2019年01月31日

雪の華

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監督:橋本光二郎
脚本:岡田惠和
撮影:大嶋良教
音楽:葉加瀬太郎
主題歌:中島美嘉「雪の華」
出演:登坂広臣(綿引悠輔)、中条あやみ(平井美雪)、高岡早紀(平井礼子)、浜野謙太(岩永)

子どものころから病弱だった美雪は、いろいろなことを我慢しあきらめてきた。かかりつけの若村医師に余命1年と告げられ、それまでにしたいことのリストを作る。カフェに行くこと、恋人を作ること・・・フィンランドでオーロラを見ること。ある日ひったくりにバッグを盗まれ、取り返してくれた男性に励まされる。たまたま立ち寄ったカフェでその男性に再会した。彼・綿引悠輔はガラス工芸作家を目指しながら、カフェで働いていた。たまたま店主との話を耳にした美雪は、自分の貯金の100万円で悠輔に「1ヶ月だけ私の恋人になってください!」と申し出る。悠輔は店の存続のために不承不承ながら契約に同意し、美雪の真意がわからないままデートに出かけ、希望を叶えていく。


中島美嘉さんの名曲「雪の華」から生まれた物語。元気な高校生役が多かった中条あやみさん、今度は少し大人ですが余命1年という設定。限りある中、一生分の勇気を振り絞って悠輔に近づき、初めての恋にわくわくしている美雪がとてもとても可愛いです。当初からあてがきされていた登坂広臣さんは、一見ぶっきらぼうなのに実は家族思いであたたかい人柄の悠輔が、素ではないかとおもうほどハマっていました。契約上の恋人だったのに、互いに惹かれていくふたり、特に悠輔に真実を告げられない美雪の切なさに泣けます。舞い降りる雪の一片のように美しくてはかない恋に「奇跡がおきますように」と、思わず祈りたくなるラブストーリーです。(白)

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追記:1日の新聞のインタビュー記事で「5年ぶりの恋愛映画出演は、企画した芸能事務所の社長さんの願いに応えたかったから。これが最後の映画」と、答えているのを読みました。登坂さんはこの作品の中で悠輔として生きていて、目が吸い寄せられる力がありました。また「これ!」と思える作品に出逢ったら考えてほしいです。それはきっとアーティストとしての登坂さんをも豊かにするはずだから。(白)


2019年/日本/カラー/シネスコ/125分
配給:ワーナー・ブラザース
(c)2019 映画「雪の華」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/yukinohana-movie/
★2019年2月1日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 22:41| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フロントランナー  原題:The Front Runner

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監督:ジェイソン・ライトマン
原作:マット・バイ著「All the Truch is Out」
出演:ヒュー・ジャックマン、ヴェラ・ファーミガ、J.K.シモンズ、アルフレッド・モリーナ

1988年、米国大統領選挙の民主党予備選。ゲイリー・ハート上院議員は、ハンサムでカリスマ性があり、ジョン・F・ケネディの再来と言われ、絶大な支持を集めて最有力候補(フロントランナー)に躍り出る。ところが、3週間後、マイアミ・ヘラルド紙が写真入りで不倫疑惑を報じたことから、大統領選から永久に葬られることになる・・・

米国政治史上、それまで政策重視で、プライベートなことは報道しないという暗黙の了解があったという。政治家とジャーナリズムの関係が大きく変わることになったこのゲイリー・ハートの一件を、様々な立場の人の目から語る形で物語は形成されている。
ゲイリー・ハートの家族、ゲイリー・ハート選挙陣営、ワシントン・ポスト紙、マイアミ・ヘラルド紙など、すべての人物を中立に描き、観る者それぞれにどう受けとめるかをゆだねている。中でも、注目したいのは、5人の女性たちのこと。妻リー・ハート、娘アンドレア・ハート、浮気相手と報じられたドナ・ライス、ハートのスケジュール管理をしていた女性アイリーン・ケリー、ワシントン・ポスト紙の政治部副編集長のアン・デヴロイ。これまでこうした政治の舞台で押さえ込まれてきた女性たちの思いにも焦点を当てている。
今や、瞬時に情報が拡散する時代だが、インターネットのなかった時代の報道の影響の大きさについても考えさせられた。(咲)


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ゲイリー・ハートを演じたヒュー・ジャックマン来日記者会見の模様は、こちらで!

(白)さんのスタッフ日記でもどうぞ!


2018年/アメリカ/1時間53分
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.frontrunner-movie.jp/
★2019年2月1日(金)より全国ロードショー





posted by sakiko at 21:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

闇の歯車

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監督:山下智彦
原作:藤沢周平
脚本:金子成人
撮影:浜名彰
音楽:遠藤浩二
出演:瑛太(佐之助)、橋爪功(伊兵衛)、緒形直人(清十郎)、大地康雄(弥十)、中村蒼(仙太郎)、蓮佛美沙子(きえ)、石橋静河(おくみ)、中村嘉葎雄(繁蔵)、高橋和也(同心)、津嘉山正種

江戸、深川。裏の世界に片脚入れて日々暮らしている佐之助。仕事が終わると立ち寄る酒処おかめで、いつも顔を合わせる男たちがいた。ご隠居風、文句ばかりつぶやいている老人、浪人、若旦那風の4人。ある日佐之助はおくみという女を助け家に連れ帰って看病する。仔細は尋ねず、一緒に暮らしはじめた。これまでにない心地良さを覚えて、まっとうな生活がしたくなる。そんなときにご隠居風の伊兵衛が「押し込み(強盗)に加わらないか」と声をかけてきた。一旦は断った佐之助だったが、まとまった現金が手に入るとおくみとの暮らしが立つようになる。集まったのはおかめで逢った素人の男たちだった。

時代劇専門チャンネル開局20周年記念作品。本格的時代劇で、瑛太さんのチョイ悪の色気といなせな着物姿にしびれます。『殿、利息でござる!』(2016)の茶師役は総髪でしたが、今回の町人まげもよく似合います。笑顔の裏に底知れなさを隠す伊兵衛、病気の妻を思う清十郎、不満をかこつ弥十、弱気な仙太郎、はかない彩りをそえるきえとおくみ、と配役がもうぴったり!
時代劇畑を歩んでこられた山下智彦監督は、緩急自在な演出で江戸の闇の中でうごめく人間たちを浮き彫りにします。サスペンスとアクション、そして事情を抱えたそれぞれの行く末に切なさを感じつつも納得。
舞台となる居酒屋で、これまで見たことがなかった灯りが吊られていました。行燈はよく見ますが、天井につるしたものは初めてです。江戸の灯りを調べてみたくなりました。江戸の夜はこんなに暗いのでした。夕方から夜に移る逢魔が刻(おうまがとき)を狙った押し込みも腑におちます。間に合うなら劇場の大きな画面で一度ご覧下さい。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/92分
配給:東映ビデオ
(C)2019「闇の歯車」製作委員会  写真:江森康之
https://yaminohaguruma.jp/
★2019年1月19日より全国5大都市を中心に期間限定上映。東京は丸の内TOEIにて公開中。
★2月9日(土)夜8時より時代劇専門チャンネル(スカパー!cs292ch)放送
posted by shiraishi at 10:50| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月27日

ナディアの誓い - On Her Shoulders    原題:On Her Shoulders

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監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
出演:ナディア・ムラド、ムラド・イスマエル、アマル・クルーニー他

2018年、ノーベル平和賞を受賞したクルド人のヤジディ教徒の女性ナディア・ムラドさんを追ったドキュメンタリー。

1993年、イラク北部の少数派ヤジディ教徒の人たちが暮らすコーチョ村で生まれたナディアさん。将来の夢は、村で美容室を開くこと。2014年8月、ダーイッシュ(イスラム国)がヤジディ教徒を根絶やしにするため、イラク北部シンジャール地区に侵攻。数週間のうちに5千人もの人が虐殺され、7千人以上の若い女性や子供たちが性奴隷や少年兵として連れ去られた。ナディアさんも母親と6人の兄弟を殺され、自身も性暴力を受け続けるが、3ヶ月後、脱出に成功しドイツに逃れる。
2015年、ナディアさんが報道機関に性奴隷の体験を語ったことをきっかけに、英国の弁護士、アマル・クルーニーさん(ジョージ・クルーニーの奥様)と知り合い、二人はダーイッシュの蛮行を国際社会に訴えるため世界を回る・・・

国連から「人身取引被害者の尊厳のための親善大使」に任命される日、「母がいれば・・・」と涙ぐむナディアさん。
ダーイッシュの侵攻さえなければ、今も村で家族と共に平穏に暮らしていたはず。
家族を殺され、性奴隷という忌まわしい経験をしたナディアさん。心に秘めて静かに暮らすこともできたのに、世界にダーイッシュの蛮行を知らしめ、少数民族への迫害を止めてほしいと声をあげた勇気を称えたい。性暴力被害者として好奇の目で見られるのは、さらにつらいこと。それを承知の上での行動なのだ。
まるで女優のような弁護士アマル・クルーニーさんが、ナディアさんの盾になって熱弁を振るう姿も実にカッコいい。
アマルさんはレバノン生まれで、ナディアさんとはアラビア語で話していた。ナディアさんは家族とはクルド語だろうけど、イラクに住んでいたのでアラビア語もできるのだなと。

堂々とスピーチをしたノーベル平和賞授賞式でも悲しげな表情だったナディアさんだが、難民キャンプで彼女を取り囲む子どもたちに見せる笑顔が素敵だ。いつか村に戻り、コミュニティの再建を果たしたいというナディアさんの夢が叶うことを願うばかりだ。(咲)


◆上映後トークショー
2月1日(金)10:30頃上映後 横田徹(報道カメラマン)
2月2日(土) 10:30頃上映後  久保健一(読売新聞元カイロ支局長)
2月3日(日) 10:30頃上映後  安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
2月10日(日)夕方頃上映後  東小雪(元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト)
2月11日(月)10:30頃上映後  綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)


2018年/アメリカ/95分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル 
公式サイト: http://unitedpeople.jp/nadia
★2019年2月1日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー





posted by sakiko at 21:51| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バーニング 劇場版   原題:Burning

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監督:イ・チャンドン(『シークレット・サンシャイン』)
原作:村上春樹「蛍・納屋を焼く・その他の短編」(新潮文庫)
出演:ユ・アイン、スティーブン・ユァン、チョン・ジョンソ

小説家を志すジョンス(ユ・アイン)は、宅配のバイトの途中、デパートの前で広告モデルをしているヘミ(チョン・ジョンソ)から声をかけられる。すっかり綺麗になった幼馴染だった。ヘミから、アフリカ旅行に行く間、飼い猫に餌をやってほしいと頼まれ、家に行くが猫の姿は見えない。一方、畜産業を営む父親が傷害事件を起こし、父のかわりに牛の世話をするために実家に帰ることになる。
やがてヘミがアフリカ旅行から戻り、ケニアで知り合ったという青年ベン(スティーブン・ユァン)を紹介される。洒落た部屋に住むベンは、遊びと仕事の区別がつかないと言い、どこか謎めいている。ある日、ジョンスの実家である北朝鮮との国境に近い田舎の村を訪ねてきたベンは、「朽ちたビニールハウスを燃やすのが趣味だ」と語る。2ヶ月に一度の割りで燃やすが警察に捕まったことはないという。そして、今日は下見に来たというのだ。この日を境に、ヘミと連絡が取れなくなる・・・

:村上春樹の短編「納屋を焼く」をベースに、ウイリアム・フォークナーの短編「納屋は燃える」の要素も入れ、大胆にアレンジしたイ・チャンドン監督。格差社会、就職難で居場所の見つからない若者たちなど、現代の韓国社会が抱える様々な問題も背景にして、しっかり韓国の物語になっています。
姿を見せない猫、何度もかかってくる無言電話、水の枯れた井戸・・・ ミステリアスな伏線の先にあるものは・・・? 衝撃のラストは、ぜひ劇場で! (咲)

2018年/韓国/カラー/148分/シネスコ/5.1chデジタル
国際共同制作NHK
配給:ツイン
公式サイト:http://burning-movie.jp/
★2019 年2月 1 日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー






posted by sakiko at 21:46| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジュリアン(原題:Jusqu'a la garde)

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監督・脚本:グザビエ・ルグラン
撮影:ナタリー・デュラン
出演:レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン)、ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン)、トーマス・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)、マティルド・オネブ(ジョゼフィーヌ・ベッソン)

11歳のジュリアンは両親がDVで離婚したため、母ミリアムと姉のジョセフィーヌの3人で暮らしている。離婚調停で共同親権となったため、ジュリアンは毎週末父のアントワーヌと会わなければならない。アントワーヌはミリアムの電話を聞きだそうとするが、母親を守るため、ジュリアンは必死で嘘をつく。短気で激昂しやすい父親が母親にひどいことをしないように。ジュリアンの態度に、アントワーヌはますます妻に執着する。

ジュリアンの苦しげな表情のポスターに悪い予感がしてしまいます。お父さんの目が怖いです。口が優しい台詞を吐いても、目の鋭さは消えません。赤頭巾ちゃんの狼を連想しました。狼は空腹でした。この父親は家族に疎まれて愛情に飢えています。相手を愛する方法と方向が違っていても、気づきません。
ジュリアンは、母親をかばってその父親の怒りをまともに受けてしまいます。母はジュリアンを父親に会わせたくなくとも、法律のために面会を拒むことができません。どうしたらいいのか、ずっと緊張して観ていて身体に力が入っていました。姉のジョセフィーヌが歌う場面だけ、ふっと息をつくことができます。このジュリアン役のトーマスくんは初の長編、父親役のドゥニ・メノーシェはいつもはニコニコして明るい人だそうで、俳優さんってすごい!それを引き出すルグラン監督もすごい!(白)


別れた妻や子供、あるいは妻の親や姉妹なども殺してしまう元夫が起こす事件が報じられることがあると、なぜこの人はこういう行動に出てしまったんだろうと考える。衝動的な行動に出てしまう人はやけくそになりやすいということなんだろうか、恨みをはらすためそういう行動に出てしまうのだろか。そういう行動に走らないようにするにはどうしたらいいのだろうと頭を抱えてしまった。でも、私にはやっぱり、そこまでしてしまう人の心がわからない。決して元妻にも問題があるとは思えない。やはり本人が制御できないものを持っているのだろう。だってそうじゃない人がほとんどなんだから。自分の行動を制御できない人が増えたら世の中どうなってしまうだろう。この作品は、それほどDVのすさまじさを表している(暁)。

=宣伝さんよりお知らせです=
この度、フランス時間2月22日(金)に開催されたフランスで最も権威ある映画賞「第44回セザール賞」授賞式にて、本作が最優秀作品賞、主演女優賞、オリジナル脚本賞、編集賞を受賞しました。本作のメガホンを執ったグザヴィエ・ルグラン監督は、『ジュリアン』が長編デビュー作です。
ルグラン監督は初監督作品での作品賞受賞に「素晴らしい、本当にありがとう。この作品は国際的に重要なテーマだった。」と出演者、スタッフ一同に感謝を述べたのち本作の題材「DV」が世界で問題になっていることを示唆しました。初めてセザール賞主演女優賞を受賞したジュリアンの母役を演じたレア・ドリュッケールは、自身の名が呼ばれると凛とした面持ちで登壇し、「私はこの賞を捧げたい。現実の中にいるミリアム(レア演じるDVを受けた女性)のようなすべての女性たちに。」と世のDV被害にあう女性たちに向けてメッセージを贈りました。

2017年/フランス/カラー/シネスコ/93分
配給:アンプラグド
(C)2016 - KG Productions - France 3 Cinema
https://julien-movie.com/
★2019年1月25日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 12:35| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

誰がための日々   原題:一念無明 Mad World

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監督 ウォン・ジョン
出演 ショーン・ユー、エリック・ツァン、エレイン・ジン、シャーメイン・フォン、アイバン・チャン、シュイ・ジエ、ブライアント・マック、ピーター・チャン、ン・シウヒン

かつてはエリート会社員だったトン(ショーン・ユー)。身体が不自由になった母(エレイン・ジン)のため会社を辞め自宅で介護にあたるが、ストレスがたまる中、誤って母を死なせてしまう。裁判で無実は立証されるが、躁鬱病の診断を受け強制入院させられる。1年後、退院にあたり、家族の支えが必要と言われ、長い間別居していた父ホイ(エリック・ツァン)と暮らすことになる。香港と大陸の間を行き来するトラック運転手をしている父の住まいは、2段ベッドでほぼいっぱいの狭い部屋。テーブルの板をあげれば、充分広くなると父は笑う。
元同僚ルイスの結婚式に押しかけたトンは、壇上からかつての婚約者ジェニー(シャーメイン・フォン)の行方を尋ねる。ジェニーと再会したトンは、二人で住むために買ったマンションを抵当に入れないため、彼女が必死に働いてきたことを知る・・・

親の介護のために、自分の人生を犠牲にしなくてはならないことは、ままあること。そして、息子に妻の面倒を任せきりにしていた父の思い。脚本に惹かれて、ギャラにはこだわらず出演を快諾したエリック・ツァンとショーン・ユーのかもし出す父子の情が、実にいい。
ベニヤ板で仕切っただけの隣りの部屋には、大陸から来た女性と香港生まれの息子。母親には香港の居住権がなく、息子は大陸の戸籍がない。
家賃の高い香港の住宅事情や、大陸から香港にやって来た人たちの抱える問題も織り込みながら、家族とは何かや、人と人との繋がりの大切さを、しみじみと感じさせてくれる作品。
製作費は、わずか200万香港ドル(約3000万円)。長編第一作を16日間で撮ったウォン・ジョン監督は撮影当時20代後半。今後の作品が楽しみだ。(咲)


香港金像奨:最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、最優秀新人監督賞受賞
台湾金馬奨:最優秀助演女優賞、最優秀新人監督賞受賞
大阪アジアン映画祭グランプリ受賞
グランプリ一念無明ウォン・ジョントリ.jpg
ウォン・ジョン(黄進)監督
2017大阪アジアン映画祭授賞式にて 撮影 宮崎暁美

ウォン・ジョン監督(左)、脚本:フローレンス・チャンさん(右).jpg
左 ウォン・ジョン(黄進)監督、右 フローレンス・チャン(陳楚珩)脚本
2017大阪アジアン映画祭 上映後のQ&Aで 撮影 宮崎暁美

2016年/102分/香港/広東語/DCP
配給:スノーフレイク
公式サイト:http://www.tagatameno-hibi.com/
★2019年2月2日(土)新宿K's cinema 他順次公開
posted by sakiko at 08:58| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナチス第三の男(原題:The Man with the Iron Heart)

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監督:セドリック・ヒメネス

原作:ローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」(東京創元社刊)

出演:ジェイソン・クラーク(ラインハルト・ハイドリヒ)、ロザムンド・パイ(クリナ・ハイドリヒ)、ジャック・オコンネル(ヤン・クビシュ)、ジャック・レイナー(ヨゼフ・ガブチーク)、ミア・ワシコウスカ(アンナ・ノヴァーク)、スティーブン・グレアム(ハインリヒ・ヒムラー)

海軍の兵士だったラインハルト・ハイドリヒは女性問題によって不名誉除隊を余儀なくされる。自分の拠り所である軍籍をもぎ取られて怒りに震えるが、妻の奨めでナチ党に入党。ナチ運動に怒りのはけ口を見つけ、出世欲にも駆り立てられて、ナチ運動に没頭していく。やがて、諜報活動で頭角を現し、瞬く間に党幹部へとのしあがる。さらに、150万人を超えるユダヤ人虐殺の首謀者として、絶大な権力を手にしていく。その冷徹極まりない手腕から“金髪の野獣”と呼ばれ、ヒトラーさえもが恐れたという。
ハイドリヒの暴走を止めるべく、チェコ亡命政府によって選抜された2人の若き兵士が、闇夜に紛れパラシュートでプラハに潜入。綿密な暗殺計画を立て、1942年5月27日、遂に決行される。

原作はローラン・ビネの大ベストセラー「HHhH プラハ、1942年」。NYタイムズ紙の“注目すべき本”に選出され、映像化オファーが殺到する中、セドリック・ヒメネス監督が映画化権を獲得した。
前半はラインハルト・ハイドリヒがなぜナチ党員になり、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ、ナチス第三の男まで上り詰めたのかを、後半は史上唯一成功した、ナチス高官の暗殺計画を実行側から描く。この暗殺計画とその後については、2017年に公開された『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』でじっくり描いているので、既視感が拭えない。しかし、ハイドリヒの半生については、とても興味深かった。ノンポリだったラインハルト・ハイドリヒがナチにのめり込んでいく様は他人事には思えないのだ。そして、残された妻と子のその後をエンドロールで知り、複雑な気持ちになった。(堀)

2017年/フランス・イギリス・ベルギー/カラー/シネスコ/120分
配給:アスミック・エース
(C)LEGENDE FILMS - RED CROW N PRODUCTIONS ? MARS FILMS ? FRANCE 2 CINEMA ? CARMEL ? C2M PRODUCTIONS ? HHHH LIMITED ? NEXUS FACTORY ? BNP PARIBAS FORTIS FILM FINANCE.


★2019年1月26日(土)ロードショー


posted by sakiko at 00:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月26日

サイバー・ミッション(原題:解碼遊戯 Reborn)

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監督:リー・ハイロン
アクション監督:ニコラス・パウエル
音楽:ネイサン・ワン
出演:ハンギョン(ハオミン)、リディアン・ヴォーン(チャオ・フェイ)、リー・ユエン(スー・イー)、山下智久(モリタケシ)、リウ・カイチー
         
オタク系プログラマーのハオミン。かつてハッキング対決で、最強と目された”ゼブラ”に勝ったことがあり、いつかホワイトハッカーになることを夢見ている。そのゼブラが今は裏世界で働き、ハオミンを引き入れようとスー・イーを近づけていた。ハオミンは香港警察の依頼で”覆面捜査官”としてゼブラを探ることになってしまった。ゼブラとスー・インと行動をともにするうちに危険な世界へと踏み込んでいく。マレーシアに飛んだハオミンは、ゼブラの背後に裏世界の大物・モリタケシがいることを知る。モリの狙いはなんなのか?

主演は中国のハンギョン。10代かと見まごうほどコミカルで可愛らしい面を見せています。ブラックハッカーのゼブラは台湾のリディアン・ヴォーン、ゼブラの相棒で恋人のスー・イーはリー・ユエン。格闘技の達人という役どころで身体を張ったアクションを披露。実はモデルさんなのに、生傷が絶えなかったようです。初めての海外進出作品となった山下智久さんの、冷徹なモリタケシにぞくっとするはず。
アクション監督は、ハリウッドで『ボーン・アイデンティティー』などのアクションを手がけたニコラス・パウエル。ガチなアクションに挑戦した出演者たちの勇姿にご注目ください。メイキングも公開されて、ハラハラドキドキのシーンがどうやって作られたのがよくわかります。(白)


2018年/中国・香港/カラー/シネスコ/99分
配給:プレシディオ
©2018 SIRENS PRODUCTIONS LIMITED BONA ENTERTAINMENT COMPANY LIMITED MORGAN & CHAN FILMS LIMITED
https://cyber-mission.net/
★2019年1月25日(金)新宿ピカデリーほかロードショー

初日舞台挨拶合同インタビューに参加してきました。そちらもご覧下さい。(白)
posted by shiraishi at 07:32| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あした世界が終わるとしても

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監督・脚本:櫻木優平
原作:クラフター
音楽:カワイヒデヒロ
主題歌・挿入歌:あいみょん
声の出演:梶裕貴(狭間真)、中島ヨシキ(ジン)、内田真礼(泉琴莉)、千本木彩花(コトコ)、悠木碧(ミコ)

高校3年の真(しん)は幼いときに母を突然死で亡くした。父は「重要な研究」のため多忙で、真とじっくり向き合う時間もない。心を閉ざしがちでクラスでも孤立している真を、幼馴染で同級生の琴莉(ことり)だけが親身になって心配している。受験を控えたある日、真は琴莉を誘って初めて2人で、映画を見てプリクラに興じショッピングにお喋りを楽しんだ。真がやっと自分の思いを口に出そうとしたとき、真の父が死んだと知らせがあった。母と同じ突然死だった。そして真とそっくりな顔の「ジン」と名乗る少年が現われ、驚くべきことを告げる。この世界と相対する世界、日本公民共和国から来たというのだ。

パラレルワールド、または逆さまの国、というストーリーはこれまでもありましたが、これは「相対する世界」、しかもそれぞれの人間は連携していて、片方の世界のAが死ぬと、もう一つの世界の相対するA’も死んでしまいます。それがこれまでの突然死の真相。しかも、ジンの世界の日本公民共和国は絶対的な権力を持つ「公女」が支配しているのだそうです。真の住むのは現代の日本と変わりませんが、公国はものすごく和風な世界。それでいて高度に発展している部分もあります。見ている分にはすごく面白い世界でした。
これまでのアニメーションよりも、さらに繊細でリアルな「スマートCGアニメーション」というものだそうですが、いまいちよくわかっておりません(汗)。たぶん発表するたびに進化していくのでしょう。楽しみにしています。(白)


2019年/日本/カラー/93分
配給:松竹メディア事業部
(C)あした世界が終わるとしても
http://ashitasekaiga.jp/
★2019年1月25 日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 07:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

そらのレストラン

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監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、土城温美
主題歌:「君がいるなら」スカート
挿入歌:「Bradford」世武裕子、「花束にかえて」スカート
出演:大泉洋(設楽亘理)、本上まなみ(設楽こと絵)、岡田将生(神戸陽太郎)、マキタスポーツ(石村甲介)、高橋努(富永芳樹)、石崎ひゅーい(野添隆史)、眞島秀和(朝田一行)、安藤玉恵(石村美智)、庄野凛(設楽潮莉)、鈴井貴之(稲熊)、(友情出演)風吹ジュン(大谷佐弥子)、小日向文世(大谷雄二)

北海道せたな町で牧場を営む設楽亘理は妻のこと絵、娘の潮莉と3人暮らし。自分の牧場の牛乳で美味しいチーズを作るのを夢見ている。亘理が目指すのは師匠と尊敬している大谷のチーズだがなかなか追い着けない。札幌から有名なシェフの朝田が訪れ、亘理や仲間たちの食材をおおいに気に入る。それをきっかけに地元の食材を使った一日限りのレストランを開くことを思いつく。

洞爺湖のほとりのパンやさん『しあわせのパン』(2011)、空知のワイナリー『ぶどうのなみだ』(2014)の製作チームが手がける北海道の映画シリーズ第3弾。前2作の三島有紀子監督から深川栄洋監督に代わりましたが、主人公の大泉洋は続投です。地元の美味しいものを作り出そう、守ろうという思いの人々と、日々のできごとを紡いでいます。
冒頭は冬の牧場を空から写したシーンです。タクシーが雪に埋まるように止まり、降り積む雪の中スーツケースを持った女性が道のないところをヨロヨロと歩きます。北海道で生まれ育った筆者は、「あれは町の人」「しばれて(凍えて)しまう」とすぐに思いました。なんとか亘理の牧場にたどり着いたこと絵なのですが、後の展開が羨ましい人がいっぱいいるはずです。モデルがあるのでしょうか??(白)


最近、北海道、ワイン、チーズにはまっている私としては、これはどうしても気になる作品でした。これに至る道(笑)としては、前作2本(『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』)の影響もありますが、田代陽子監督の『空想の森』(2008)の中で、北海道・新得町の共働学舎新得農場の大きな丸いチーズが出てきたり、あいち国際女性映画祭で、岩崎靖子監督の『大地の花咲き~洞爺・佐々木ファーム“喜び”ですべてを繋ぐ~』(2016)で洞爺湖地域にある佐々木ファームの活動が紹介され、それらの作品に誘発され興味を持ったのでした。
この3,4年、山梨県勝沼市のワイナリーや、長野県飯綱町のサンクゼールワイナリー、長野県東御市にある玉村豊男さん(エッセイスト、画家 )の ワイナリーを訪ねたり、松本市でチーズを作っている牧場を訪ねたりしていましたが、なんといっても北海道のチーズ作りやワイン作りの場を求めてここ数年通っています。
北海道の食材やそれを使ったもの作り、そして地域おこしを仲間とともに行う。私ももう少し若かったら参加したいな。そう思わせる作品でした(暁)。


参考資料
シネマジャーナルHP 『しあわせのパン』三島有紀子監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2012/shiawase-pan/index.html

シネマジャーナル スタッフ日記
『そらのレストラン』をめぐってあれこれ
http://cinemajournal.seesaa.net/article/463334075.html


2018年/日本/カラー/シネスコ/126分
配給:東京テアトル
(C)2018「そらのレストラン」製作委員会
https://sorares-movie.jp/
★2019年1月25 日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 07:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

描きたい、が止まらない

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撮影・監督:近藤 剛 
脚本:藁科 直靖 
撮影:池田 俊己 横山 友昭
語り:山上 智  

滋賀県に住む自閉症の古久保憲満さんが発達障がい(高機能自閉症)と診断されたのは小学生のとき。人とうまく接することができず、暴れがちだったが、小学校の美術の先生が憲満さんの絵の才能に気づき、もっと描くよう勧めると、水を得た魚のようにのめり込んだ。7年前からボールペンと色鉛筆だけで描く縦1.6m、横10mの超細密画に取り組んでいる。今では「アール・ブリュット=生の芸術」の世界で注目されるようになり、2014年にはスイスの美術館「アール・ブリュット・コレクション」のサラ・ロンバルディ館長に絵の寄贈を求められ、5点を寄贈した。また、自立するために、自動車の運転免許取得にも挑戦。何事にも前向きに挑んでいく憲満さんの健気な姿を2年半にわたって密着した。

アール・ブリュット(ART BRUT)とは
生(き)の芸術の意。第2次大戦後,J.デュビュッフェは,幼児,精神病患者,囚人あるいは完全な素人などの人々が純粋に自己の楽しみで制作した作品を収集し,こう呼んだ。 1947年,パリのドルーアン画廊の地下室で初公開。 48年には A.ブルトン,M.タピエ,J.ポーランらが原生芸術協会を設立。 5000点を超すコレクションはパリのガリマール社,ニューヨーク,パリ,ローザンヌと移動を繰り返した。無意識的な生の初原を示し,西欧的な論理化を得ていない芸術として評価された。(ブリタニカ国際大百科辞典より)


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古久保憲満さんが取り組んでいる超細密画のテーマは「オリジナルの街」。インターネットやテレビで見たものと想像を組み合わせた街には鉄道、車、高速道路、空港、駅、ホテル、観覧車、軍隊、家電製品、食料など、さまざまなものが1つ1つ細かく描かれている。気になったものはインターネットを利用して、徹底的に調べたという。そんな憲満さんは「国際社会で孤立する北朝鮮は、障がいを抱え、友だち付き合いがない自分と似ている」といって、北朝鮮も超細密画に描く。冷静に自分を見つめる目に驚いた。美術の正式な教育を受けていないのではないかという疑念は偏見でしかないことに気づかされる。
今は両親とともに暮らしているが、いずれは自分一人になる。そのときを見据えて、自動車の運転免許取得に挑戦する姿に応援したくなった。(堀)

2018年/日本/90分/DC
製作・配給:パオネットワーク

★2019年1月26日(土)ポレポレ東中野にて公開

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2019年01月25日

君がまた走り出すとき

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出演:寛 一 郎 山下リオ / 菜 葉 菜 辻本祐樹 綱島恵里香 安居剣一郎 ・ 長谷川初範 浅田美代子 / 松原智恵子
脚本:岡 芳郎 監督:中泉裕矢 
製作:川口市 特別協力:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 15周年記念オープニング作品
2018年で15周年を迎えた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」その15周年を記念して地元川口を舞台に製作された。日本人男性で初めて世界の6大マラソンを走破した実在の人物・古市武さん(川口市在住)の姿に感化され、マラソンを始めることで人生と向き合う人々の物語。
人生は何度でも走り出せる 翔太(寛一郎)は訳あって逃げ込んだ民家で、老婦人(松原智恵子)から孫だと勘違いされ、成り行きでそこで暮らすことに。しかし数日後、本物の孫(山下リオ)が訪ねてきて… そして或る晩、ラジオから高齢の市民ランナーの話題が聞こえてきて、そのラジオをきっかけに立ち止まっていた6人が出会い、ぶつかりながらも、それぞれの人生が走り始める--

1.jpg(C)2018川口市


主演の寛一郎さん、以前にも埼玉県が舞台の映画『心が叫びたがっているんだ。』に出てましたね、埼玉が好きですか?嬉しいです。私、埼玉県大宮生まれ、大宮育ち、生粋の埼玉人。映画は川口市内で撮影されたとのことで知っている場所もイッパイ、なぜなら川口でバイトしてたから、苦笑。埼玉県川口市は東京の、すぐ隣で、高層建築や団地も多いけど、昔ながらの鋳物工場が残っていたり、自然もあり、情緒豊かな風景が存在します。いま不本意ながらも東京で生活している私にとっては、この景色を見ただけでも、なにかがこみ上げてきました… 全国に散らばっている元埼玉県民の皆さん、ぜひ見て!! (もちろん他県出身の方々も…) そしてスクリーン上では久しぶりに拝見した女優・松原智恵子さんが天然可愛いし、大好きな女優・菜葉菜さんが荒川の土手を走ってる!! 私も早く埼玉人に戻って見沼田んぼを駆け抜けたい…‼︎ 映画は世界6大マラソンを走破した川口市民ランナーの実話が導く、ちょっと落ちこぼれちゃった人間たちの再生ストーリー。撮影時のエキストラ募集にも300名以上の市民から応募があり、地域参加型映画としての展開があったそうです。大体、川口市が映画を作っていたなんて驚いたし、太っ腹だな川口市。今年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭も俄然楽しみになってきました。 (千)

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(C)2018川口市
2018/日本/90分 配給:キャンター
公式web http://kimimata.com/
★2019年2月8日よりMOVIX川口にて川口市先行上映
★2019年3月2日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開


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2019年01月21日

500年の航海 原題:Balikbayan#1-memories of overdevelopment redux VI

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監督、撮影、編集、美術:キドラット・タヒミック
出演:キドラット・タヒミック、ジョージ・スタインバーグ 他
第65回ベルリン国際映画祭カリガリ賞受賞
世界一周の途上、フィリピンのセブ島沖で先住民の首長ラプラプによって命を落としたマゼラン。来たる2021年はマゼランによる世界周航から500年。実はマゼラン、旅の途中で他界し、本当に世界一周を達成したのはマラッカ出身の奴隷エンリケだったという説をもとに、監督自ら奴隷エンリケを演じ、家族や友人達をキャスティング。1980年頃から、この映像を撮り続け35年の歳月をかけて完成させた大長編の最新作。

640.jpg(C)Kidlat Tahimik


フィリピンのインディペンデント映画の巨匠、キドラット・タヒミック監督自身の映画人生を見ているような、ドキュメンタリーとフィクションが入り混じった手法でつくられている作品。映画業界だけではなく「越後妻有アートトリエンナーレ」「あいちトリエンナーレ」などでも作品を発表し、美術界隈でも話題のキドラット・タヒミック。地元のバギオではアーティスト村も作っていて、若手アーティストの育成にも尽力。私にとっては映画監督と言うより芸術家の印象が強く(映画は総合芸術だろって言ってしまえば、それまでなんですが、爆) そのバギオの「アーツ・ギルド」にも絶対行ってみたい!! いただいたプレス資料の中に、とんでもなくステキな言葉が書いてありました 「どうか祖先や家族の声、愛する方の声に耳を傾けてください。そうすることで宇宙の声を聞くことができるはずです。いつも笑顔で、宇宙に耳を傾けて、というのが私からのメッセージです」 忘れずに大切に実践していこう。 (千)

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◆500年の航海、公開記念 キドラット・タヒミック特集上映開催決定
2017/フィリピン/161分 (C)Kidlat Tahimik
配給:シネマトリックス
公式WEB
https://cinematrix.jp/tahimik_japan/
★2019年1月26日より渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開



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2019年01月20日

ヴィクトリア女王 最期の秘密   原題:Victoria and Abdul

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監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:リー・ホール
原作:シュラバニ・バス
出演:ジュディ・デンチ、アリ・ファザル、エディ・イザード、アディール・アクタル、マイケル・ガンボン

1887年、インドが英領となって29年目。タージ・マハルのある町アグラで、刑務所の記録係をしている青年アブドゥル・カリムは、ヴィクトリア女王の即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に任命される。長身なのが決め手だったが、もう一人の献上役モハメドは代理で行くことになった背の低い男だった。二人は船で英国へ赴く。
ウィンザー城での祝宴を前に、献上する折、決して女王陛下と目を合わせてはいけないと注意を受ける。だが、アブドゥルは思わず女王を見つめてしまう。女王も「のっぽがハンサムだった」と気に入り、祝宴期間中、二人は従僕として女王のそばで働くことになる。女王はアブドゥルからタージ・マハルや絨毯、マンゴーや香辛料などインドの文化や食べ物のことを聞き、行ったことのない自国の領土に興味を示す。女王はアブドゥルを祝宴が終わってからも側近にし、ウルドゥー語の手ほどきを受ける。さらに、亡き夫アルバートが設計した離宮オズボーン・ハウスの1階にインドの装飾をほどこした「ダーバーの間」も作らせる。孔雀の王座の模倣も備え、そこでアブドゥルは古代ペルシアの王様の物語を演じる。
皇太子や王室職員たちは、女王にインドでイスラーム教徒が反乱を起こしたとしてアブドゥルの失脚を図るが、彼の人柄に信頼を置いていた女王は、ヴィクトリア勲章のコマンダー章を授ける。アブドゥルも終身、女王に仕えることを誓う。
だが、やがて女王は崩御。アブドゥルは皇太子から即刻出ていくよう命じられ、家族と共にインドに帰国する・・・

ヴィクトリア女王とアブドゥルの間で交わされた英文の書簡などは、女王が崩御するとすぐに焼かれてしまいましたが、女王のウルドゥー語の練習帳などは読めないこともあって破棄を免れ、王室文書館に保管されていたとのこと。インド出身のジャーナリストであるシュラバニ・バスは、その練習帳を読み解き、2010年に「ヴィクトリアとアブドゥル」を著し、二人の心情にも迫っています。アブドゥルの子孫をたどり、アブドゥル自身のロンドン時代の日記も発見。こうして、女王と彼の物語が世に知られることになりました。

映画では、即位50周年記念式典の為に、インドから来たアブドゥルを女王が気に入って側近にし、インドの文化に目覚めたと描かれていますが、実際には、元々女王は人種や宗教に偏見がなく、インドの文化にも興味を持ち、給仕としてインド人を雇い入れたのだそうです。
異文化や有色人種に対する偏見に満ちた皇太子や王室の側近の人たちと違って、ヴィクトリア女王が心の広い方だったことを知り、感銘を受けました。
何より、私も学んだことのあるウルドゥー語を女王も学んでいたことを嬉しく思いました。もっとも、私は、大学受験当時、東京外国語大学にまだペルシア語科がなく、ウルドゥー科でペルシア語が必修と知り受験し、入学させていただいたので、ウルドゥー語はあまり熱心に学びませんでした。きっとヴィクトリア女王の方が格段にウルドゥー語がお出来になったことと思います。
映画のタイトルも、ウルドゥ―語でも出てきます。どうぞご注目を。(咲)



◆ヴィクトリア女王が学んだウルドゥー語とは:

北インドを支配したムガル王朝の宮廷公用語はペルシア語。ウルドゥー語は、イスラームに改宗した人たちが、ヒンディー語をアラビア文字で書き、語彙にもアラビア語やペルシア語起源のものを取り入れた言葉。
アラビア語は28文字ですが、ペルシア語はアラビア語にない音4文字を加えた32文字。ウルドゥ―語は、ヒンディーのそり舌音を表記するため、さらに3文字加え35文字。デーヴァナーガリー文字で表記されるヒンディー語とは見た目は全く違いますが、文法体系は同じです。
現在、ウルドゥー語は、パキスタン・イスラム共和国の国語。パキスタンでウルドゥー語を母語とするのは、人口の約4分の1ですが、インドの主に北部のイスラーム教徒にも広く使われており、話者は世界で20番目に多い6100万人と言われています。



第90回アカデミー賞 衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞 ノミネート
第75回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディー部門)ノミネート

2017年/イギリス・アメリカ/112分/カラー/シネスコ
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト:http://www.victoria-abdul.jp/
★2019年1月25日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国ロードショー






posted by sakiko at 21:10| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

二階堂家物語

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監督:アイダ・パナハンデ
エグゼクティブ・プロデューサー:河瀨直美
脚本:アイダ・パナハンデ、アーサラン・アミリ
出演:加藤雅也、石橋静河、町田啓太、田中要次、白川和子、陽月華、伊勢佳世

奈良県天理市。父から引き継いだ種苗会社を経営する二階堂辰也は、旧家の跡取りだ。数年前に息子を亡くし、妻と離婚。今は、年老いた母ハルと娘の由子と暮らしている。母は、跡取りがいなくなったことを気にやんで、辰也に、密かに思いを寄せている美紀との再婚を促す。だが、辰也にその気がないことを悟ると、今度は孫の由子に、種苗会社に勤める幼馴染の洋輔を婿養子に迎えようと期待を寄せる。だが、由子にはすでに心に決めた相手がいた・・・

旧家の跡取り問題をテーマに物語を紡いだのは、イランの女性監督アイダ・パナハンデ。
パナハンデ監督は、「第4回なら国際映画祭2016」で初長編作である『NAHID』が長編コンペティション部門最高賞の「ゴールデンSHIKA賞」を受賞。なら国際映画祭が、世界で活躍する期待の若手監督を支援して奈良を舞台に映画を製作するプロジェクトNARAtiveの第5弾の監督に選ばれた。
パナハンデ監督は、夫で脚本家のアーサラン・アミリと共に、2017年3月、奈良県天理市でシナリオハンティング。当初、ヤクザが登場するような物語を構想していたが、実際に奈良で日本の風習や生活に触れるうちに、「婿養子」の言葉を度々耳にし、後取り問題をテーマに脚本を書き上げた。
ペルシャ語で書いたものを英語に翻訳し、そこからさらに日本語に翻訳した脚本は、時に、理解できないこともあり、加藤雅也はじめ役者たちが監督の意図を感覚で捉えて演じたという。
少子化が進み、跡取りがいなくて家系が途絶えることもままある時代。国際結婚も絡めた物語は、日本人にもわりとすんなり受け入れられると思う。
赤い提灯、椿の花、雛人形、伝統的な建具など、外国人ならでは感じる日本情緒も映されているが、旧家の座敷にペルシャ絨毯が敷かれ、机の上に石榴が置かれているところには、イラン人の心を感じさせられた。(咲)


アイダ・パナハンデ IDA PANAHANDEH
1979年生まれ。テヘラン出身。テヘラン芸術大学在学中から映画製作を開始し、多くの短編映画を監督している。初長編作である『NAHID』は2015カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門・期待すべき新人賞(Prix de l’Avenir)を受賞。なら国際映画祭2016ではゴールデンSHIKA賞を受賞。「二階堂家物語」は長編第3作品目で、イラン国外で初めて撮影した作品となる。(公式サイトより)

2018年/日本/106分
配給:HIGH BROW CINEMA
公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/movie/nikaido-ke-monogatari/
★2019年1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開






posted by sakiko at 20:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月19日

牧師といのちの崖

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監督・撮影・編集:加瀬澤充(かせざわあつし)
プロデューサー:煙草谷有希子
音響:菊池信之
出演:藤藪 庸一(ふじやぶ よういち)牧師

和歌山県白浜の観光名所・三段壁で藤藪牧師は自殺志願者のレスキュー活動を続けている。昼夜問わずかかってくる”いのちの電話”にすぐ対応し、辛抱強く話に耳を傾ける。相手によっては教会に連れ帰って保護し、共同生活の場も提供、ときには厳しい言葉もかける。人生を取り戻そうともがく彼らが「何度失敗しても帰ってこれる場所になるといい」と藤藪牧師は語る。

この映画を観てまず感じたのは、藤藪さんがいてくれてよかった、ということでした。きっと藁にもすがる思いでかけた電話1本で、死なずに済んだことにほっと息をつきました。自殺しようとしたときのことを崖から身を乗り出すようにして語る男性のシーンには、ヒヤヒヤどきどきしました。高いところ苦手な人は近寄ることもできないような高い崖です。
レスキューだけで終わるのでなく、気持ちが落ち着いてからやり直すための手助けがあります。自立への道をさぐるために藤藪さんは何度も話し合います。もう一度外での生活へと踏み出した人もいれば、その後の消息がわからない人もいます。いくら信仰があるとはいえ、自分が休む暇もないほどの日々を続けてこられたのはどうしてなのでしょう?
いくつもの疑問をかかえて、加瀬澤監督にインタビューさせていただきました。こちらです。

☆昨年9月に公開になった『いのちの深呼吸』は、岐阜県・大禅寺の住職根本一徹さんの自殺志願者に向き合う活動を追ったドキュメンタリー。10月公開の『曙光』は、藤藪夫妻の活動をモデルに作られた劇映画です。どちらも自分は何ができるのか、考えるきっかけになります。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ドキュメンタリージャパン、加瀬澤充
(C)2018 DOCUMENTARY JAPAN INC. /ATSUSHI KASEZAWA
https://www.bokushitogake.com/
★2019年1月19日(土)よりポレポレ東中野にて公開
posted by shiraishi at 01:08| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月18日

めんたいぴりり 

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監督:江口カン
脚本:東憲司
撮影:許斐孝洋
美術:山本修身
主題歌:風味堂
出演:博多華丸(海野俊之)、富田靖子(妻・千代子)、山時聡真(長男・健一)、増永成遥(次男・勝)、瀬口寛之(八重山)、斉藤優(松尾)、井上佳子(ミチエ)、福場俊策(笹嶋)、柄本時生(石毛)、でんでん(丸尾)、田中健(吉川)、中澤裕子(キャサリン)、豊嶋花(英子)、吉本実憂(花島先生)、高田延彦(稲尾)、博多大吉(スケトウダラ)、ゴリけん(でんさん)、酒匂美代子(でん妻)

敗戦後、生まれ育った釜山から引揚げてきた海野俊之と千代子は、福岡中洲に小さな食料品店「ふくのや」を開いた。俊之は釜山のお惣菜だった〔明卵漬〕をヒントに〔明太子〕を作りたいと苦労を重ねている。美味しい明太子で人を幸せにしたい!と願う俊之は、人情にあつく、お人よしで、博多の祭り“博多祇園山笠”にも並々ならぬ情熱を注ぐ“山のぼせ”でもあった。そんな俊之を妻の千代子と息子たち、従業員は呆れながらも応援し続けている。のちに福岡名物となる〔辛子明太子〕を完成させるまでの波乱万丈の物語。

ガチ星』(2018)では、競輪で再起を図る男の物語を熱く描いた江口カン監督の長編第2作。監督の故郷、福岡では知らない人はいない「ふくや」創業者川原俊夫さんがモデルの映画です。福岡の特産品としておなじみの辛子明太子を作り出すまでのエピソードを、喜怒哀楽てんこ盛りで見せてくれます。人が良くてのぼせもん、困った人を見過ごせない父ちゃんを博多華丸さん、明るくしっかりものの母ちゃんを富田靖子さん。おふたりを中心に、九州出身のキャストの元気な博多弁が飛び交います。
試行錯誤を繰り返す明太子作りを見守る“タラコの母・スケトウダラ”役の博多大吉さんの演技と美脚もお見逃しなく。
多くを失った戦争の焼け跡から逞しく立ち上がる人もいれば、こぼれ落ちてしまう人もいます。戦後の暮らしの記憶も日々遠くなっていきます。“新しい記憶”(江口監督の言葉)として、どの年代の方々にも観ていただければ、きっと帰りはほっこりしているはずです。(白)


2019年/日本/カラー/シネスコ/115分
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
(C)2019めんたいぴりり製作委員会
http://piriri_movie.official-movie.com/
★2019年1月11日(金)より福岡先行ロードショー、1月18日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
☆江口カン監督インタビューはこちら
posted by shiraishi at 00:58| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夜明け

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監督・脚本:広瀬奈々子
撮影:髙野大樹
出演:柳楽優弥(シンイチ/芦沢光)、小林薫(涌井哲郎)、YOUNG DAIS(庄司大介)、鈴木常吉(米山源太)、堀内敬子(成田宏美)

哲郎は川べりで倒れている青年を見つけ、連れ帰って介抱する。事情がありそうだったが、追求しない哲郎に青年はシンイチと名乗った。シンイチと聞いて哲郎の手が止まる。同じ名前の息子と妻を交通事故で失っていた。木工所を経営する哲郎は、寡黙なシンイチを息子の部屋に住まわせ、アルバイトに雇い入れる。木工所の家族のような雰囲気に、シンイチも次第に打ち解けていく。

息子を亡くした父と家族から孤立してしまった青年とが、ひととき擬似家族となります。シンイチと名乗った光は誰にも言えなかった過去があり、息子に先立たれた哲郎の心には埋めようのない穴があいています。互いに補い上手くいきかけても、小さな町には過去のシンイチを知るものがいて、平穏な日々は続きません。
シンイチを「なくしたパズルの一片」のように思えていた哲郎は、出て行こうとするシンイチに声をかけるのですが・・・こ、これは「告白」じゃないですかっ。思わずBL目線で見てしまう私!?
もとい、人と人との繋がりやら愛憎やら、光の部分と闇の部分を交互に見せます。役者さんの大きな力を差し引いても新人とは思えない脚本・演出の広瀬監督、是枝師匠の背中を追ってぴたりとついていけそうです。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/113分
配給:マジックアワー
(C)2019「夜明け」製作委員会
http://yoake-movie.com/
★2019年1月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 00:24| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月17日

TAXi ダイヤモンド・ミッション(原題:TAXI5) 

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監督・脚本:フランク・ガスタンビド
製作・脚本:リュック・ベッソン
脚本:ステファーヌ・カザンジャン
撮影:ヴァンサン・リシャール
出演:フランク・ガスタンビド(シルヴァン・マロ)、マリク・ベンタルハ(エディ・マクルー)、ベルナール・ファルシー(ジベール市長)、サルヴァトーレ・エスポジト(トニードッグ)、エドゥアルド・モントート(アラン)、サブリナ・ウアザニ(サミア)

パリ警察で検挙率ナンバー1を誇っている警官マロ、本人は特殊部隊への転属を夢見ていたが、スピード狂のうえ、問題だらけの性格。意に反してマルセイユ警察へ異動が決まってしまった。赴任してみるとマロに勝るとも劣らない個性豊か(過ぎ)なメンバーばかり。
マルセイユではフェラーリを乗り回すイタリアの強盗団に宝石店が襲われ、警察は追跡しては振り切られと連敗続き、手をこまねいていた。敵に勝つにはまず最速の車が必須と、マロは伝説のタクシー“プジョー407”を探す。それは嘘か誠か時速300kmを超えるという。持ち主ダニエルの甥で間抜けなタクシー運転手エディとしぶしぶタッグを組むはめになった。

1997年に第1作が作られた『TAXi』シリーズの5作目。スピード狂と間抜けな相棒コンビのカラーは変えずに、キャストが替わりました。リュック・ベッソン製作・脚本はそのまま、監督がジェラール・クラヴジックからフランク・ガスタンビドに交代、フランク・ガスタンビドは主演もつとめています。ベルナール・ファルシーは前作で署長でしたが、今回はジベール市長に出世(?)。
綺麗なお姉さんもちょっと出てきますが、メインは車。街中を破壊しつつ強盗団とカーチェイス、空まで飛んでしまうという男の子が大好きそうな作品。よいこはまねしてはいけません。(白)


2018年/フランス/カラー/シネスコ/103分
配給:アスミック・エース
(c)2018-T5 PRODUCTION-ARP-TF1 FILMS PRODUCTION-EUROPACORP-TOUS DROITS RESERVES
http://taxi5.asmik-ace.co.jp/
★2019年1月18日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 21:03| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月13日

バハールの涙   原題:Les filles du soleil  英題:Girls of the Sun

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監督: エバ・ユッソン
出演: ゴルシフテ・ファラハニ、エマニュエル・ベルコ

2014年8月3日、IS(イスラミックステート)がイラク北西部シンジャル山岳地帯のクルドのヤズディ教の人たちが住む村々に侵攻する。多くの成人男性が殺害され、女性たちは性奴隷に、少年たちは“小さな獅子たちの学校”でIS戦闘員として養成される。
それから3ヵ月後、弁護士だった女性バハールは、腕に夫と息子の名のタトゥーを入れ、銃を手にしていた。奴隷として売られていたが、臨月のラミアと共に脱出し、拉致された息子を取り戻すべく女性戦闘員で結成された「太陽の女たち」に加わったのだ。
そんな女性だけの戦闘部隊を、片目の戦場記者マチルドが取材にくる。最初は、彼女との距離を置こうとしたバハールだが、マチルド自身、ジャーナリストだった夫を戦場で亡くし、娘を置いての取材と知り、次第に心を通わせるようになる。さて、バハールは、無事息子を取り戻すことができるのか・・・

本作は、実際にイラクのクルド人自治区で、2014年8月3日から2015年11月13日に起きた出来事に着想を得た物語。
昨年、ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんによって、イラクのクルド人の中でも少数派のヤズディ教徒の人たちが、ISによって虐殺されたり、性奴隷にされたことが広く知られることになりました。ナディアさんについては、ドキュメンタリー『ナディアの誓い - On Her Shoulders』(2月1日公開予定)で詳しく紹介し、理不尽な扱いを受けたヤズディ教徒の人たちの気持ちに迫っています。
女性だけの戦闘部隊のことは、当時ニュースで知り、その勇気に驚かされました。【女性に殺されたら天国へ行けない】と信じるISの戦闘員たちに、女性戦闘部隊は恐れられたそうです。

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(C)2018 - Maneki Films - Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF (Television belge)
その先頭に立つ果敢な女性バハールを、イランの女優ゴルシフテ・ファラハニさんが体現しています。2008年、『ワールド・オブ・ライズ』でレオナルド・ディカプリオと共演、翌年、アスガル・ファルハディ監督の『彼女が消えた浜辺』に出演して以降、イラン国外に活動拠点を移し、最近では『パターソン』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』に出演。【世界で最も美しい顔100人】トップ10の常連としても名を知られています。
私が彼女に会ったのは、2004年のアジアフォーカス福岡映画祭の時のこと。『冷たい涙』(アズイゾラー・ハミドネジャド監督)で、クルドの女性を演じていたのですが、独学で学んだクルド語を映画の中で駆使していました。
笑顔が素敵なゴルシフテさんですが、戦闘員バハールという役柄、笑顔は封印。拉致された息子を取り戻したい母の思い、そして、無残な扱いを受けたヤズディの人たちの無念な思いを全身で表しています。
バハールとは、春のこと。ヤズディ教徒の人たちに、ほんとうの春が来ることを願ってやみません。(咲)


2018年/フランス・ベルギー・ジョージア・スイス/111分/カラー/スコープ/G
配給: コムストック・グループ/ツイン
公式サイト:http://bahar-movie.com/
★2019年1月19日(土) 新宿ピカデリー&シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!





posted by sakiko at 18:24| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マチルド、翼を広げ(原題:Demain et tous les autres jours)

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監督・脚本:ノエミ・ルヴォウスキー

出演:リュス・ロドリゲス(マチルド)、ノエミ・ルヴォウスキー(マチルドの母=ザッシンガー夫人)、マチュー・アマルリック(マチルドの父)、アナイス・ドゥムースティエ(成長したマチルド)、ミーシャ・レスコ(フクロウの声)


マチルドは9歳。パパとままは別居中。マチルドは情緒不安定なママと暮らしている。
学校の進路相談に来たママはトンチンカンなことを言って先生を困らせている。でもマチルドには優しいママが大好きで、家事だってなんだって自分でこなせるのだ。ある日ママは突然大きな荷物を持って帰宅する。開けると小さなフクロウが一羽、鳥かごに入っていた。
その日からマチルドには親友ができた。だってその小さなフクロウは、マチルドとだけ話すことができたから。

予測不可能な行動ばかり起こすママと、しっかりものの小学生。パパがいるけれども、あまり頼れなくて(なんとかしなさいよと思ってしまう)、小さなフクロウと二人頑張るマチルド。ファンタジー仕立でふんわり包んでいるけれど、子どもにはずいぶんと大変な状況です。それでも心が冷え冷えとしないのは、ママなりに自覚があってマチルドを大切に思っているから。マチルドもそんなママを愛していて、諦めたりしないから。監督・脚本・ママ役のノエミ・ルヴォウスキーはフランス映画でよく見かける女優さん。早くから監督をやっていたとは、この映画の資料で知りました。マチルドには自分の子ども時代が投影されているとのこと。演じる新星リュス・ロドリゲスが初演技とは思えません。

マチルドのよりどころになるフクロウがとても可愛いので、フクロウカフェに行きたくなるなぁと思っていたら、ちゃんとコラボしていました。映画の半券で、新宿と銀座の”フクロウカフェ もふもふ”の利用料金が200円引きになるそうです。詳しくはHPのリンクで。(白)


奇行や意味不明な会話を繰り返す母は介助なしには自立した生活が不可能に見える。それでもマチルドは豊かな想像力を支えに、母との生活を維持していた。
しかし、本当にその生活は成り立っていたのかは疑問である。片付けられた室内。おしゃれな服装や髪型。それらはすべて、マチルドの空想力というフィルターがかかっていたのではないだろうか。
母は妄想の世界に住み、マチルドは空想の世界に耽る。空想は妄想と違い、自分の意思で現実に戻ることができるものの、マチルドは時折、湖に沈んでいる夢を見た。それは空想の世界から抜け出せなくなる自分への恐れだったかもしれない。だから、大人になり、空想で逃げる必要がなくなったとき、水の中から飛翔したのだ。
単なるファンタジーとせず、現実を冷静に見つめた作品に仕上げたノエミ・ルヴォウスキー監督。自身の過去ときちんと向きあった監督の今後の作品が楽しみである。(堀)


2017年/フランス/カラー/ビスタ/95分

配給:TOMORROW Films.、サンリス

(C)2017 F Comme Film / Gaumont / France 2 Cinema


★2019年1月12日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
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蜘蛛の巣を払う女(原題The Girl in the Spider's Web)

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監督・脚本:フェデ・アルバレス
原作:ダビド・ラーゲルクランツ
出演:クレア・フォイ(リスベット)、スベリル・グドナソン(ミカエル)、シルビア・フークス(カミラ)、ラキース・スタンフィールドスティーブン・マーチャント

天才ハッカー、リスベットのもとに仕事の依頼があった。AI研究の世界的権威バルデル博士が開発した「核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻して欲しい」と。バルデル博士は自分の犯した過ちを消し去りたいというのだった。簡単にクリアできるはずだったが、リスベットの前に縦横に網を張り巡らして立ちふさがるものがいた。16年前、父のもとから逃げ出したときに生き別れになってしまった双子の妹カミラだった。

大ヒットした「ミレニアム」シリーズの第4弾。ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』の製作陣が結集して送り出したサスペンスアクションです。リスベットには『ブレス しあわせの呼吸』で難病の夫を励まし支える妻を演じたクレア・フォイ。笑顔ひとつ見せず、ハードなアクションをこなしています。今年は『ファースト・マン』(2018)でアームストロング船長の妻、ソダーバーグ監督のホラーサスペンス『アンセイン 狂気の真実』ではストーカーに追い詰められるヒロイン。引き出しの多い女優さんです。
冷たい美貌のカミラ役シルヴィア・フークスは『ブレードランナー 2049』(2017)でも冷徹なレプリカント役でしたっけ。今作でも緊張感に溢れた姉妹対決を見せます。この双子という設定ですが、たぶん結びつきの強さを出したかったんでしょう。全く似ていない2人なので、年の近い姉妹でも良かったんじゃない?黒尽くめのリスベットと、真っ赤なコートに金髪をなびかせるカミラの対決は目にも美しいです。
ミカエル役のスベリル・グドナソンは『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2017)のボルグでした。髪型が違うので、すぐに気づかず。

フェデ・アルバレス監督は『死霊のはらわた』リメイク(2013)で長編デビュー、息を詰めさせられた『ドント・ブリーズ』(2016)でヒットを飛ばしたウルグアイ出身の40歳。厳寒のストックホルムロケは大丈夫だったんでしょうか?(白)


2018年/イギリス、ドイツほか/カラー/シネスコ/115分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.girl-in-spidersweb.jp/
★2019年1月11日(金)ロードショー
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未来を乗り換えた男(Transit)

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監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト
原作:アンナ・ゼーガース「トランジット」
撮影:ハンス・フロム
出演:フランツ・ロゴフスキ(ゲオルク)、パウラ・ベーア(マリー)

ドイツの侵攻が進む現代のフランス。ゲオルクは祖国ドイツから追われ、パリにたどり着いた。ホテルで自殺していた作家ヴァイデルの遺品を預かりマルセイユに向かう。遺品のトランクには身分証明書があり、不法入国のゲオルクは間違われたことを利用し、ヴァイデルになりすますことにした。マルセイユに来る途中に死んだ知人の妻子に報告にいき、その息子と束の間楽しいときを過ごす。街中で自分を振り向かせた女性マリーにゲオルクは目を惹かれる。マリーは作家ヴァイデルの妻で、マルセイユに来るはずの夫を探し続けていた。

ナチスの迫害から逃れて亡命した作家の体験が原作。クリスティアン・ペッツォルト監督は40年代の史実を現代のフランスに置き換え、ナショナリズムの風が吹き荒れるヨーロッパの状況と、平和な安住の地を求めてさまよう人々を描きました。ゲオルクはマリーと出逢い強く惹かれるのですが、マリーの夫ヴァイデルになりすましているため、真実を告げられません。ゲオルクとマリーがすれ違うことが何度かあり、いつばれてしまうのかとはらはらして観てしまいました。
同行しながら傷が悪化して死んでしまった知人の妻子とのエピソード、マリーを愛してしまったために出立するはずだった船から降りてしまう男性。それもこれも祖国を離れて、寄る辺のない難民になったことにつながります。ナチスドイツ時代の話を今に移して、何の違和感もないことに逆に戸惑ってしまったと監督。
日本から出ない限り、自分がマイノリティになることが自覚できない私たちも、いつどうなるか先はわかりません。深田晃司監督の『さようなら』(2015)では放射性物質に汚染された日本を捨てて、海外へ脱出する難民となる「私たち」が描かれていたのを思い出します。

フランツ・ロゴフスキは『ハッピー・エンド』(2018)でイザベル・ユペールの弟役でした。今年4月に主演作『希望の灯り』が公開予定。パウラ・ベーアは『婚約者の友人』(2017)のアンナ。本作で、二人や周りの人々が味わう苦境は決して他人事ではありませぬ。(白)


2018年/ドイツ、フランス/カラー/シネスコ/102分
配給:アルバトロス・フィルム
(c)2018 SCHRAMM FILM / NEON / ZDF / ARTE / ARTE France Cinema
http://transit-movie.com/
★2019年1月12日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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2019年01月09日

喜望峰の風に乗せて  原題:The Mercy

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監督:ジェームズ・マーシュ
出演:コリン・ファース レイチェル・ワイズ デヴィッド・シューリス

1968 年、イギリス。当時、ヨットで世界一周を果たした男がナイトの爵位を与えられるなど、海洋冒険ブームに沸いていた。そんな中、単独無寄港世界一周ヨットレース“ゴールデン・グローブ・レース”が開催されることになる。賞金は、5000ポンド。
いち早く名乗りを上げたのは、船舶用測定器を開発し会社を経営するドナルド・クローハーストだった。アマチュアが果敢に挑戦することで話題になり、スポンサーも現れる。ドキュメンタリーを作りたいというBBCからカメラと録音機も提供される。実は事業が行き詰っており、家族のために賞金と話題をさらおうという目論見だった。
10月31日、テインマスの港を家族や彼に期待を寄せる人々に見送られて出航する。だが、意気揚々と海に乗り出したドナルドを待っていたのは、過酷な自然と耐えがたい孤独だった・・・

実話に基づく物語。“ゴールデン・グローブ・レース”には、ドナルド・クローハーストを含め9人が参加。完遂したのは、たった一人。
脚本家のスコット・Z・バーンズが長年かけてドナルドの航海を追って作り上げた物語。それを読んだジェームズ・マーシュ監督は映画化を決意。ドナルドの航海日誌や録音テープも入手して、細部にわたり、過酷なひとりぼっちの航海を再現している。

12月末からピースボートで世界一周の旅に出るシネジャの暁さんが喜望峰にも立ち寄ることになっていたので、出発前に是非映画を観たいと言っていたのですが、う~ん、これは観ないで船旅に出た方がいいかもと。
『喜望峰の風に乗せて』という邦題からイメージする爽やかな船旅ではないことを覚悟してご覧ください。(咲)


2017 年/イギリス/英語・スペイン語/カラー/シネマスコープ/1 時間 41 分
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://kibouhou-movie.jp/
★2019年1月11日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー



posted by sakiko at 21:26| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

ヒューマン・フロー 大地漂流   原題:Human Flow

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監督・製作:アイ・ウェイウェイ
製作:チン-チン・ヤップ、ハイノ・デッカート
製作総指揮:ダイアン・ワイアーマン『不都合な真実』/
編集:ニルス・ペー・アンデルセン『アクト・オブ・キリング』

何百人もの人を乗せたボートが地中海をいく。やっとたどり着いた地から、さらに受け入れてくれる国を求めて、移動する人たち。内戦で瓦礫の町となったシリアから逃げ出す人たちや、宗教の違いから差別され、バングラデシュに逃れるミャンマーのロヒンギャの人たち。一方で、もう何年も難民キャンプで暮らす、パレスチナやアフガニスタンの人たち。そして、トランプ大統領が壁を作ろうとしているメキシコとの国境。

本作は、中国の現代美術家で、社会運動家としても活躍するアイ・ウェイウェイが、なんらかの理由で難民となった人たちの日常に迫ったドキュメンタリー。訪れた場所は、23カ国40カ所にもおよぶ。
アイ・ウェイウェイ自身、幼い時に生まれ故郷から追放された経験があり、故国を去らざるを得なかった人々に寄りそうような眼差しを感じさせてくれる。
難民キャンプで生まれ育った子どもたちが、見たことのない故国にいつか帰り、国を立て直したいという。今いる国は、生まれたところなのに、故国ではないのだ。
2016年の撮影当時、世界で6,500万人いた難民は、さらに増え続け、恐れをなしたヨーロッパ諸国は門戸を閉ざす方向にある。悲しいことだ。だからといって、さて、私に何ができる?と自問する。

ドローンで上空から写した難民キャンプの全景に圧倒された。
もしかしたら、いつか私たちも、あのような場所に住まなくてはならない事態になるかもしれない。そう考えると、他人事でない。(咲)



『ヒューマン・フロー 大地漂流』 難民問題について考えるトークイベント (12/18)


◆初日トークイベント 

1月12日(土)【10:50の回上映後】13:10〜13:30(20分)
会場:シアター・イメージフォーラム
ゲスト:丸山ゴンザレスさん(ジャーナリスト)
TV番組「クレイジージャーニー」(TBS系列)で、世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩く“危険地帯ジャーナリスト”として出演。ギリシャの島からドイツまで難民に同行し密着取材したことがある。


2017年 ヴェネチア国際映画祭5部門賞受賞

2017年/ドイツ/ビスタ/5.1ch/2時間20分/
配給:キノフィルムズ/木下グループ
後援:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、認定NPO法人 難民支援協会 
© 2017 Human Flow UG. All Rights Reserved.
公式サイト:http://humanflow-movie.jp/
★2019年1月12日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開





posted by sakiko at 21:43| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

世界一と言われた映画館

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監督・構成・撮影:佐藤広一
語り:大杉漣
出演:井山計一、土井寿信、佐藤良広、加藤永子、太田敬治、近藤千恵子、山崎英子、白崎映美、仲川秀樹

「西の堺、東の酒田」と称された商人の町・山形県酒田市に、かつて映画評論家・淀川長治氏が「世界一の映画館」と評した“グリーン・ハウス”があった。1950年、老舗の酒蔵の一人息子佐藤久一(1930~1997)が、父久吉の経営していた映画館を弱冠20歳で引き継ぎ、映画愛と資金を注いで作り上げた夢の映画館。回転扉から入るとホテルのような豪華なロビーで支配人が迎え、喫茶室からは極上のコーヒーの香りがする。ベルの代わりに「ムーンライト・セレナーデ」のメロディが開幕を告げる。上映される作品も設備も雰囲気も東京にひけをとらない酒田っ子の自慢の映画館だった。
1976年10月29日、酒田大火の火元となってしまったグリーン・ハウス。おりからの強風に煽られ、火は瞬く間に風下へと拡がり街は焼け野原となった。それから40年余りが経ち、グリーン・ハウスで青春のひとときを過ごした人々がそれぞれの思いを語った。

こんな映画館が昭和25年からできていたなんて、驚愕のひとこと。一度この目で見て、映画体験をしてみたかった!インタビューに応じた人々がどんなにこの劇場を愛していたか、ひしひしと伝わってきました。思いがけず悲劇的な終幕を迎えてしまったことで、なお一層それぞれの胸に刻まれることになったのでしょう。
興味のつきない佐藤久一氏については「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れさられたのか」(著者・岡田芳郎)をご一読ください。

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佐藤広一監督インタビューはこちらです。(白)

2017年/日本/カラー/シネスコ/67分
配給:アルゴ・ピクチャーズ
©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
http://sekaiichi-eigakan.com/
★2019年1月5日(土)より有楽町スバル座ほかにて全国順次公開
posted by shiraishi at 15:12| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ホイットニー ~オールウェイズ・ラヴ・ユー~ (原題:Whitney)

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監督:ケヴィン・マクドナルド
撮影:ネルソン・ヒューム
出演:ホイットニー・ヒューストン、シシー・ヒューストン、エレン・ホワイト、メアリー・ジョーンズ、パット・ヒューストン

ホイットニー・ヒューストンは1963年8月9日、ニュージャージー州ニューアークで生まれた。母親のシシー・ヒューストンは、ゴスペル・グループ”のメンバーで、ディオンヌ・ワーウィックは従姉妹。ホイットニーは家族からニッピーと呼ばれ、母親はニッピーに、自分が叶えられなかったスターになる夢を描いて厳しく指導していた。教会でゴスペルを歌い、才能を見せていたが10代の頃両親が離婚、18歳でニッピーは家を出ていく。バックコーラスをしていた頃、テレビでその歌声を披露、1985年、初のアルバムをリリース。シングル7曲が連続全米№1の快挙。見事なスタートダッシュを切る。1992年にはボビー・ブラウンと結婚し、映画『ボディ・ガード』に主演。主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」も大ヒットする。翌年には娘も誕生し公私とも絶頂期と見えたが、同時に凋落の始まりでもあった。

ホイットニー・ヒューストンをはっきり認識したのは、やっぱり『ボディ・ガード』。映画には初出演だったそうですが、実際のホイットニーをなぞったかのようなトップスター役で、歌う場面もたっぷり。稀代の歌姫は表情豊かで華がありましたが、その20年後、薬物で亡くなってしまうとは(さらに3年後には娘も)。
アーカイブ映像で見る子どものころのホイットニーは、家族に囲まれて幸せそうな可愛い女の子です。歌の才能に恵まれ、長じてスターになり栄光を掴んだ代わりに、同じくらいの不幸にもおそわれてしまいます。多くの証言はこれまで隠されていた部分も明らかにし、ホイットニーが過酷で孤独な日々を過ごしていたことが垣間見えて胸が痛みます。伸びやかな歌声をたくさん遺してくれてありがとう。(白)


640.jpg(C)2018 WH Films Ltd


小さい頃から歌の英才教育で、どんどんスターに成ってゆく綺麗な女の子。そんなホイットニーに実は壮絶なモンダイがあったことをドキュメンタリー映画らしく暴いてゆきます… 私は「とんねるず」で育った世代なので、どちらかと言うとダンナのボビー・ブラウンのほうを強烈に覚えていて(とんねるずの石橋さんがモノマネをしていたので) このヘンなダンスをするひととホイットニーさんは結婚したんだと印象には残ってますが、その後にどんどん悲劇が訪れていようとは… アパルトヘイト後、黒人歌手として初めて南アで歌う姿にも感動、必見です!! (千)


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(c)2018 WH Films Ltd
2018年/イギリス/カラー/アメリカン・ビスタ/120分
配給:ポニーキャニオン、STAR CHANNEL MOVIES
http://whitneymovie.jp/
★2019年1月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 14:54| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月04日

迫り来る嵐   原題: 暴雪将至   英題: The Looming Storm

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監督・脚本: ドン・ユエ
出演: ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン、チェン・ウェイ

1997年、中国南部の小さな町。雨の降りしきる夜、野原で殺害された女性の死体が見つかる。同じ手口で3人目だ。国営製鋼所保安部の警備員ユィ・グオウェイ(ドアン・イーホン)は、現場に駆けつけ、懇意にしているジャン警部(トゥ・ユアン)から情報を聞き出し、刑事気取りで捜査を始める。被害者が通っていたという夜な夜な工員たちがダンスをしている広場で、気味の悪い男の存在を知る。ユイは、その広場で知り合った女性イェンズ(ジャン・イーイェン)と恋仲になる。工場では、模範工員として表彰され、連続殺人犯探しに益々拍車がかかる。町では5人目の女性が犠牲になる。ユイは犠牲者が皆、恋人イェンズに似ていることに気づく。しかも、イェンズの経営する美容院の客の男を、犯人像に合致するとユイが問い詰めたことから、思わぬ事態になる・・・

模範工員として、赤いリボンをつけ、意気揚々と演説するユイ。探偵ごっこにのめり込むあまり、恋人との関係がだんだんゆがんだものになっていく。おまけに、経済発展で中国社会が大きく変わり、国営製鋼所でリストラの嵐が吹き、ユイもその対象となってしまう。模範行員としての栄光を忘れられないユイが、どんどん取り残されていく様が切ない。降りしきる雨が、虚しさを助長するようだ。(咲)


◆2017年東京国際映画祭、コンペティション部門で上映され、最優秀芸術貢献賞と最優秀男優賞をダブル受賞。
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最優秀芸術貢献賞のトロフィーを受け取るドン・ユエ監督(撮影:宮崎暁美)
「プロデューサーのシアオさんに出会えてラッキー。風水のいいロケ地に感謝。主演の二人、私の家族やスタッフにも感謝。力を貰って作ることができました」

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最優秀男優賞 ドアン・イーホンさん(撮影:宮崎暁美)
「演じたユィ・グオウェイも、こうして舞台に立ちましたが血だらけでした。映画に参加する全員の火花の散るような努力で完成。家族、スタッフ、監督に感謝します。愛の力を感じました」と力強く語りました。

2017年/中国/北京語/カラー/119分/シネスコ/5.1ch
配給:アット エンタテインメント
© 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited
公式サイト:http://semarikuru.com/
★2019年1月5日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラスシネマ有楽町にて、ほか全国順次公開






posted by sakiko at 21:08| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする