2019年01月27日

ナディアの誓い - On Her Shoulders    原題:On Her Shoulders

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監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
出演:ナディア・ムラド、ムラド・イスマエル、アマル・クルーニー他

2018年、ノーベル平和賞を受賞したクルド人のヤジディ教徒の女性ナディア・ムラドさんを追ったドキュメンタリー。

1993年、イラク北部の少数派ヤジディ教徒の人たちが暮らすコーチョ村で生まれたナディアさん。将来の夢は、村で美容室を開くこと。2014年8月、ダーイッシュ(イスラム国)がヤジディ教徒を根絶やしにするため、イラク北部シンジャール地区に侵攻。数週間のうちに5千人もの人が虐殺され、7千人以上の若い女性や子供たちが性奴隷や少年兵として連れ去られた。ナディアさんも母親と6人の兄弟を殺され、自身も性暴力を受け続けるが、3ヶ月後、脱出に成功しドイツに逃れる。
2015年、ナディアさんが報道機関に性奴隷の体験を語ったことをきっかけに、英国の弁護士、アマル・クルーニーさん(ジョージ・クルーニーの奥様)と知り合い、二人はダーイッシュの蛮行を国際社会に訴えるため世界を回る・・・

国連から「人身取引被害者の尊厳のための親善大使」に任命される日、「母がいれば・・・」と涙ぐむナディアさん。
ダーイッシュの侵攻さえなければ、今も村で家族と共に平穏に暮らしていたはず。
家族を殺され、性奴隷という忌まわしい経験をしたナディアさん。心に秘めて静かに暮らすこともできたのに、世界にダーイッシュの蛮行を知らしめ、少数民族への迫害を止めてほしいと声をあげた勇気を称えたい。性暴力被害者として好奇の目で見られるのは、さらにつらいこと。それを承知の上での行動なのだ。
まるで女優のような弁護士アマル・クルーニーさんが、ナディアさんの盾になって熱弁を振るう姿も実にカッコいい。
アマルさんはレバノン生まれで、ナディアさんとはアラビア語で話していた。ナディアさんは家族とはクルド語だろうけど、イラクに住んでいたのでアラビア語もできるのだなと。

堂々とスピーチをしたノーベル平和賞授賞式でも悲しげな表情だったナディアさんだが、難民キャンプで彼女を取り囲む子どもたちに見せる笑顔が素敵だ。いつか村に戻り、コミュニティの再建を果たしたいというナディアさんの夢が叶うことを願うばかりだ。(咲)


◆上映後トークショー
2月1日(金)10:30頃上映後 横田徹(報道カメラマン)
2月2日(土) 10:30頃上映後  久保健一(読売新聞元カイロ支局長)
2月3日(日) 10:30頃上映後  安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
2月10日(日)夕方頃上映後  東小雪(元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト)
2月11日(月)10:30頃上映後  綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)


2018年/アメリカ/95分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル 
公式サイト: http://unitedpeople.jp/nadia
★2019年2月1日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー





posted by sakiko at 21:51| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バーニング 劇場版   原題:Burning

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監督:イ・チャンドン(『シークレット・サンシャイン』)
原作:村上春樹「蛍・納屋を焼く・その他の短編」(新潮文庫)
出演:ユ・アイン、スティーブン・ユァン、チョン・ジョンソ

小説家を志すジョンス(ユ・アイン)は、宅配のバイトの途中、デパートの前で広告モデルをしているヘミ(チョン・ジョンソ)から声をかけられる。すっかり綺麗になった幼馴染だった。ヘミから、アフリカ旅行に行く間、飼い猫に餌をやってほしいと頼まれ、家に行くが猫の姿は見えない。一方、畜産業を営む父親が傷害事件を起こし、父のかわりに牛の世話をするために実家に帰ることになる。
やがてヘミがアフリカ旅行から戻り、ケニアで知り合ったという青年ベン(スティーブン・ユァン)を紹介される。洒落た部屋に住むベンは、遊びと仕事の区別がつかないと言い、どこか謎めいている。ある日、ジョンスの実家である北朝鮮との国境に近い田舎の村を訪ねてきたベンは、「朽ちたビニールハウスを燃やすのが趣味だ」と語る。2ヶ月に一度の割りで燃やすが警察に捕まったことはないという。そして、今日は下見に来たというのだ。この日を境に、ヘミと連絡が取れなくなる・・・

:村上春樹の短編「納屋を焼く」をベースに、ウイリアム・フォークナーの短編「納屋は燃える」の要素も入れ、大胆にアレンジしたイ・チャンドン監督。格差社会、就職難で居場所の見つからない若者たちなど、現代の韓国社会が抱える様々な問題も背景にして、しっかり韓国の物語になっています。
姿を見せない猫、何度もかかってくる無言電話、水の枯れた井戸・・・ ミステリアスな伏線の先にあるものは・・・? 衝撃のラストは、ぜひ劇場で! (咲)

2018年/韓国/カラー/148分/シネスコ/5.1chデジタル
国際共同制作NHK
配給:ツイン
公式サイト:http://burning-movie.jp/
★2019 年2月 1 日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー






posted by sakiko at 21:46| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジュリアン(原題:Jusqu'a la garde)

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監督・脚本:グザビエ・ルグラン
撮影:ナタリー・デュラン
出演:レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン)、ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン)、トーマス・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)、マティルド・オネブ(ジョゼフィーヌ・ベッソン)

11歳のジュリアンは両親がDVで離婚したため、母ミリアムと姉のジョセフィーヌの3人で暮らしている。離婚調停で共同親権となったため、ジュリアンは毎週末父のアントワーヌと会わなければならない。アントワーヌはミリアムの電話を聞きだそうとするが、母親を守るため、ジュリアンは必死で嘘をつく。短気で激昂しやすい父親が母親にひどいことをしないように。ジュリアンの態度に、アントワーヌはますます妻に執着する。

ジュリアンの苦しげな表情のポスターに悪い予感がしてしまいます。お父さんの目が怖いです。口が優しい台詞を吐いても、目の鋭さは消えません。赤頭巾ちゃんの狼を連想しました。狼は空腹でした。この父親は家族に疎まれて愛情に飢えています。相手を愛する方法と方向が違っていても、気づきません。
ジュリアンは、母親をかばってその父親の怒りをまともに受けてしまいます。母はジュリアンを父親に会わせたくなくとも、法律のために面会を拒むことができません。どうしたらいいのか、ずっと緊張して観ていて身体に力が入っていました。姉のジョセフィーヌが歌う場面だけ、ふっと息をつくことができます。このジュリアン役のトーマスくんは初の長編、父親役のドゥニ・メノーシェはいつもはニコニコして明るい人だそうで、俳優さんってすごい!それを引き出すルグラン監督もすごい!(白)


別れた妻や子供、あるいは妻の親や姉妹なども殺してしまう元夫が起こす事件が報じられることがあると、なぜこの人はこういう行動に出てしまったんだろうと考える。衝動的な行動に出てしまう人はやけくそになりやすいということなんだろうか、恨みをはらすためそういう行動に出てしまうのだろか。そういう行動に走らないようにするにはどうしたらいいのだろうと頭を抱えてしまった。でも、私にはやっぱり、そこまでしてしまう人の心がわからない。決して元妻にも問題があるとは思えない。やはり本人が制御できないものを持っているのだろう。だってそうじゃない人がほとんどなんだから。自分の行動を制御できない人が増えたら世の中どうなってしまうだろう。この作品は、それほどDVのすさまじさを表している(暁)。

=宣伝さんよりお知らせです=
この度、フランス時間2月22日(金)に開催されたフランスで最も権威ある映画賞「第44回セザール賞」授賞式にて、本作が最優秀作品賞、主演女優賞、オリジナル脚本賞、編集賞を受賞しました。本作のメガホンを執ったグザヴィエ・ルグラン監督は、『ジュリアン』が長編デビュー作です。
ルグラン監督は初監督作品での作品賞受賞に「素晴らしい、本当にありがとう。この作品は国際的に重要なテーマだった。」と出演者、スタッフ一同に感謝を述べたのち本作の題材「DV」が世界で問題になっていることを示唆しました。初めてセザール賞主演女優賞を受賞したジュリアンの母役を演じたレア・ドリュッケールは、自身の名が呼ばれると凛とした面持ちで登壇し、「私はこの賞を捧げたい。現実の中にいるミリアム(レア演じるDVを受けた女性)のようなすべての女性たちに。」と世のDV被害にあう女性たちに向けてメッセージを贈りました。

2017年/フランス/カラー/シネスコ/93分
配給:アンプラグド
(C)2016 - KG Productions - France 3 Cinema
https://julien-movie.com/
★2019年1月25日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 12:35| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

誰がための日々   原題:一念無明 Mad World

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監督 ウォン・ジョン
出演 ショーン・ユー、エリック・ツァン、エレイン・ジン、シャーメイン・フォン、アイバン・チャン、シュイ・ジエ、ブライアント・マック、ピーター・チャン、ン・シウヒン

かつてはエリート会社員だったトン(ショーン・ユー)。身体が不自由になった母(エレイン・ジン)のため会社を辞め自宅で介護にあたるが、ストレスがたまる中、誤って母を死なせてしまう。裁判で無実は立証されるが、躁鬱病の診断を受け強制入院させられる。1年後、退院にあたり、家族の支えが必要と言われ、長い間別居していた父ホイ(エリック・ツァン)と暮らすことになる。香港と大陸の間を行き来するトラック運転手をしている父の住まいは、2段ベッドでほぼいっぱいの狭い部屋。テーブルの板をあげれば、充分広くなると父は笑う。
元同僚ルイスの結婚式に押しかけたトンは、壇上からかつての婚約者ジェニー(シャーメイン・フォン)の行方を尋ねる。ジェニーと再会したトンは、二人で住むために買ったマンションを抵当に入れないため、彼女が必死に働いてきたことを知る・・・

親の介護のために、自分の人生を犠牲にしなくてはならないことは、ままあること。そして、息子に妻の面倒を任せきりにしていた父の思い。脚本に惹かれて、ギャラにはこだわらず出演を快諾したエリック・ツァンとショーン・ユーのかもし出す父子の情が、実にいい。
ベニヤ板で仕切っただけの隣りの部屋には、大陸から来た女性と香港生まれの息子。母親には香港の居住権がなく、息子は大陸の戸籍がない。
家賃の高い香港の住宅事情や、大陸から香港にやって来た人たちの抱える問題も織り込みながら、家族とは何かや、人と人との繋がりの大切さを、しみじみと感じさせてくれる作品。
製作費は、わずか200万香港ドル(約3000万円)。長編第一作を16日間で撮ったウォン・ジョン監督は撮影当時20代後半。今後の作品が楽しみだ。(咲)


香港金像奨:最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、最優秀新人監督賞受賞
台湾金馬奨:最優秀助演女優賞、最優秀新人監督賞受賞
大阪アジアン映画祭グランプリ受賞
グランプリ一念無明ウォン・ジョントリ.jpg
ウォン・ジョン(黄進)監督
2017大阪アジアン映画祭授賞式にて 撮影 宮崎暁美

ウォン・ジョン監督(左)、脚本:フローレンス・チャンさん(右).jpg
左 ウォン・ジョン(黄進)監督、右 フローレンス・チャン(陳楚珩)脚本
2017大阪アジアン映画祭 上映後のQ&Aで 撮影 宮崎暁美

2016年/102分/香港/広東語/DCP
配給:スノーフレイク
公式サイト:http://www.tagatameno-hibi.com/
★2019年2月2日(土)新宿K's cinema 他順次公開
posted by sakiko at 08:58| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナチス第三の男(原題:The Man with the Iron Heart)

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監督:セドリック・ヒメネス

原作:ローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」(東京創元社刊)

出演:ジェイソン・クラーク(ラインハルト・ハイドリヒ)、ロザムンド・パイ(クリナ・ハイドリヒ)、ジャック・オコンネル(ヤン・クビシュ)、ジャック・レイナー(ヨゼフ・ガブチーク)、ミア・ワシコウスカ(アンナ・ノヴァーク)、スティーブン・グレアム(ハインリヒ・ヒムラー)

海軍の兵士だったラインハルト・ハイドリヒは女性問題によって不名誉除隊を余儀なくされる。自分の拠り所である軍籍をもぎ取られて怒りに震えるが、妻の奨めでナチ党に入党。ナチ運動に怒りのはけ口を見つけ、出世欲にも駆り立てられて、ナチ運動に没頭していく。やがて、諜報活動で頭角を現し、瞬く間に党幹部へとのしあがる。さらに、150万人を超えるユダヤ人虐殺の首謀者として、絶大な権力を手にしていく。その冷徹極まりない手腕から“金髪の野獣”と呼ばれ、ヒトラーさえもが恐れたという。
ハイドリヒの暴走を止めるべく、チェコ亡命政府によって選抜された2人の若き兵士が、闇夜に紛れパラシュートでプラハに潜入。綿密な暗殺計画を立て、1942年5月27日、遂に決行される。

原作はローラン・ビネの大ベストセラー「HHhH プラハ、1942年」。NYタイムズ紙の“注目すべき本”に選出され、映像化オファーが殺到する中、セドリック・ヒメネス監督が映画化権を獲得した。
前半はラインハルト・ハイドリヒがなぜナチ党員になり、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ、ナチス第三の男まで上り詰めたのかを、後半は史上唯一成功した、ナチス高官の暗殺計画を実行側から描く。この暗殺計画とその後については、2017年に公開された『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』でじっくり描いているので、既視感が拭えない。しかし、ハイドリヒの半生については、とても興味深かった。ノンポリだったラインハルト・ハイドリヒがナチにのめり込んでいく様は他人事には思えないのだ。そして、残された妻と子のその後をエンドロールで知り、複雑な気持ちになった。(堀)

2017年/フランス・イギリス・ベルギー/カラー/シネスコ/120分
配給:アスミック・エース
(C)LEGENDE FILMS - RED CROW N PRODUCTIONS ? MARS FILMS ? FRANCE 2 CINEMA ? CARMEL ? C2M PRODUCTIONS ? HHHH LIMITED ? NEXUS FACTORY ? BNP PARIBAS FORTIS FILM FINANCE.


★2019年1月26日(土)ロードショー


posted by sakiko at 00:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする