロデオン・ガリュチェンコ、山本陽子、アレキサンドル・ドモガロフ、六平直政、杉作J太郎、斉藤工、イッセー尾形

日露戦争の時代、松山の捕虜収容所で花開いた国を越えた一つの恋

それから110年経った2018年。駆け出しのTVディレクターの桜子(阿部純子)は、先輩の倉田史郎(斎藤工)と共に、日露戦争時代のロシア兵に関する取材でロシアに行くことになる。テーマに関心を持てないでいたが、祖母菊枝(山本陽子)から自分のルーツがロシア兵にあると聞かされ、俄然興味を持つ。手がかりはロシアから届いた謎の手紙と、ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)と、ゆい(阿部純子・二役)の日記。

兄の健二を日露戦争で亡くしたゆいは、ロシアを許せない思いを抱えながら、捕虜となったロシア兵の看護をしていた。献身的に看護するゆいの心の痛みを知ったソローキンは優しく彼女に接し、お互い心を惹かれあうようになる。やがて、ロシア革命に身を投じる為、ソローキンは脱走を計画。ゆいも連れて行こうとするが・・・

第1回日本放送文化大賞ラジオ部門でグランプリに輝いたラジオドラマ「松山ロシア人捕虜収容所外伝 ソローキンの見た桜」の実写映画化。
プロデューサーは、初めて手がけた映画『風の絨毯』(2003年)でイランとの合作を果たした益田祐美子さん。今回も、ロシアとの合作で壮大なロシアロケを敢行しています。

日露戦争時代、多くのロシア兵捕虜収容所が存在しましたが、初めて設置されたのが、愛媛県松山市。捕虜は「博愛ノ心ヲ以て」取り扱うべしとされ、食糧にも当時の日本の将兵を上回る経費をかけ、将校クラスを中心に「自由外出」が認められ、道後温泉で集団入浴をしたり、遊廓にいったり、芝居見物(内子座でロケしています)したりという、かなり自由な捕虜生活だったそうです。そんな様子も映画から垣間見られます。
このような捕虜収容所だからこそ、ゆいとソローキンとの恋も生まれたのでしょう。

数ヶ月前に、渋谷の文化村でたまたま第一次世界大戦中の「坂東俘虜収容所の世界展」を観たのですが、そこでも収容所でドイツ兵捕虜たちが誇りを持って楽しく生活できるよう配慮していた様子を知り、日本の武士道精神を感じて嬉しく思ったものです。

ただ一つ気になったのは、ゆいとソローキンが流暢な英語で会話していたことです。映画だからとはいえ、流暢すぎる! ソローキンはロシア人だし、もう少し、たどたどしい英語のほうが、より真実味があったかなと思いました。(咲)

日露戦争で捕虜となったロシア人将校と日本人看護婦の悲恋を描く。知的で、ちょっと影があり、女性の扱いに慣れた西洋人に惹かれるのは仕方のないこと。阿部純子の真っすぐな眼差しから、その思いが溢れ出る。愛ゆえの判断と行動に主人公の強さを感じずにはいられない。実話とのことだが、どこまでが実話なのか、知りたくなる。(堀)

*舞台挨拶*
【角川シネマ有楽町】
■3.23(土)
(1)10:30の回上映後
(2)13:30の回上映前
登壇者(予定)
#阿部純子/#ロデオンガリュチェンコ
#アレクサンドルドモガロフ/#斎藤工/#イッセー尾形
井上雅貴監督/井上イリーナプロデューサー
==========
■3.23(土)
16:15の回上映前
登壇者(予定)
#ロデオンガリュチェンコ/#山本修夢/#海老瀬はな
#イワングロモフ/#アンドレイデメンチェフ
井上雅貴監督/井上イリーナP
==========
■3.25(月)
18:00の回上映後
登壇者(予定)
#ロデオンガリュチェンコ
井上雅貴監督/井上イリーナプロデューサー

【ミッドランドスクエアシネマ】
■3.24(日)9:00の回上映後
登壇者
#ロデオンガリュチェンコ
井上イリーナプロデューサー/益田祐美子プロデューサー

【MOVIX京都】
■3.24(日)11:30の回上映後
登壇者
#ロデオンガリュチェンコ
井上イリーナプロデューサー/益田祐美子プロデューサー


2019年/日本/112分/DCP
配給:KADOKAWA、平成プロジェクト
公式サイト:https://sorokin-movie.com/
★2019年3月22日(金)角川シネマ有楽町ほか全国公開
☆2019年3月16日(土)愛媛県先行公開






posted by sakiko at 20:54| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セメントの記憶   英題:Taste of Cement

cement.jpg

監督・脚本:ジアード・クルスーム 
撮影監督:タラール・クーリ 
音楽:アンツガー・フレーリッヒ

かつて中東のパリといわれたレバノンの首都ベイルート。
海辺に建設中の新しいビル。隣りには廃墟になったビル。1975年から15年続いた内戦が1990年に終わり、町が再建されてきた。
一人のシリアから来ている若い労働者。初めて海を知ったのは、ベイルートからの出稼ぎから帰ってきた父のお土産の絵。白い砂浜、青い海、そして2本のヤシの木。今は自分がその海を目の前にしている。が、シリアの労働者たちが海を楽しむことはない。建設中の高層ビルの地下は大きな宿泊所になっていて、夜7時以降、シリア人は外出禁止だ。
地下と繋がったエレベーターを行き来するだけの日々だ・・・

レバノンの再建を支えてきたシリア人労働者は、100万人にものぼるという。そして、そのシリアは今、内戦で町が破壊され続けている。人々の心の傷はあまりに深く、破壊し尽された町の再建に手がつけられるのはいつのことになるのだろうと暗澹たる思いだ。
映画の最後、ミキサー車の中で、再建された美しいベイルートの町がぐるぐる回る。
再建を下支えしているシリアの人たちの思いもぐるぐる回る。(咲)


◆【ジアード・クルスーム監督来日イベント
3.21(木・祝)にクルスーム監督の前作『The Immortal Sergeant/不死身の軍曹』の上映&トークイベントが筑波大学東京キャンパスで開催されます。


★初日舞台挨拶★
渋谷ユーロスペースにて 3月23日(土)12:30~ 及び 14:30~の回上映後、ジアード・クルスーム監督舞台挨拶。

1回目終了後、1階のカフェ Cafe9 テラススペースで監督との交流会が開かれます。1ドリンクオーダー。


2018年/ドイツ・レバノン・シリア・カタール・アラブ首長国連邦/アラビア語/88分
日本語字幕:吉川美奈子
配給:サニーフィルム
★2019年3月23日(土)より東京・ユーロスペースほか全国で公開







posted by sakiko at 20:51| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ふたりの女王 メアリーとエリザベス(原題:Mary Queen of Scots)

hutarino.jpg

監督:ジョージー・ルーク
脚本:ボー・ウィリモン
撮影:ジョン・マシソン
美術ジェームズ・メリフィールド
衣装アレクサンドラ・バーン
音楽:マックス・リヒター
出演:シアーシャ・ローナン(メアリー・スチュアート)、マーゴット・ロビー(エリザベス1世)、ジャック・ロウデン(ヘンリー・スチュアート/ダーンリー卿)、ジョー・アルウィン(ロバート・ダドリー/レスター伯爵)、デビッド・テナント(ジョン・ノックス)

スコットランド王ジェームス5世の娘として生まれたメアリー・スチュアートは、生後6日目に父が亡くなったため王位を継ぐ。幼少のうちに渡仏、16歳でフランス王妃となったのも束の間、夫フランソワ2世が崩御。18歳で故郷スコットランドに戻る。イングランドではエリザベス1世が統治していたが、未婚で王位継承者はいなかった。エリザベスは自分と同じく王位継承権を持つメアリーに複雑な思いをいだいていた。
メアリーは同じスチュアート家のダーンリー卿と結婚し、ジェームズを出産する。

ケイト・ブランシェット主演の『エリザベス ゴールデンエイジ』(2007年)のプロデューサーのティム・ビーバン、エリック・フェルナーがエリザベスと王位継承を争ったメアリーにスポットを当てた作品。シアーシャ・ローナンはメアリ役に早くからすえられ、ジョージー・ルークが監督に決まって自らマーゴット・ロビーにオファーしたのだそうです。
演劇界では女性初の芸術監督だったルーク監督が、初監督作で二人のアカデミー賞ノミネート女優と二人の女王の映画を作りました。衣裳のアレクサンドラ・バーン、ヘア&メイクのジェニー・シャーコアも本作でアカデミー賞にノミネートされました。実力ある女性ばかり!
同じころの日本は安土桃山時代。男達が覇を競っていました。エリザベス一世(1533-1603)、メアリー・スチュアート(1542-1587)と、織田信長(1534-1582)、豊臣秀吉(1537-1598)、徳川家康(1543-1616)が同じ時代を生きていました。女性は政略結婚の駒か、世継ぎを産むためで、表舞台に立つことはなかったでしょう。この違い。(白)


自ら立ち回って国を治めようとした「動」のメアリー。どっしり構えて大局を見極める「静」のエリザベス。利発で大胆なメアリーの、情も捨てきれない繊細さをシアーシャ・ローナンが微妙な表情で演じている。一方で、まばたきしていないのでは、と思ってしまうくらい先をじっと見据えているような瞳の奥にマーゴット・ロビーがエリザベスの深い孤独をたたえていた。相反する人生を送ることになった2人だが、実はいちばん理解し合える存在だったはず。状況が違っていたらと考えずにいられない。(堀)

2018年/イギリス/カラー/シネスコ/124分
配給:ビターズ・エンド
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.2queens.jp/
★2019年3月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:34| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする