2020年07月12日

ぶあいそうな手紙

7月18日シネスイッチ銀座で公開 劇場情報

image001.jpg
(C)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

監督:アナ・ルイーザ・アゼベード
製作総指揮:ノラ・グラール
脚本:アナ・ルイーザ・アゼベード、ジョルジ・フルタード
脚本協力:セネル・パス
出演
エルネスト:ホルヘ・ボラーニ
ビア:ガブリエラ・ポエステル
ラミロ:ジュリオ・アンドラーヂ
ハビエル:ホルヘ・デリア
アウレア・バチスタ

ブラジル発の心温まる物語!
ブラジル南部ポルトアレグレ出身のアナ・ルイーザ・アゼベード監督の作品。
この街に住むエルネストは78歳で一人暮らし。隣国ウルグアイからやって来て46年。
部屋には本がたくさんあり、写真も部屋中に飾ってあり、教養もありそうだけど、融通がきかず頑固者。だんだん目が見えにくくなっている。そんな父を見て、サンパウロに住む息子のラミロは一緒に住もうと言い出すが耳もかさない。隣に住んでいるのはアルゼンチンから来たハビエル。年の頃は同じくらいで、数少ない友人でもある。
ある日、エルネストのところにウルグアイから1通の手紙が届いた。差出人はウルグアイ時代の友人の妻からだった。ハビエルが読もうかというが、強がって「大丈夫」と答えたもののやはり字が見えない。通ってくるブラジル人の家政婦に読んでもらおうとしたが、ポルトガル語ならともかく、スペイン語のためうまくは全部は読めずにいた。ただ、わかったのは友人が亡くなったということ。
*ブラジルの公用語はポルトガル語。ウルグアイ、アルゼンチンの公用語はスペイン語。
偶然知り合ったブラジル娘のビアが手紙を読んでくれるようになった。返信の代筆も。これがきっかけで二人の交流が始まる。ビアはそのアパートに叔母がいて手伝いで出入りしているというが嘘だった。しかし、ビアの嘘もわかった上で交流を続ける。「手紙の読み書き」のため、一人暮らしのエルネストの部屋にビアが出入りするようになるが…それは、エルネストの人生が変わる始まりだった。
仕事も恋もうまくいっていないのかワケありのビア、隣人ハビエルは心を許せる友人ではあるけど、ついつい強がりを言ってしまう。ウルグアイの友人の妻ルシア、父を手元に呼ぶかわりにアパートを売り払おうともくろむ息子。そんななかで心を正直に伝えられないエルネストが最後に宛てた手紙の相手は?
ほんのり苦くて可笑しくて、あたたかいラテンアメリカの話。

コロナ禍の緊急事態の中、2ヶ月近く自粛して自宅待機していたのですが、解禁になった時に最初に観たのがこの作品でした。久しぶりの外出に足も体もよろよろふらふらと出かけたので、この作品の内容が身につまされました。でも、映画を観る喜びとともに心温まる内容に、私もうまくこの状態を打破できるか希望をちょっと持つことができました。年を取ると若い頃と違って、思うように動いたり行動したりできなくなってきます。エルネストはどんな生涯をへてこのアパートで暮らしているのかはわかりませんでしたが、部屋の様子から写真をやってきた人だろうなということはわかりました。部屋にたくさんの写真が飾られていて写真の引き伸ばし機がさりげなく写ったからです。
日本からブラジルに移住した人たちはほとんどが農業移民でしたが、国内で食べていけなくなった人がほとんどでした。でもエルネストはブラジルに渡って46年ということなので、1975年前後にブラジルに渡ったのでしょう。南米各国で軍政下などで避難民が多く出た時期でもあります。それを逃れての移住だったのかもしれません。そのへんも知りたいと思いました。
ブラジルはかつて「人種のルツボ」といわれていましたが、いろいろな国からの移民が多かったからでしょう。私自身は実は中学生くらいの頃にアマゾンに興味をもち、それからブラジルに移住したいと考えていたので、中学生の頃、ブラジル、アマゾン、移住関係の本をずいぶん読んだ覚えがあります。とうとう移住はできませんでしたが、いつか南米に行ってみたいとずっと考えていました。そして、去年、ピースボートの船で世界一周の船旅に出た時に、ブラジル(リオデジャネイロ)、ウルグアイ(モンテビデオ)、アルゼンチン(ヴィエノスアイレス)に立ち寄りました。そんなこともあり、この映画に出てくる3カ国の関係とか興味深かったです。
また、スペイン語とポルトガル語は意外に近い言語のようです。この旅でも実感しました。私は英語もそんなには話せないし、ましてやポルトガル語(アルファベットといくつかの挨拶言葉で挫折)もスペイン語(旅に出る前にTVでスペイン語講座を見たり、船の中のスペイン語講座にも行ってはみたけどほとんど覚えられず)もほとんどわからず状態ですが、この3カ国の街中では英語は全然通じず、いくら得意でないといっても英語が通じないのは買い物などにとても不便でした。この作品ではブラジル娘のビアがスペイン語の手紙の代読と代筆をするというのがミソでした。そしてラストの展開に注目!(暁)。


人生、まだまだ何が起こるかわからない!
エルネストは、手紙が読めないほど目も見えなくなっていて、息子も一人暮らしを心配して呼び寄せようとしています。まさに老いていくのみの様相。ところがどっこい! こんな人生を私も送りたいという選択をするのです。関連して色々書きたいことがあるのに、ネタバレになるので書けないのが、すご~く残念です。ぜひ、ラストを楽しみにして劇場でご覧になってください。

舞台になっているポルトアレグレは、ブラジル最南部の町。アナ・ルイーザ・アゼベード監督の住む町で、ヨーロッパからの移民が多く、白人が80%。また、ウルグアイやアルゼンチンと近いので、両国での独裁政権の圧政から逃れて移住してきた人も多いとのこと。彼らは母語のスペイン語と、ブラジルのポルトガル語をミックスした「ポルトニョール」を話しているそうです。
主役のエルネストを演じたホルヘ・ボラーニは、ウルグアイの名優。『ウィスキー』(2004年)で、やはりブラジルに住むウルグアイ人の役でした。隣人の友人ハビエルはアルゼンチンから来た設定で、演じているホルヘ・デリアは、やはりアルゼンチンの方。
エルネストやハビエルが、どういう事情でポルトアレグレに移住してきたかは、言葉の端々や手紙の内容から類推するしかないのですが、知らない土地で、冗談を言いあえるいい隣人に恵まれたいものだと思わせる関係です。
まだまだ書きたいことはいっぱい♪ 心に響く映画です。(咲)


参考資料(暁)
やっと映画を観に行き始めました。そしてあっという間に3週間
(『ぶあいそうな手紙』試写を観にいった時の話が載っています)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/475968319.html

公式HP
2019年製作/123分/ブラジル
原題:Aos olhos de Ernesto
配給:ムヴィオラ


posted by akemi at 20:25| Comment(0) | ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月10日

追龍(原題:追龍 Chasing the Dragon)

tsuiryuposter.jpg

監督:バリー・ウォン、ジェイソン・クワン
出演:ドニー・イェン(ホー)、アンディ・ラウ(ロック)、フィリップ・キョン、ウィルフレッド・ラウ、ケント・チェン

1960年、中国の潮州から仲間たちと香港に仕事探しにきたホーは、日当目当てでヤクザ同士の抗争に参加して逮捕されてしまった。差別意識の強い英国人上司とそりの合わない警察官のロックはホーたちを助け、ホーはその恩義を胸に刻む。ホーは裏社会で、ロックは警察でのし上がり、ここぞというときには互いに助け合いながら権力と金を手にしていく。

実在の二人をモデルにしたクライムストーリー。W主演のアンディ・ラウがドニーより2歳年長で、香港のテレビ局の俳優養成所の先輩でもあります。トップスター二人のこれが初共演。ケネス・ツァンやケント・チェンの共演、もう見ることのできない九龍城砦のセットが素晴らしく、香港映画ファンには嬉しい限り。ぜひ大画面で堪能してください。アンディ・ラウは『リー・ロック伝 大いなる野望』(91)では30そこそこで(若くて美形!)同じロックを演じています。見比べるのも良し。
ドニー・イェンは『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』(92)で黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)の敵役で、ジェット・リーよりも目を引き「誰!?」と以後作品を追いかけたのでした。この作品の腕っぷし強く仲間思い、義理人情に厚いホーは、ドニー本人に近いのではないかと想像しています。
歌に映画にとトップを走り続けてきたアンディ、アクションだけでなく演技にもさらに磨きがかかってきたドニー、俺様キャラ二人かとの心配は無用。二人とも良い年を重ねてきました。(白)


市民の安全を守るためには警察内でのし上がって権力を持つしかない。ロックの考え方はどこかで聞いたことがあると思ったら、「踊る大捜査線」で柳葉敏郎が演じた室井慎次。テレビシリーズ当時は警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査担当管理官でしたが、その後、紆余曲折はあったものの、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では警察庁長官官房審議官兼警察庁長官官房組織改革審議委員長に就任して、警察組織の抜本的改革に踏み出すこととなりました。
が、ロックは裏社会でのし上がったホーと手を組み、私利私欲にまみれてしまいます。どこで道を違えたのでしょうか。ホーとともに海の向こうを見たときの青空はいつの間にか消えていました。それとももともと目指すものが違っていた? 
アンディ・ラウに見とれているとラストは「よかった~」と思えるのですが、一般市民の感覚としては、それでよかったんだろうかと、何とも言えないざらざら感が残ります。(堀)


冒頭、頭上を飛行機が飛んでいきます。九龍城砦のすぐそばに啓徳空港のあった時代。空港ビルから眺めた九龍城砦の異様な姿を思い出します。無法地帯といわれ、足を踏み入れるのをためらっているうちに壊されてしまいました。在りし日の姿を写真展で見たことがありますが、本作で生々しく悪の巣窟を再現していて、こんなだったのかなぁ~と想像をめぐらしました。
九龍側から眺めた香港島には、まだ高層ビルも林立してなくて、のどかな風情。
警察が黒社会と結託して、担当地区を決めて甘い汁を吸っているのですが、九龍側に住む警察幹部のトン・ガン(ケント・トン)が尖沙咀と同じ位、香港島の湾仔にうまみがあると聞いて、食指を伸ばそうとします。ガンと対立するリー・ロック(アンディ・ラウ)が、すかさず「船酔いするぞ」とからかいます。まだ海底トンネルが出来てなくて船で行き来していた時代。
また、英国人があらゆる面で香港人の上に立っていたことが、競馬場の場面からも見て取れました。ジョッキークラブのメンバーでないと入れない上層部のテラスですら、英国人と香港人は柵で区切られていました。
英国から中国に返還され、一国二制度という形での独立を得たはずの香港ですが、香港人による自治とは程遠い現実。警察が市民にこん棒を振っているのも60年代と変わらないですね。(咲)


2017年9月中旬 『追龍』香港公開直前の銅鑼湾時代広場の看板(撮影:宮崎暁美)
PICT2452.JPG




2017年/中国、香港/カラー/シネスコ/128分
配給:インターフィルム
(C)2017 Mega-Vision Project Workshop Limited.All Rights Reserved
https://www.tsuiryu.com/
★2020年7月24日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー



posted by shiraishi at 10:54| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

WAR ウォー!!(原題:WAR)

WAR_B5omote.jpg

監督・脚本・原案:シッダールト・アーナンド
出演:リティク・ローシャン(カビール)、タイガー・シュロフ(ハーリド・ラフマニ)、バーニー・カプール(ナイナ)

インドの対外諜報機関RAW(Research and Analysis Wing) に衝撃が走る。RAWのナンバーワンのカビールが、組織の高官を射殺して逃亡したと報告が入ったのだ。ただちにカビールの抹殺が決まり、彼の愛弟子でもあったハーリドがそのミッションに名乗りをあげる。カビールは最も尊敬し、憧れていた上司でもあった。ぬぐい切れない疑問がわき、直接カビールに会って問いただしたかったのだ。なぜ裏切ったのか?

war MAIN.jpg

凄腕スパイ同士の世界各地をまたいだ追跡劇、しかも長身イケメン俳優+渾身のアクションとカーチェイス…これだけ揃えた上、美女とダンスシーンもぬかりありません。『サーホー』を越えて大ヒットしたそうです。迫力のダンスシーンはかなり熱い(暑い)ので、のぼせないようご注意を。
インド映画といえばこの方!松岡環さんのブログ”アジア映画巡礼”にも詳しーい解説が載っていますので、ご覧くださいませ。(白)


W主演のリティク・ローシャンとタイガー・シュロフはどちらも二世俳優。リティクの父は1970~80年代に二枚目スターとして人気があったラーケーシュ・ローシャン。タイガーの父は1980~90年代のトップ俳優ジャッキー・シュロフ。しかし、親の七光りなんてことはなく、リティクは甘い二枚目なうえ、キレのあるダンスステップを披露するし、タイガーはアクションが素晴らしい。2人の年齢差は16歳あるものの、師弟関係の設定でバディを組んでも違和感がありません。
脚本もよくできていて、「あれが伏線になっていたの!」と驚くことばかり。また2人が二丁拳銃で戦うところはジョン・ウー監督の『狼 男たちの挽歌・最終章』を彷彿させます。きっと他にも伏線やオマージュはありそう。(堀)


ハリウッド映画に負けないダイナミックなアクションシーン。加えて、イタリア、オーストラリア、フィンランドなど7カ国 15都市でのロケも超豪華。中でもポルトガルのポルトのドン・ルイス1世橋や、北極圏での砕氷船のシーンは圧巻です。アマルフィのポジターノビーチでの150人を越えるダンサーを背景にしたリティック・ローシャンとヴァーニー・カプールのパーティソングのシーンは、ほんと、熱いです。
インド南部ケーララののどかな風景など、癒される場面も。
国際的なイスラーム過激派テロリストを追う物語ですが、インドの対外諜報機関RAWのハーリドもまたムスリム。信仰に反するのにお酒を飲み干したのはおかしい・・といった言葉もありました。それも伏線。(咲)


2019 年/インド映画/ヒンディー語/カラー/スコープサイズ/151 分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ/配給協力:インターフィルム
© Yash Raj Films Pvt. Ltd.
https://war-movie.jp/
★2020年7月17日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次公開!



posted by shiraishi at 08:24| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月09日

パブリック 図書館の奇跡(原題:The Public)

the-public-poster.jpg
 
製作・監督・脚本・主演:エミリオ・エステベス
出演:アレック・ボールドウィン、テイラー・シリング、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト、ジェナ・マローン、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、チェ・“ライムフェスト”・スミス

米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)は常連の利用者のホームレスから「今夜は帰らない」と告げられる。大寒波が到来し、路上での凍死者が続出し、その日の朝も図書館前で別の常連利用者ホームレスが亡くなったばかりだった。しかし、市の緊急シェルターは満杯。行き場を失った70人ほどのホームレスたちが図書館を占拠したのだ。
彼らの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが驚愕の行動に出た。

寒い中、図書館の開館を待つホームレスの人たち。開館と共に入場し、歯を磨いて顔を洗う。町のシェルターはすでに満員で、受け入れてもらえず、ここが生活の場となっている人たち。折りしも大寒波。閉館後、行くアテのない人たちに、夜を過ごす場所を提供してあげてもいいじゃないかと思ってしまいます。
図書館員スチュアートは、過去にホームレスの経験もあって、本に救われたと語っています。テレビレポーターから、人質事件の首謀者の烙印を押され、言いたいことは?との問いに、人道的危機と言いかけるのですが、まともに聞いてもらえません。そこで、「ここには告発しても足りぬ罪がある。涙では表わしきれない悲しみがある・・・」と「怒りの葡萄」の一節を語ります。いぶかしげなレポーター。小学校高学年の教科書にも載っている一節なのだそうで、リチャードの知り合いの女性たちがレポーターを馬鹿にしています。報道の功罪も考えさせられました。(咲)


監督のエミリオ・エステベスは、ある公共図書館の元副理事がロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイにインスピレーションを得て、構想に11年かけて完成させました。
記録的な大寒波の到来し、凍死者が続出しますが、緊急シェルターがいっぱいで行き場がないホームレスの集団が図書館のワンフロアを占拠。ひとりの図書館員が突如勃発した大騒動に巻き込まれながらも奮闘していく姿を描きます。

配給をしたロングライドは、日本各地の“公共”のエキスパートの方たちを繋いで、コロナ禍でより露わになった、日本における公共性を持つ空間が現在抱える問題やその未来についてともに考えるオンライン座談会を2夜連続配信しました。


《イベント概要》
『パブリック 図書館の奇跡』公開記念 本作を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来

【第1夜】
日程:7/7(火)
時間:18:00~19:30
司会:岡本真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社 (arg)代表、著書『未来の図書館、はじめませんか?』)
登壇者:
福島幸宏(東京大学大学院 情報学環 特任准教授)
嶋田学(奈良大学 文学部 文化財学科 教授・司書課程)
谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・エル・ライブラリー:市民ボランティアと寄付で支えられている労働専門図書館)
岡野裕行(皇學館大学文学部国文学科准教授)
桂まに子(京都女子大学図書館司書課程講師)

Youtube配信URL:https://youtu.be/GC4aGeKo2TM

【第2夜】
日程:7/8(水)
時間:19:00~20:30
司会:岡本真
登壇者:
田中元子(株式会社グランドレベル代表取締役社長、喫茶ランドリーオーナー)
平賀研也(前県立長野図書館長)
川上翔(NPO法人ビッグイシュー基金 プログラム・コーディネーター)
Youtube配信URL:https://youtu.be/D3VJK0lDI4w


初日は時間を1時間間違えて、終わりの方しか聞けませんでしたが、2日目はしっかり聞きました。
映画のシーンを引き合いに出して、日本の現状や今後への提案が話題に上がりました。

今から40年ほど前、図書館で働きたくて、大学で司書過程を取りました。しかし、当時は公務員試験に採用され、運よく図書館に配属されたらなれる職業で、なかなかなれない職業でした。(むしろ、意思とは関係なく図書館に配属され、不本意に図書館で仕事をしていた人もいました)
図書館は本を借りるところと思っている人が多いのですが、実はその利用方法は多岐にわたります。本の貸し出しの次くらいに分かりやすいのが、レファレンスサービス。利用者の質問に答えるのです。作品の中でも、「原寸大の地球儀はありますか」といったとんでもない質問がありましたが、これがなかなか大変なのです。そういった知られていない司書の仕事もさらりと紹介しているあたりに、エミリオ・エステベスの深いリサーチを感じる作品でした。(堀)


2018年/アメリカ/英語/119分/スコープ/5.1ch
配給:ロングライド
© EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://longride.jp/public/
★2020年7月17日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 14:20| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バルーン 奇蹟の脱出飛行(原題:BALLOON)

balloon-movie_poster.jpg
 
監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ 
脚本:キット・ホプキンス、ティロ・レーシャイゼン、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
出演::フリードリヒ・ミュッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デヴィッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン

1979年、東ドイツ・テューリンゲン州。電気技師ペーター(フリードリヒ・ミュッケ)とその家族は、手作りの熱気球で西ドイツをめざすが、国境までわずか数百メートルの地点に不時着してしまう。東ドイツでの抑圧された日常を逃れ、自由な未来を夢見ていたペーターは、準備に2年を費やした計画の失敗に落胆の色を隠せない。しかし妻のドリス(カロリーヌ・シュッヘ)とふたりの息子に背中を押されたペーターは、親友ギュンター(デヴィッド・クロス)の家族も巻き込み、新たな気球による脱出作戦への挑戦を決意する。ギュンターが兵役を控えているため、作戦のリミットはわずか6週間。ふたつの家族は一丸となって不眠不休の気球作りに没頭するが、国家の威信を懸けて捜査する秘密警察の包囲網が間近に迫っていた……。

作品冒頭でフェンスを乗り越えて西側に逃げようとする亡命者を映し出します。フェンスを超えられるのか、逃げ切れるか。いきなりハラハラドキドキのシーンで緊張感が煽られます。そして、主人公一家たちの登場。秘密を抱えた感じが演出からびしびし伝わってきます。
作品では2度、気球に乗って脱出を図るのですが、誰が乗って、誰が乗らないのか。それぞれの辛い選択に見ているこちらまで心が痛みます。
そして、実行。しかし、脱出は容易なことではありませんでした。この失敗がシュタージ(秘密警察)に手がかりを与えてしまうことになります。2回目の実行は危険度がさらにアップ。しかもシュトレルツィク家の長男が向かいの家の娘といい感じになり、そこから秘密が漏れてしまいそうで心配は尽きません。歴史的事実を描いた作品なので、結果はわかっているものの、125分のほとんどが緊張感の連続。だからこそ、ラストの安堵感は大きいものでした。
ちなみに気球による脱出を阻止しようとするシュタージのサイデル大佐を演じたトーマス・クレッチマンは東ドイツ出身で1983年に東ドイツから逃亡し、ユーゴスラビアに逃げたそう。逃亡した経験者が追う立場を演じているので、さらにリアル感が増しているのかもしれません。
そうそう、バルーンが意外にカラフルで、スクリーンいっぱいに大きく膨らんだときは思わず声を上げてしまいそうになるほどです。お楽しみに。(堀)


あんなに大きなバルーンを作ってしまったことに、まず驚きます。見つかったら命はないでしょう。そこまでして国を逃げ出したかったとは! 東ドイツ時代のベルリンの空港にトランジットで降り立ったことがあって、確かに荒んでいて、暗くて、国情を推し量って大変な国だなと思ったことを思い出します。
このバルーンで西に逃れた2家族8人の実話は、1982年にウォルト・ディズニー・カンパニーが『気球の8人』のタイトルで映画化し、日本でも公開されているのですが、知りませんでした。
東ドイツから壁を乗り越えて西に逃げた話は数多く聞いてきました。バルーンで亡命した話は聞いたことがなかったので、ベルリンの壁が崩れる前の東ドイツを何度か訪ねたことのある友人に聞いてみました。
「私が知らないだけかもしれませんが、おそらく当時はそういう脱出成功情報はあまり公に流されていなかったと思います。インターネットもない時代でしたし、隠されていたと思います」とのこと。さもありなんです。
報道されたとしても、バルーンに関して、よほどの知識と忍耐力がなければ、おいそれと真似して脱出するのは難しいのではと思います。
それにしても、実話なので脱出に成功するとわかっていても、ハラハラドキドキ、手に汗握りました。(咲)


東西冷戦下の東ドイツ。東ベルリンから西ベルリンへの脱出というと、ベルリンの壁を乗り越えたり、地下トンネルを掘ってという話は数多く聞いたり映画でも観てきたけど、熱気球で境界線を乗り越えたという話は聞いたこともありませんでした。でも実話を元にした話ということで実現したことがあるのでしょう。知られざる真実です。1989年にベルリンの壁が崩壊されたので、このあとまだ10年は壁がありました。その間にも何人もの人たちがこの境界を乗り越えたことでしょう。どのくらいの人たちが乗り越えられず犠牲になったことかと思います。
熱気球を作るにはかなりの知識(作り方とか気象知識など)と熟練した腕(ミシンで縫ったり)が必要だと思うけど、ペーターは電気技師、ギュンターは同僚という情報しかなかったけど、二人は東ドイツ国内で、仕事で熱気球などを作るような仕事もしていたのかな。素人ではとてもこんな8人も乗れるような熱気球は作れないでしょうね。
どうなるかとドキドキしながら観た作品であり、とても興味深い作品ではあったのですが、なぜ東西ドイツに分かれていたのかとか、東ドイツでの生活はどんなだったのかという視点では描かれてなかったのが残念です。その事情を知らない若い人たちのためにも、そういう部分も入れて描いてほしかったなと思います。
最近、歴史の史実を元にしたという映画が随分作られ、歴史に埋もれた真実が明らかになってきていますが、そこに至った歴史とかが省かれていることが多く、それが残念だなと思うことがあります。そのくらい、今の若い人は歴史を知らないと感じます。私自身も教科書からより、映画でいろいろな歴史や文化を知ったので、ぜひいろいろな視点で映画を観ていけたらと思います(暁)。

2018年/ドイツ/ドイツ語/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH
公式サイト:http://balloon-movie.jp/
★2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


posted by ほりきみき at 14:08| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする