2019年02月17日

フォルトゥナの瞳 

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監督:三木孝浩
原作:百田尚樹『フォルトゥナの瞳』(新潮文庫刊)
脚本:坂口理子、三木孝浩
主題歌・挿入歌:「In the Stars(feat, Kiiara)」/ONE OK ROCK (A-Sketch)
出演:神木隆之介、有村架純、志尊 淳、DAIGO、松井愛莉、北村有起哉、斉藤由貴、時任三郎

幼少期に飛行機事故で家族を失った木山慎一郎(神木隆之介)は、友人も恋人もなくただ仕事のみに生きてきた。しかしある日、「死を目前にした人間が透けて見える能力」―フォルトゥナの瞳―を持っていることに気づき、生活が一変してしまう。自分はなぜこんな力を持ってしまったのか―苦悩する日々の中、偶然入った携帯ショップで桐生葵(有村架純)に出会う。明るく、自分に対し夢や自信を与えてくれる彼女に心惹かれていき、初めて孤独だった慎一郎の人生に彩りが生まれる。互いに惹かれ合い幸せな日々を過ごす2人。しかしそれもつかの間、突然、葵の身体が透け始めてしまう。

原作は「永遠の0」、「海賊と呼ばれた男」も映画化された百田尚樹の同名小説。ある日突然不思議な力を持ってしまった青年が、その力に翻弄されながらも愛する人と巡り合い、彼女の“死の運命”に必死に立ち向かおうとする。設定はファンタジーだが、描かれているのは愛する人を守りたいという気持ちである。
主人公の慎一郎を演じるのは神木隆之介。人気子役としてスタートし、その後、『桐島、部活やめるってよ』、実写版『るろうに剣心』の「京都大火編」「伝説の最期編」、『バクマン。』など若手俳優へと確実に成長を遂げた。若干25歳にして20年以上のキャリアを持つのだが、意外にも本格的なラブストーリーは初めてという。三木孝浩監督によって、神木隆之介の男としての新たな魅力が見事に引き出された。
三木孝浩監督作品には必ず登場する野間口徹が今回もあんなところに! 分かりやすいが、ほぼ1シーンなのでお見逃しなく。(堀)


2019年/日本/カラー/110分
配給:東宝
(C) 2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会
公式サイト:http://fortuna-movie.com/

★2019年2月15日(金)全国東宝系にてロードショー

posted by ほりきみき at 20:25| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月16日

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

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監督・脚本:大森立嗣(『さよなら渓谷』『日日是好日』)
原作:宮川サトシ著「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」(新潮社刊)
主題歌:「君の歌はワルツ」BEGIN書き下ろし
出演:安田顕、倍賞美津子、松下奈緒、村上淳、石橋蓮司

2012年春。サトシは火葬場で最愛の母の遺骨の中から、小さなひとかけらをそっとポケットにしまう。こんなに早く別れの日が来るなんて・・・。
思えば、明るく元気な母が突然がんを宣告されたのは、2年前の春のことだった。30代半ばを過ぎても、漫画家を志ながら、知人と営む塾の講師をしているサトシをいつも励ましてくれていた母。サトシが中学生の頃に急性白血病に罹った時にも、必死になって守ってくれた母。今度は、サトシが母を励ます番だった。「必ず助かるよ」と声をかけながら、弱気になるサトシを笑顔にしてくれたのは恋人の真里だった。
母が亡くなり、真里との結婚を後押ししてくれていた母の思いに答えて、結婚する。
2012年秋。サトシは念願だった漫画家としてデビューを果たす。新婚の真里と東京に引っ越す。そんなある日、一本の電話がかかってくる。それは、亡き母が遺してくれた驚くべき贈り物だった…

原作は、2013年にWEBサイト「くらげバンチ」で連載がスタートした宮川サトシの自伝エッセイ漫画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」(新潮社刊)。
作者の宮川サトシが、自身の母との最期の日々から葬儀、そして母亡き後の日々の体験をもとに描いた物語。
誰しもが経験する肉親との別れ。遺骨を食べたいほどに、そばに置いておきたい気持ちに、観る者皆がほろっとさせられることでしょう。で、驚かされるのは、母親が息子のことを案じて、そこまで考えていたのかという思いもかけない贈り物。私には子どもがいないけれど、母親というもの、子どものためならどんなこともするものだと感じ入りました。(咲)


2019年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/108分
配給:アスミック・エース
公式サイト:http://bokuiko-movie.asmik-ace.co.jp/
★2019年2月22日(金)全国順次ロードショー





posted by sakiko at 20:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月15日

ビール・ストリートの恋人たち(原題:If Beale Street Could Talk)

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監督・脚本:バリー・ジェンキンス
原作:ジェームズ・ボールドウィン
撮影:ジェームズ・ラクストン
音楽:ニコラス・ブリテル
出演:キキ・レイン(ティッシュ・リヴァーズ)、ステファン・ジェームス(ファニー)、レジーナ・キング(シャロン・リヴァーズ)、コールマン・ドミンゴ(ジョーゼフ・リヴァーズ)、テヨナ・パリス(アーネスティン・リヴァーズ)、デイブ・フランコ(レヴィー)、ディエゴ・ルナ(ペドロシート)、エド・スクレイン(ベル巡査長)

1970年代のハーレム。ティッシュとファニーは幼馴染の恋人同士で、早く二人で生活することを夢見て部屋を探していた。ようやく貸してくる家主を見つけたその日、二人は結ばれる。帰り道に寄った店でティッシュが白人の男にセクハラを受け、ファニーは腹を立てる。差別意識丸出しの白人警官がファニーを逮捕しようとしたが、見ていた店主や客たちが抗議する。警官は手を引くことになりファニーに目をつける。しばらく経って強姦事件が起き、被害者の女性が犯人は黒人男性と証言した。ファニーは見に覚えのない濡れぎぬを着せられ、容疑者として逮捕されてしまった。

『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞などを受賞したバリー・ジェンキンス監督の新作。ステファン・ジェームスは『栄光のランナー 1936ベルリン』で陸上選手ジェシー・オーエンスを演じていました。また良い作品に出会えて何よりです。ティッシュ役のキキ・レインはこれが映画初出演とか。ティッシュはまるで自分のことのようで、どうしても演じたかったそうです。
若い二人が、理不尽な目に会わされてしまうことに愕然としますが、白人弁護士や彼らを支える家族たちは諦めません。ことに証言をとりたい一心で、遠くまで旅しようとする母親(レジーナ・キングが助演女優賞ノミネート)、旅費を稼ぐ父親たちの愛情に胸があつくなります。ストリートのユダヤ人、マイノリティの人たちの応援もありました。ジェームズ・ボールドウィンの時代から半世紀たちました。今はどれだけよくなったのでしょうか。(白)


原作は、キング牧師と共に公民権運動の旗手としても活躍した黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンが70年代に書いた小説。長年映画化を夢見ていたというバリー・ジェンキンス監督が、理不尽な状況に置かれている恋人たちの物語を味わい深い作品に仕上げています。無実の罪で収監されている男ファニーにとって、恋人ティッシュや、真相を明かそうと奔走する家族や友人たちの存在が、一縷の希望の光。人と人との繋がりの素晴らしさを感じさせてくれます。
一方、白人警官は、いちゃもんをつけて黒人だというだけでファニーを犯人に仕立ててしまいます。権力を持つ者が、自身の主義主張に合わない者を陥れるという構図は、国家レベルでも横行していることに思いが至ります。(咲)



2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/119分
配給:ロングライド
(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
http://longride.jp/bealestreet/
★2019年2月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 20:51| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所(原題:Saturday Church) 

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監督・脚本:デイモン・カーダシス
撮影:ヒラリー・スペラ
音楽:ネイサン・ラーソン
出演:ルカ・カイン(ユリシーズ)、マーゴット・ビンガム(アマラ)、レジーナ・テイラー(ローズ)、マークイス・ロドリゲス(レイモンド)、MJ・ロドリゲス(エボニー)、インドゥヤ・ムーア(ディジョン)、アリシア・ガルシア(ヘヴン)

高校生のユリシーズは、学校でも家庭でも居場所がない。学校では女っぽいとからかわれ、家には夜勤の多い母親に代わって留守を見る厳しいローズ叔母さんがいる。軍人だった父親が亡くなってから、ユリシーズは母の服や靴を身につけて鏡に映していた。弟や叔母に知られて家を飛び出し、心細い思いをしていたとき、トランスジェンダーの女性たちに出会う。LGBTの人々が集う「土曜の夜の教会」に誘われ、初めて自分と同じような葛藤を抱え、孤独に生きている人々がこんなにもいることを知った。

主な舞台となるのは、デイモン・カーダシス監督のお母さんが司祭をされているセント・ピーターズ教会。もともと、監督が「土曜の夜の教会」でボランティアをしていたことが映画を作るきっかけになったのだそうです。
LGBTの中でも有色人種のトランスジェンダーはアメリカのホームレスの大半を占め、最も声を上げられない人々であること、彼らに必要なのは”希望”を持ち続けることだ、と監督は気づきます。言葉にならない溢れる思いが歌になり、光を目指すダンスになりました。歌詞は監督が書いたものです。
ユリシーズ役のルカ・カインが繊細で美しく、見とれました。ユリシーズを受け入れ、応援するエボニー、ディジョン、ヘヴンは実際にトランスジェンダーの女優たちです。なんだか世の中狭苦しく生き辛くなっているこのごろですが、空想すること、希望を持つことは誰にでもできるんだよ、と背中を押してくれる作品。(白)


トランスジェンダーの人たちに誘われて行った「土曜の夜の教会」で、自分らしく生きることを学んだユリシーズ。ハイヒールを買って隠していたのを、叔母が見つけ、罵倒します。でも、母親は違う。ユリシーズの思いを尊重します。
実は私の友人から、数年前、「娘が息子になっちゃったの」と聞かされました。性同一性障がい。名前も男性らしいものに変え、アメリカにしばらく行った後、帰国して男性として就職。そして、昨年、「息子が結婚したの」と友人。戸惑いながらも、我が子をあるがままに受け入れている姿に、これが母親というものなのだと思いました。
今や社会も変化してきて、LGBTの人たちの存在が認識されて偏見の目でみることも以前より減ってきたのではないかと思います。けれども社会によっては、同性愛というだけで処罰の対象になるところもあるのが現実。人間の尊厳が認められる世の中であってほしいと思います。(咲)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/82分
配給:キノフィルムズ
(C)2016 Saturday Church Holding LLC ALL rights reserved.
http://saturday-church.com/
★2019年2月22日(金)新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

THE GUILTY/ギルティ (原題:Den skyldige)

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監督:グスタフ・モーラー
脚本:グスタフ・モーラー、エミール・ナイガード・アルベルトセン
出演:ヤコブ・セーダーグレン(アスガー・ホルム)、イェシカ・ディナウエ(イーベン)、ヨハン・オルセン(ミケル)、オマール・シャガウィーラ(シッド)

警察官のアスガー・ホルムは、ある事件をきっかけに一戦を退き、今は緊急通報司令室のオペレーターを勤めている。交通事故の緊急搬送や、車の手配など瑣末な事件にうんざりしていた。そこへ1本の通報が入った。「誘拐されて車でどこかへ連れて行かれている」という女性からの電話だった。犯人に気づかれることなく、女性の乗っている車を特定しなければならない。事件を解決するための手がかりは、電話を握り締めているだろう女性の声と、かすかに聞こえてくる”音”だけなのだ。

「おお、こう来ましたか!」と思わず拍手しそうになった作品。すぐハリウッドリメイクが決まったというのが納得です。ワンシチュエーション+電話というと、トム・ハーディが一人で演じきった『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』が浮かびます。状況は誘拐事件のこちらのほうが切迫しておりますが、グスタフ・モーラー監督も意識していたでしょうか?(白)

映し出されるのは、緊急通報司令室と、主人公のオペレーターの男のみ。緊急事態を告げる女性の声と、その背景の音だけで、オペレーターの男も、映画を観ている私たちも、事態を把握することになります。凄惨な場面は映らないのに、まるで目の前で残酷な事件が繰り広げられているかのよう。主人公の男も、私たちも、電話から聴こえてくる声と音だけで現場を想像してしまいます。
製作費をそれほどかけなくても、これほどの映画が作れると驚かされました。そして、思いもかけない結末にも!(咲)


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◆制作秘話◆ (配給・宣伝のファントム・フィルムさんより)
監督は「新しい形式を試したかった。制限された枠内でクリエイティブに制作したいという欲望を抱いていた」インタビューで答えている。「観る人に挑み、驚かせるようなジャンル映画を作りたい」という思いで作られた本作は、見事に観るものを今までの映画で体験したことない“新感覚”の世界に誘ってくれる傑作に仕上がった。そしてその稀有な体験を生み出すのは徹底的にこだわり抜かれた“音”である。主人公しか映し出されないにも関わらず、電話先の女性の声や事件現場が観る者の頭に鮮明に浮かび上がってくる。その秘訣はキャスティングにあった。本作で誘拐された女性を演じるイェシカ・ディナウエは、声でのみ出演している。そのため、監督はあえて彼女の顔を見ずに、音声ファイルだけを聞いてブラインドオーディションを行ったという。

このオーディションについて、監督はこうインタビューに答えている「観客にそれぞれのイメージを思い浮かべてもらい、一緒に作品を作り上げていくというのがこの映画の主旨だ。どの作品でもそうだが、枠の外側にあるものを(=作品の中で直接語っていない)観客に思い浮かべてもらうというのが最も重要だと思うんだ。だからサウンドデザインや声だけで出演している役者も大事だった。役者に関しては、その人物を語れる独特の声を持った役者を求めていたから、ブラインド・オーディションを行ったんだ。キャスティング会社があるシーンを役者に演じさせ、僕はその音声だけをもらった。彼らの見た目はもちろん、名前も有名な役者なのかも知らされず、声だけで判断したのさ。色々聞いていくうちに、どのような声であれば観客の想像力をかき立てられるかが明確に分かってきた。」さらに、その時を思い出して「彼らはオーディションをした役者の中でも、とても特徴的な声だったのだ。」と監督は振り返る。異例のオーディション方法で見出された彼らは、劇中でも一度聞いたら脳裏から離れない特徴的な声による、見事な熱演を見せている。

 このような一風変わった方法をとった理由を監督は、「主人公と観客の目線を合わせ、距離をできるだけ縮めたかったから」と語っている。キャスティング時点から既に“音と声だけしかない”という本作の設定にこだわったことが伺える。さらに、本作において徹底して追求されたリアリティは、“電話からの音と声”はもちろんのこと、映像にも現れている。監督はあえてロングテイクを多用することで、撮影現場で起こる些細なミスも映画の中に取り込むという手法をとっていた。
加えて、主演のヤコブ・セーダーグレンには、「作品の主旨やリサーチ結果を共有し、キャラクターの背景などを話し合った上で、さらに脚本を一単語ずつ見ていき、なぜそのようなことを言うのか細かく分析していった。また、リハーサルは一切行わなかった。誘拐された女性と初めてセリフを合わせるのは、そのシーンを撮影する時だった。その新鮮さを求めていたから、事前に読み合わせはしなかったんだ。」と監督は答え、首尾一貫した本作のテーマへの徹底ぶりを語っていた。

 これらのこだわりが、サンダンス映画祭で大絶賛され、異例のスピードで主演ジェイク・ギレンホールでハリウッドリメイクまで決定した傑作『THE GUILTY/ギルティ』を生み出したのです。  


2018年/デンマーク/カラー/シネスコ/88分
配給:ファントム・フィルム
(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S
http://guilty-movie.jp/
★2019年2月22日(金)新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開





posted by shiraishi at 20:46| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする